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MIRAKUで「必ず!」宣言  作者: 百合男爵
14/42

➖ その4 ➖

その異様な様子にたじろいだ俺は、足早に駅から外へ出て行った。


振り返ると、さっきのプロデューサーらしき男の姿も見えなかった。


「ここからは、自分で考えて行けばいいのか。そうそう、自然体で、自然体でね」


さて、 意気込んで町に入ったのは良いが、ここからどうすればいいのか全く分からなかった。


仕方がないので、商店街を適当に散策する事にして、きょろきょろと進んで行った。


しかし、どの店を覗いて見ても客の姿も無く、たまに現れる軽トラは、道の真ん中を信じられない猛スピードで走り抜け、排気音と土埃の波を店並に浴びせ掛けて行った。


「この町、全部ロケ用のセットだろうな。道路が未舗装なのは、おそらく時代劇までカバー出来るようにしてあるんだろう」


スゲエや。などと、感心しきりで暫く歩いていると、ある事に気付いた。


この商店街は、全てが飲食系の店舗で埋まっていたのだ。


おまけに、全ての店には共通した店舗名が付けられていた。


ステーキハウスMIRAKU、居酒屋みらく、Mirakuバーガー、

スナック魅蘭来、焼き肉屋味楽、満楽うどん、お好み焼きミラク

レストランMyMiraku ,回転寿司ファミリーMIRAKU、

立ち食いそば味良食、etc


「しかし、ここまでこだわって本物同然のセット作ったら、そりゃ誰でも騙されるよな」


ふと、昨年世界中から絶賛されたアニメ、『万と万尋の猿隠し』のストーリーを思い出した。


➖ 俺が店の中を覗くと、カウンターの上には美味そうな肉料理が山のように並べられていた。

だが、店には誰も居ない。

俺は、余りの良い匂いに理性を失い、無我夢中で肉を平らげていく。

そして、気が付くと、俺はオランウータンにされていた。

妹の万尋は、俺を救う為に、一通り破茶滅茶な修行をさせられた挙句、その辛さに耐え切れずに逃げ出し、1人残された俺は、人間であった事も忘れ、湯じじいの毛づくろいをしながら一生楽しく暮らしました ➖


という展開を自分が脚本家なら考える、などと妄想を膨らませていた。


その頃、駅の構内では町民達がモニターを凝視しながら、それまでとは別の意味で意見交換がヒートアップしていた。


それも当然の事、今回のターゲットの実物の姿を今しがた自分達の目で確認したばかりなのだ。


MIRAKUからの事前情報にプラスして、否が応でも盛り上がる。


モニターには、菅介の顔のアップに加え、実年齢、家族構成、学校の成績、性格判断までずらりと映し出されていた。


さらに、画面の下には町民の人気度が棒グラフで表され、現在の賭け金のトータルが表示されていた。


そして最下段では、デジタル時計が既に秒単位のカウントダウを始めていた。


「こりゃあムズイな」

「ここ最近では、一番面白味の無いケースだわな」

「でも、これが今月の最後のケースだぜ。少しは稼いどかねえとなあ」

「俺はパスするわ。今月は貯えもあるし、無理するこたあねえよ」


そんな声が飛び交う中で、モニター上の配当金は、現在0円だった。


要するに、1人も賭けに出る者が居ない状況。


人気度ゼロという事。


最初の頃は期待も大きく、皆賭け金も奮発しようかどうしょうか、と大賑わいだった。


それには理由があった。


それは、姉の麗亜の存在だった。


伝説の女子高校生と言う学生時代の華々しい経歴に加え、現在は、その美貌と知性を生かし、大手モデルプロダクションと契約し、国内ではダントツの人気度。


さらに、来年度からは海外へ打って出ようとしている。


そんな才能に溢れた女子の弟なら、配当金もウナギ上りになる!


筈だった……


だが、彼らは当人を目で確認してしまったのだ。


余りにも期待外れである、という事実を知ってしまったのである。


結局、不満の声が漏れる中、、皆んな駅からぞろぞろと出て行った。


「まあ、もう少し様子を見る、ってことで」

「だなぁ」

「同感」


そんな会話があちこちから聞こえていた。


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