1.合格発表と告白
初日7話まで一気に投稿します。感想お待ちしてます。
俺の名前は八代隼人、進学校に通う高校3年生で先月某国立大学薬学部を受験して、現在は幼馴染の神木由比と2人で大学まで合格発表の確認へ向かっている。
インターネットで合否確認することも出来るが、俺は自分の足で大学まで行き確認したい。ユイも同じ大学の文学部にすでに合格を決めている。
俺の成績は偏差値で言えば68、今通っている高校内でも大体の試験で校内TOP5に入るそれなりに自慢が出来る成績だ。そして直近の模擬試験でも薬学部の合格率はA判定が出ている。試験の出来も満足できた。
(大学に合格出来たら俺はユイに告白する)
俺は10年以上暖めてきたユイへの思いを今日打ち明けるつもりでいる。
ユイは俺が5歳の時からの同い年の幼馴染だ。幼稚園の時に初めて出会い、それから小中高と同じ学校に進学した。俺とユイお互いの両親も仲が良く、夕食を共に過ごすことも多い家族みたいな間柄になっている。
(それにしてもユイは美人になったよな)
俺はユイを見て、白い息を吐きながら感嘆のため息をつく。今は2月、気温も低い。
ユイは身長165センチほどで胸はそれなり、腰はくびれていて足が長い所謂モデル体系で、青みがかってしっとり艶やかに輝く黒髪を腰まで伸ばしている。顔も健康的な白さだ。ユイの大きな茶色がかった黒目に見つめられると胸の鼓動が止まらなくなる。
(ユイが小さい頃は俺がいつも見守っていなければならないくらい体が弱かったのに、中学の頃には健康になってたんだよな)
俺がユイのことを初めて意識したのは7歳の時だ。「わたしがハヤトのおよめさんになってあげる」と照れながら当事ユイが大切にしていた指輪をくれた。俺は今でもその指輪を大切にしまっている。今日は告白の場でその指輪をユイに見せるために持ってきている。
(ユイは俺の告白を受け入れてくれるだろうか)
俺は今まで何度も自問自答した問題をまた考えてしまう。
俺の身長は180センチ、体重70キロ。それなりにスポーツもできるし勉強も頑張ってるつもりだ。ユイに嫌われたくないからできるだけ服や清潔さにも気を使っている。そのおかげだろうか、今まで3回告白を受けたことがある。告白してきてくれた女の子はそれなりにかわいい子ばかりだったが、俺にはユイがいるからすぐに断った。だがユイはもっともてるのだ。
ユイには異性同姓問わず惹きつける魅力がある。今まで告白された回数は俺が知っているだけで10回以上、だがユイが告白にいい返事をしたことはないはずだ。俺にユイへの恋愛相談が来たことさえあった。そいつには俺もユイのことが好きだと教えて引き下がらせた。
(ユイへの恋愛相談されても迷惑なだけだっつーの)
俺は答えが出ない問答を振り切るために首を振った。
「ハヤト、合格できるか不安? 手つないであげよっか?」
「いや、大丈夫だ。結構自信あるしな!」
ユイが心配そうに俺を見つめている。正直別の意味で手をつなぎたいが、ユイに無駄な心配をされるのは嫌なので、後を引かれる思いで断ることにする。
俺たちは大学の門をとおっていく。警備の人がいる建物は近くにあるが特に身分証明を求められることもなく、多くの人が行きかっている。大学敷地内には4階や5階建てのコンクリート製の建物が複数建ち、5メートルほどある道幅を多くの学生が歩いている。
(誰でも大学の中に入れるから、胡散臭い宗教の勧誘サークルとかも問題になるんだろうな)
俺たちは「薬学部合格発表の場はこちら」と矢印付で書かれている看板に従い進んでいくと、大きなボードに合格発表が張られている。ボードの周りには大勢の人がいて、サークルの勧誘している人や合格を決めて胴上げされている人、不合格だったのだろう泣いている人もいる。
(俺は合格しているはずだ)
「ハヤト、番号いくつ?」
「7932982番だ。俺が見つけるまで答え言わないでくれよ」
「うん、わかった」
俺たちは合格番号を調べていく…。7932956…7932963…7932975…7932980…7932982
「おおおおー!! 合格してた!」
「やったー! ハヤトおめでとう! これでまた同じ学校に通えるね!」
俺はユイに抱きつき、喜びをあらわにした。ユイも興奮で少し顔が赤くなっているように見える、俺の合格を本当に喜んでくれているんだろう。俺はユイに気持ちが伝わるように真剣な顔をする。
「ユイに話したいことがあるんだ」
「うん? 改まって何かな?」
「俺は子供の頃からユイのことが好きだった。結婚するならユイしか考えられないほど俺はお前のことが好きだ。付き合ってください」
俺はユイに精一杯の気持ちを伝え、子供の頃ユイから貰った結婚指輪を差し出した。周りの人も俺たちのことをチラチラと見てくる。結構恥ずかしい。変に冷やかされないだけまだマシかもしれない。
「これって……私がハヤトにあげた指輪だね。大事にしてくれてたんだ。ありがとう」
「ああ、この指輪を貰った時から俺はお前のことが好きだったんだ。返事もらえるか?」
ユイの目が潤んでる、感動してくれているのかな。外野が少しうるさくなってきた。緊張で体が硬くなるのを感じる。
(口笛吹いて煽るなよ! この空気の中ユイに振られたら最悪すぎだ。きっと死にたくなる…。きっと大丈夫だ、大丈夫なはずだ)
「少しだけ、考えさせてくれないかな?」
「わかった。気持ちが固まったら教えてくれ」
「うん」
ユイもこの空気の中で返事するのが辛かったのだろう。外野が告白の返事がないのにガッカリしてる。
(俺の方が返事もらえなくてガッカリなんだよ!)
ユイは俺の告白を喜んでくれたと思う。迷惑だとは思っていないはずだ……と思いたい。家への帰り道は少し気まずい雰囲気になってしまっている。
(まだ振られたわけじゃない。大学合格も決まったし元気出さないとな!)
俺はスマホで両親に合格したことを伝え、精一杯の笑顔でユイに話しかけるけどユイはいつもより反応が薄い。俺は不安な気持ちをユイに悟られないよう頑張りながら家に帰宅した。
家では両親が大学合格を精一杯祝ってくれたが、俺の心は告白の返事が気になってそれどころではなかった。




