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異世界ランジェリー・メーカー ~女性下着会社の社長と社員が転移したので、極上の下着で異世界の美女たちをコーディネートします~  作者: フシサバ


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第1話 社長と社員と、異世界と

いつものように、肌触りの良い最高級シルクの感触を指先で確かめていた時のことだ。

オフィスの窓から差し込む陽光が、不意に視界を真っ白に染め上げた。


「――え?」


誰かの間の抜けた声が聞こえたかと思うと、次の瞬間には、足元の感触が変わっていた。

厚手の絨毯から、土と草の感触へ。

空調の効いた快適な室温から、少し湿り気を帯びた生暖かい風へ。


光が収まり、俺――ソウイチロウが目を開けた時、そこに広がっていたのは見慣れたビル街ではなく、見たこともない巨大な植物が生い茂る、異世界の草原だった。


「しゃ、社長……? ここ、どこですか……?」


震える声で尋ねてきたのは、秘書のミサキだ。

冷静沈着な彼女が、眼鏡の位置を直すのも忘れて呆然としている。

周囲を見渡せば、プランナーのカオリ、デザイナーのチサ、パタンナーのユウも、それぞれ混乱の極みにあった。


(落ち着け。まずは状況把握だ)


俺は「株式会社トリップ・トラップ」の代表取締役。

社員を不安にさせるわけにはいかない。

俺は努めて冷静に、そして紳士的に振る舞う仮面を被った。


「皆さん、怪我はありませんか? どうやら、我々の常識が通じる場所ではないようです。まずはあの高い丘を目指しましょう」


俺を先頭に、オフィスルックの美女四人を連れた異様な一行は、草原を歩き出した。

ヒールで草地を歩くのは困難だ。

時折、女性陣から「きゃっ」という可愛らしい悲鳴が上がる。


(……不謹慎だが、悪くない光景だ)


揺れる髪、汗ばんで肌に張り付くブラウス、そして強調される身体のライン。

俺の中の「職人」が歓喜の声を上げる。

だが、俺の顔はあくまで「女性を尊重する英国紳士風」を崩さない。


「チサさん、大丈夫ですか? 手を貸しますよ」


「あ、ありがとー社長。マジ神なんですけどー」


丘を越え、未舗装の街道に出たところで、豪華な馬車と鎧を着た兵士たちが現れた。

俺はとっさに背後の社員たちを手で制し、一人、街道の中央へと歩み出た。


「止まれ!! 貴様、何者だ!?」


殺気立った兵士たちが槍を構える。


「見かけない格好だな……。どこの国の商人だ? それとも旅の芸人か? 我々は『ロズタリア王国』の第三騎士団だ。怪しい動きをすれば、容赦はせんぞ」


ロズタリア王国、第三騎士団。

やはりここは地球ではないし、彼らはコスプレイヤーでもない。

本物の軍隊を前に、俺はゆっくりと両手を挙げ、敵意がないことを示した。


「敵意はありません。道に迷ってしまったので、町まで案内いただけませんか?」


兵士長が部下に目配せをし、俺の身体検査を行う。


「隊長、武器はありません。……ただ、この服、妙です。絹よりも滑らかで、見たことのない素材です」


その時。

馬車の扉が開き、中から一人の少女が顔を覗かせた。

透き通るような金髪に、翡翠色の瞳。

豪華なドレスを身にまとった、明らかに身分の高い女性――。


「騒がしいですね、どうしましたか?」


「はっ! ……セ、セシリア陛下! 申し訳ありません。怪しい男がおりまして……」


セシリア陛下、と呼ばれた少女は、俺をじっと見つめ、興味深そうに目を細めた。


「私には【真眼(トゥルー・アイ)】という対象の『価値』と『真偽』を見抜く力があります。 貴方の言葉に嘘の陰りはありませんね……」


彼女の視線が、俺のスーツの上を滑る。

そして俺もまた、プロの(さが)で無意識に観察してしまう。


(ふむ……推定アンダー65のBカップ。アンダーは細いが、コルセットで締めすぎだ。あれでは血流が悪くなるし、何より胸の形が崩れる。非常にもったいない……!)


俺の職人魂が、この異世界で初めて火を噴いた瞬間だった。

その後、茂みに隠れていた社員たちも姿を現した。

現代日本の洗練されたメイクと、体のラインが出るスーツ姿の美女集団。

その登場に、屈強な騎士たちは目を丸くし、どよめいた。


「お、女……? それも、なんと美しい……」


「見たこともない服だ。あの足の装飾ストッキングはどうなっているんだ?」


セシリアは、楽しげに笑った。


「あら……。貴方、ハーレムを連れての旅でしたの? ふふ、面白くなってきましたわ」


こうして、俺は代表としてセシリアの馬車への同乗を許された。


「信じていただけるかわかりませんが……我々は、異世界から迷い込んでしまったようなのです」


「ふふ、私の鑑定は嘘を見抜きます。貴方の言葉に、欺瞞もありませんでした」


セシリアは納得したように頷き、熱っぽい視線を俺のスーツへと向けた。


「それに、その見たこともない素材の衣服。我が国の技術では、これほど滑らかな布は作れませんもの」


「この服に興味がおありですか?」


「ええ、とても」


俺は紳士的な笑みを浮かべて告げた。


「でしたら、無事に王都につきましたら、このスーツを差し上げます。……その代わり、この世界の服飾事情について、詳しく教えていただけますか?」


「ふふっ、そうですわね。交渉成立、ですわ」


窓の外に見えてきた巨大な城壁を見上げながら、俺は確信していた。

この世界に、俺の愛する「ランジェリー」はまだ存在しない。

ならば、俺が作るしかない。

この世界のすべて女性を、窮屈な縛りから「解放」するために――。

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