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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【ピンク編】魔法少女と解体業
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35/123

35 大好き

さくら視点。


 鞄の隙間から光が漏れ出すのを防ぐように押さえつけながら走り出す。

 まずいまずいまずい。え、大丈夫だよね? ちょっと変になっちゃったけど、さすがにプリズムパクトについてはわからないよね?


 スーパーの駐車場で会った孝樹さんに背を向けて走り出したのはつい数分前。

 とりあえず辺りを見回して人がいないのを確認して、鞄の中にあるプリズムパクトを取り出す。チカチカと明滅して、バイデントが現れたことを教えている。


 少しだけ息を整えてプリズムパクトを開く。鏡の中に、頬が上気した私が映っている。

 あぁ、ふふ。幸せそうな顔しちゃって。


「プリズムパクト」


 パクトから光が溢れ、その光に呼応するように私の髪がピンクに染まり、ふわりと広がった。蕾が開くようなポンっという音がして八重桜みたいに重なったフリルが私を包み込む。

 何度も変身してきた。何度も戦って、何度も守って来た。パクトの鏡に映った私は自信に満ちている。ちょっと前まで不安だとか悩みとかに溢れていたのに現金だなぁ、なんて。


「花びら舞い散る愛の光! フェアリーピンク」


 自然と、笑みが零れる。うん。きっと今日も大丈夫。

 あの人のことを思ったら、じんわり胸の内を温かくなる。あの人を守りたい。あの人が守る物を大切にしたい。だから、頑張れる。

 私は、孝樹さんが、好き。


 地面を蹴って、屋根の上に飛び上がる。そのまま屋根の上を走りつつ、バイデントがいる方へと向かう。

 遠目にバイデントが建物を壊し暴れているのが見えた。その近くにはカロンがいる。きっと今なら話し合えるはず。


「見つけた! それ以上暴れる子にはきっちり反省してもらうよ!」


 声をかけてバイデントの前に躍り出る。

 私を見下ろしてカロンが嫌そうな顔をした。


 カロンに、プルートの人たちに対して望んでいるのは和解。

 彼らが街を壊さないでくれれば、イノセントジュエルの力をこの世界のために使わずに済むし、その分プルートの復興にその力を使えるはず。もしカロンが、誰かを傷つけたくないと思ってくれるのなら、きっとわかり合えると思うの。


「カロン。もうやめよう? 一緒にプルートを救う方法を考えようよ」

「うるさい! お前まだそんなことを言ってんのかよ!」


 まだ、私の言葉は届かない。でもいいの。何度だって言い続ける。本当に、もうどうしようもなくなるその時まで。

 カロンの叫びが悲鳴のように聞こえた。その声に合わせてバイデントが襲い掛かってくるのを避ける。


「カロンがプルートのために街を壊すのと同じくらい、私もこの街を守りたいの」

「だったら避けてばっかりいないで、ちゃんと戦えよ!」


 花弁を集めて攻撃を防ぐフラワーウォールを駆使してバイデントの攻撃を避ければ、辺りにピンクの花弁が降り積もっていく。

 別に、戦ってないわけじゃない。だって私の戦いはカロンを傷付けることじゃないもの。


「ちゃんと戦っていないのはどっちなの!?」

「は、」

「ずっと倒すって、戦えっていうけど、カロンの方がずっとためらってるじゃない!」


 本当は、ずっと疑問に思っていた。

 皆奇跡だと言っていたけど、そんなことないって思っていた。


「カロンが本気なら、いつでも私を倒せたよね? もっとたくさんの人も倒せたよね? でも。カロンはずっと、バイデントに街を壊させながらも人を殺したりなんかしなかった」


 孝樹さんがずっと忙しそうにしているくらいたくさんの建物が壊されていたのに、今までただの一人も、人が死んでないって、ちょっと出来過ぎていない?

 チュチュはイノセントジュエルの力は発動していないって言っていた。だったら。これはきっと、街を襲っていたバイデントが人を殺さないように、カロンが注意していたからなんじゃないの?


「何、ばかなこと……」

「違うの? やろうと思えば、変身前の私も、孝樹さんのことも襲えたんだよ? でもカロンはそれをしなかった」

「う、うるさいうるさい!」

「それはカロンが! 誰かを失う悲しみを知っているから!」


 プルートは今、復興が必要な状態にあるとカロンが言っていた。つまりたくさんの人が傷付き悲しんでいる状況。

 カロンはそれをどうにかしたくてイノセントジュエルを探している。その悲しみを解決するために、一人で戦おうとしている。


「もしカロンがこれ以上街を壊すっていうなら私も戦うよ? だってこの街は孝樹さんのいる街だから」

「あ、……オレは」

「でも、カロンが誰かを失う悲しみをこれ以上増やしたくないって思ってくれるなら。他の方法でイノセントジュエルを探そうよ。ね?」


 手を伸ばす。この手を取ってほしい。

 一人じゃ無理でも、きっと皆で手を取り合えば解決方法が見つかるはずだもの。


「一人でわからなければ相談すればいいの。私は、孝樹さんにそう教えて貰った」

「なんだよそれ……」


 カロンが、私を見て目を見開いた。それからゆっくり、カロンの表情がくしゃくしゃと歪んでいく。

 届かない。届けたい。私は、カロンにもこれ以上悲しい思いを背負ってほしくない。


「……ずるい。ずるいだろ、そんなの! 俺たちはそんなのできなかったのに。お前らばっかり!」


 お願い。七海、梨穂、チュチュ。

 力を貸して、孝樹さん。


「キライだ! サクラなんて! 大っ嫌い!」


 私は、カロンの本当の気持ちを知りたいの。



大切なものを知っている二人

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