➖ その2 ➖
それは、真っ黒なベタに、不気味な爺さんが不敵な笑みを青白い顔に浮かべ、両腕を挙げて手招きをしている姿をアップにした物だった。
➖ 長老からのメッセージ ➖
『ようこそ!悩める者の永遠の楽園へ!
お前さんは一旦グチャグチャに粉砕される
そして
新たに組み立てられるのじゃ
そこから先は……
誰にも分かるもんかい!
大層な志宣言の町
その名はMIRAKU
もう、お前さんは逃れられないのじゃ
いや、逃がさん
時には諦めも肝心じゃ
だから、いまのお前さんにはこの言葉がお似合いじゃ
袋のネズミ
いひひひひ〜
ようこそMIRAKUへじゃ』
頭がクラッとなった。。
喉がカラカラだった。
金が勿体無いけど、とてつもなく甘い物が欲しくてたまらない。
側にある自販機にすがりつく様にもたれた。
は?無料?
自販機の中に並んでいるドリンク類は、全てが無料となっていた。
500ccのペットボトルのコーヒー牛乳を選ぶと、喉を鳴らして一気に飲み干した。
糖分が脳内に満たされて思考回路が復活して来たのか、ふとある事をひらめいた。
そして、それは自分の中で確信へと広がって行った。
間違い無い。
これは、ドッキリだ。
何でこんな事に今まで気が付なかったんだろう……
最近のドッキリは、度肝を抜く演出の数々だ。
そして、その為にエキストラを大勢雇い、リアルで高性能な装置を大掛かりに仕掛け、全てを巧妙に仕組み切る。
そう考えると、まだ世の中を知らない俺の様な高校生をターゲットにすれば、シナリオを組み立て安いではないか。
これだ!
そうすれば、これまで起きた事に全て辻褄が合ってくる。
思わず膝をポン!と叩いた。
「んふふふふふ、あーハハハハハ」
もう笑いをこらえ切れなかった。
震える膝の上で、揺れる鞄の中を改めて覗き込むと、高性能なドッキリの小道具が見えた。
取り出して改めてしげしげとかざして見る。
「どうやったらこんなスゲエ物が作れるんだ?まんまと騙されるところだったよ。」
玉の中には、《 pass 》の文字が浮かび上がっていた。
パ、ス?
「あ、そうか!パスなんだ。番組の関係者が俺を確認出来る様に成っている訳だ」
この玉は、きっと遠隔操作で動かされているし、俺の動きに合わせて大勢のスタッフが走り回ってるんだろうなぁ。
そう思うと、やっとの事で全てのストレスから解放された気がした。
「待てよ。てことはー」
ここは、カラクリに気付いている事をバレないように上手く合わせてやれば、番組の進行上支障をきたせなくて良い訳だな。
そこまで考えを巡らせていると、改札口の外の方が騒がしい様子に気が付いた。