17 玄武の話合い(12)
ドルチェンへ揖礼し、送り出したリーユエンは、彼らへ向き直ると、跪いた。
「巽陰大公殿下、坤陰大公閣下、乾陽大公殿下、ナイナイ様、ウラナ様、今日は私めのため、ご尽力賜り、感謝申し上げます」と、跪拝叩頭した。
巽陰大公が立ち上がり、リーユエンへ近寄り、彼女の腕を取って立ち上がらせた。
「おまえは、猊下の大切な明妃なのだから、我らが協力するのは当然ではないか」
そこへ几帳の中にいたヨーダム太師が出てきて、リーユエンへ声をかけた。
「リーユエン、そろそろ塔へ戻るか」
「はい、参ります」
高祖が驚き、声をかけた。
「リーユエン、私と行かないのか?どこへ行くのだ?」
リーユエンは、すっかり憂いの晴れた、にこやかな表情で言った。
「私は、畳地連結法と、甲羅割りについての論文二本を仕上げますので、当分、太師の塔でご厄介になります。では、ごめん遊ばせ」
魔導士姿の師弟は、仲良く部屋を出て行った。
取り残され憮然とした様子の高祖へ、カーリヤが声をかけた。
「都見物でも致しませんか。ダルディンがご案内いたします。よろしければ、ミレイナ王女もご一緒に」
高祖は、嘆息し、頷いた。
「そうだな、お願いしよう」
皆が部屋から出ていき、そこには一人、香車ナイナイが残った。やり遂げたという、快心の笑みを浮かべて・・・
(ナイナイの独白)
フフフフッ、やったよ。話し合いはまとまったよ。
全くリーユエンったら、予想の上をいく子だよ。大した度胸だ。
あそこで高祖でなく、猊下に抱きつくなんて、こっちは心の臓が止まるところだったよ。
だが、不思議だねえ。てっきり激昂すると思った高祖は、案外冷静だった。もしかして、前にも、こんな修羅場のご経験がおありなのかねえ。何しろ、とてつもなく長生きなお方だから、色々経験なさっているだろうしねえ。
それにしても、あの時のリーユエンは本気だったから、驚いたよ。
猊下のことなんか知らないって言ってたくせに、いざとなったら、猊下のことを庇い倒すんだから、本当に驚いたよ。昔は、受け答えも棒読みで、無表情な陰気な子供だったのに、いつの間にか情が泉のように溢れ出る一人前の女に成長したんだね。教育してやった私にも、感慨深いものがあるよ。
でも、一番不思議なのは猊下だね。
あれだけリーユエンに執着しまくって、実際本音は、リーユエンの言ってた通りだろうよ。頭まで真っ赤になって照れまくっていらしたもの。
初日に猊下を接待はさせたけれど、どうやって、あそこまで我慢させたのだろう。いまだに不思議だよ。
高祖がいくら煽ろうと、猊下は決して受けて立とうとはなさらなかった。よくあそこまで我慢できたものだ。リーユエンがそれだけ、あの猊下を手懐けたということなのかね。
それに、凡人の処断を自分の権限にしてしまったのも、実にいい条件だよ。あれがないと、金杖王国の王太子なんて、命がいくつあっても足りやしない。リーユエンには、感服しかないね。




