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重要方針決定会議

ぼくが鎧を夢中で作ってる間、トヨは漁とかしてるし、女子は鎧作りだけではなく、炊事や掃除や草摘みとかヤッさんとか里人のところへ出入りもしていて、マサは皆の手伝いや伐採、草刈りをしていた。

一番里人との付き合いが少ない引きこもり暮らしをしているのがぼくだった。


「え、ここに住みたいって?」

「うん、ここはいいとこだろ?」

「そりゃ、ね。癖のある人はそれなりに居るけど、根は良い人ばかりだし。冬でも比較的暖かくて雪が降らないし、海の幸には恵まれているし、森の獣の脅威はあるけど、抑えられてるし。お殿様の目も手も届かない隠れ里で税が無いし」

「うん。ここなら別に傭兵でなくても暮らしていけるんだよなあ」

「……そうだなあ……」


マサはぼくのような「力が欲しい」という強い望みを抱いていないようだから、平和に暮らせれば良いという考えなんだ。

マサは隠れ里が気に入ったので、移住してひっそりと平和に暮らしたがっているようだ。


このまま傭兵志向のぼくに付き合わせていたら、マサや皆が非業の死を遂げてしまうかもしれない……それはぼくも望まない。


そろそろ、話し合うべき時か。

このまま傭兵を続けていきたいか、付き合わせていいのかってことをな。


--


「でね、シュウや魔物のような、ぼくたちを踏み躙る、また実際に踏み躙った奴らへの復讐心とか怒りがいつまでも心の中に残っているぼくとは違うでしょ、みんなは?」


一応訊いてみると、


「そうかも」

「あ~、ま~ね~」

「そうね」

「オレはちょっと解るけどな」


トヨだけはちょっとぼく寄りだった。


「ぼくはそれだから、そういう輩がいつ襲って来ても撥ね返せる力が欲しくて傭兵になったわけだけどさ、やっぱ危険じゃん? みんなは望まないのにぼくに付き合って、そのうち下手してこのままぼくと心中させるようなことになっちゃマズいわけよ。マサは盾役だから、特にな」

「下手して心中って?」

「単純に、旅の途中で手に余る敵に遭遇して、逃げられずに、特に装備が重いマサが逃げきれずにやられるとか」


以前から、いつかはそうなるんじゃないかと懸念している。

今までは無事だったけど、いつ何が起きるか知れやしない。

この前、カツトの手前で傭兵崩れにも絡まれたし。


「ああ、うん、ぼくは長い距離を走り続けるのは慣れて来たけど、やっぱり重いのは苦手だよ」

「だろ? 装備が重いのはマサに盾役を任せちゃってるからだ」

「傭兵として一緒に旅し続ける以上は、ずっと重い装備に耐える体力が必要ってことだな」

「うん。で、トモは寒さに少し弱いでしょ? 旅の途中で病死とかさせたくないや」

「うん、有難う。でも懐に温石を入れたり、工夫はしてるのよ?」

「最近は足にも布を一枚余分に巻いてるよね」

「やっと余裕が少し出て来たからね。あたしは最初の頃は、みんな結構ぼんやりしているから、あたしがしっかりしていないと、って思ってたわね。でもそろそろ、皆も大丈夫かしらね?」

「まあ、多分ね……」


トモは色々知ってるから、尾いてきてほしいけど、女だし、平和に里で暮らせるなら、その方がいいよな。


「オレは別に傭兵でいいぜ? 稼げるからなァ」


と笑顔で言いきってくれるトヨは頼もしい。

頼もしいのだが、


「でもさ、トヨって傭兵で懐が潤ってきたら、そのうち酒場に出入りして遊ぶようになって、下らない奴らと口論になって剣を抜くような喧嘩になって、殺されそうな気がするんだよ」

「なンだよ、それッ!?」


笑いながら指摘すると、沸騰したトヨが詰め寄って来る。


「そうかあ? トヨはしっかりしてきたと思うけどなあ」

「いや、トヨってそういうとこがあったじゃん! 前は! 今も崖っぷちの緊張感からしっかりしてるだけで、気が緩んできたらそういう地が出そうじゃんっ!?」

「おう、オメーとは一度キッチリ話をつけておく必要がありそうだなァ、オイ?」


間を詰められたところで、皆にはあまり聞こえない程度に声を潜めて、トヨに囁く。


「で、トヨ、収穫祭の時のことだけどさ、スコッレの賭けではいくら儲けたんだ?」

「な、なん、なに?」

「いや、胴元へ賭けの払戻金受け取りに行くところ見てたんだけど、なんだか……」

「おーオーッ! マサシさんにも預かってたンだよッ!」


必死に言い訳するトヨは放っておいて、女の子の方へ向き、


「それで、トヨにも稼がせてあげたいから、傭兵稼業に付き合ってくれるのも有難いし、一緒に来てほしいけど、そうするとトヨが酒場に出入りしないように、トモにも付いてきてほしくてさ、で、そうなるとエコも置いてけぼりは可哀そうだし」


エコだって、「皆と離れたくない」「皆で一緒に居たい」という漠然とした、なんていうか、失った家族という温かな存在を取り戻したいという気持ちで、それでぼくに引き摺られて付いてきているだけだと思う。


「だろ? エコ」

「ええ……そう、かな~……?」


自分の気持ちに向き合うのはまだ難しいかな。


「するとマサに一人で留守番させることになるけど、それもなんだかね。で、今までは言い出せなかったんだけど、マサが此処に移住したいというからね?」


で、またひとわたり皆の顔を見て、


「皆はどうするのが良いと思う?」


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