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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
36/41

36 願い

さくら視点


「……ずるい。ずるいだろ、そんなの! 俺たちはそんなのできなかったのに。お前らばっかり!」


 くしゃくしゃに歪んだ表情でカロンが叫んだ。

 悲しいのも、苦しいのも、全部混ぜ込んだような表情で。

 私にはその声が、「助けて」と言っているように聞こえた。


「キライだ! サクラなんて! 大っ嫌い!」


 地団太を踏むようにして私を睨みつけたカロンの叫びに呼応して、バイデントが咆哮を上げる。

 振り上げた腕をよく見て、鋭い爪に引っかからないように体を翻して避けた。


 本当は、今でも戦うのは怖い。だからこうして攻撃を避ける方法とか、受け止める魔法ばかり上手くなっている。

 飛んで、躱して、受け止めて。カロンはちゃんと戦えと言ったけど、私の戦いは傷付けることじゃない。言葉を届け、わかり合うための方法を探すこと。


「嫌いでもいい! 私のことが嫌いでもいい! でも、一人じゃないって知ってほしいの!」

「黙れ! オレは一人でもやれるんだ! オレがやらないといけないんだ!」

「違う! 私たちはきっと、手を取り合える!」


 誰だって、痛いのも悲しいのも嫌だよね。

 そんな思いを、プルートの人たちがしなくて済むように頑張っているんだよね。


「一人で抱え込まないで。皆で、助け合おう?」

「綺麗ごと言うなよ! サクラの世界はずっと恵まれてるからそんなこと言えるんだ!」


 いつもより、バイデントが強い。力もそうだけど、早さもある。もしかして、本当にカロンの感情と呼応している?

 フラワーウォールで受け止めつつも、ちらりとカロンを見る。今にも泣きそうなその表情に、私まで苦しくなった。


「プルートは、もうすぐ滅びる! 食べる物もなければ、水だって泥水しかない! 親なんて最初からいなかった! トモダチなんて、皆死んでいった!」

「っ、」

「今はクライドが自分の命を使ってプルートを守ってる。オレたちにだってもう、時間が無い。イノセントジュエルがあれば皆だけは助かるんだ!」


 復興が必要と言っていたから、それなりに被害が大きいのだろうとは思っていたけど、人も、食べ物もないほどとは思わなかった。

 そこまで追い込まれて、イノセントジュエルを探すために街を破壊していたのか。


「だからお願い、サクラ。ジャマしないでよ……」


 透明な雫が、カロンの頬を伝って落ちた。

 ……強いな。どうすればよかったんだろう。カロンが手のひらをこちらに向けた。バイデントの腕がこちらに伸びてきている。どちらを避けても、どちらかには当たってしまう。どうしたら。


「スプラッシュエッジ!」

「ティンクルロッド!」


 ばしゃりと、水の剣がバイデントの腕を切り裂き、カロンが放ったエネルギー弾をいくつも流星が押し返す。

 目の前に見慣れた、私の大切な仲間が舞い降りた。


「ブルー、イエロー!」

「遅くなってごめんなさい」

「ピンク、聞いて。イノセントジュエルが見つかったの」

「え、それじゃあ」


 イエローが力強く頷く。ブルーが持ってきてくれた宝石がきらりと輝いた。

 これが、イノセントジュエル。これがあれば、救える。


「イノセントジュエルが……、それをよこせ!」

「待って、カロン!」


 カロンが再び手のひらをこちらに向けた。また、あのエネルギー弾を放ってくる気なんだ。さっきと同じようにバイデントも咆哮を上げている。一度、バイデントだけでも倒してしまった方がいいのかもしれない。

 フラワーアローを取り出し、構えようとした時、チュチュが静かな声で言った。


「ムダなのだワ。イノセントジュエルは最も無垢な心を代償としてしか願いを叶えられないノ」

「どういうことなの? チュチュ」

「ただの力のリソースとしてなら使えるけど、イノセントジュエルだけでは、あなたたちの世界を救えないノ」


 ……世界を救えないって、どういうこと? 無垢な心って何?

 イノセントジュエルは、奇跡を起こすほどの力があるんじゃないの?


「は? なんだよ、ムクなココロって。何、意味わかんないこと言ってんだよ」

「誰か一人ではなく、世界を思い続ける心ヨ。あなたたちの王、クライドなら可能性があったけど、彼はもうイノセントジュエルを使えるほどの力を残しては……」

「待てよ、じゃあ誰が……。なあ、サクラ。一緒に救おうって言ってくれたよな。サクラなら!」


 震えた声でカロンが私を見る。視線を隣へ向けチュチュを見た。

 ゆっくりと、横に首を振られた。


「そんな……、ウソだ。ウソに決まってる! クライドも、プルートの奴らも皆! 皆オレが死なせない!」

「待って! カロン!」

「イノセントジュエルをよこせ!」


 動きを止めていたバイデントが再び私たちに向かって鋭い爪を振り上げる。

 なんで、とか。どうして、とか。そんな言葉ばかりが頭の中を埋め尽くす。それでも、ただ一つだけ、カロンに誰かを殺させてはいけないと思った。

 これ以上、カロンに背負わせてはいけないと。


「フェアリーピンク! この力を使って」


 チュチュの呼びかけによりイノセントジュエルが光を放つ。

 これは、さっきチュチュが言っていたリソースとしての力の方? 優しい力が全身を包み込んでいく。光の帯が、レースのように何重にも重なってふわりと伸びた。


 力が溢れてくる。多分、これは誰かを傷付けるためのものじゃない。誰かの心を救うための、浄化の力。

 この力で、カロンを救えたらいいのに。


 奇跡が、起きればいいのに。






完結まで残り5話!

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