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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
28/41

28 庇護対象


 すっかり使い慣れてきた小銭入れのスナップボタンをパチリと開けて、小銭を自動販売機の中に投入する。

 正直途中で使いにくくなって、ポケットに小銭をじゃらじゃら入れる民に戻るかと思ったんだが、今のところうまく活用できている。


 いちいちポケットをまさぐって小銭を探さなくていいところがありがたいな。

 ただ未だにお釣りを仕舞うのが面倒だと感じることはあるが。


 いつものようにコーヒーのペットボトルを選ぶ。ガコンと、重い音がして取り出し口に一つ転がった。

 そのままお釣りのレバーを押さずに、いつの間にか買い慣れたミルクティーのボタンを押す。あの子はいつもこれを飲んでいる。

 ガコンと、二本目のペットボトルが取り出し口に転がった。


 さて。

 問題はこのミルクティーをどうやって、遠巻きにこちらを見ているさくらちゃんに渡すかだよなぁ。


 いやぁ、バレバレなのよ。さっきからずっと少し離れたところをついて来て、俺の様子をうかがっている。

 ちらりと盗み見た感じ制服だし、さくらちゃんの家はこっちじゃないし十中八九、目的は俺だよなぁ。


 レバーを押してお釣りと、二本のペットボトルを取り出す。

 石川ちゃんたちに話を聞いたりして色々考えたが、結局これくらいが俺とさくらちゃんの関係的に気を遣わせずに済むんじゃないかと思った。

 言ってしまえば、よく会って話すだけの他人だしな。下手に高い物品だの高級菓子だのより良く飲んでるペットボトル飲料くらいで丁度いい。


 軽く伸びをしながら振り返る。

 目が合った女子高生がここからでもわかるほど肩を撥ねさせた。


「おいで」


 そう言って手招きをすれば、おずおずと出てきたお嬢さんにミルクティーを渡す。


「この前はごめん。からかってるとかそういうつもりはなかったんだが、不誠実だった」

「いえ、私の方こそ、嫌な雰囲気にしちゃって、ごめんなさい」


 別にさくらちゃんが謝る必要はないんだよなぁ。あれは完全に俺が踏み込み過ぎたわけだし。

 普段、よく懐いてくれているからつい距離感を間違えそうになる。いや、きちんと間違えたんだが。


「それでも。俺が嫌な気分にさせたんだろう? だからこれはちょっとしたお詫び」


 いささか足りないような気がしないでもないが、それはまぁ今後も何かしらの気を遣わない程度の貢物を継続するということで。

 さくらちゃんは、手の中に納まったミルクティーと俺の顔を交互に見て、へにゃりと笑った。うん。やっぱりさくらちゃんは笑ってる方がいい。


「孝樹さんは悪くないです! 私がうまく言葉にできなかっただけで」


 そう言ってさくらちゃんはミルクティーを両手でぎゅっと握りしめ、ぺこりと頭を下げた。


「その、あの時悩んでた話、聞いてもらってもいいですか?」

「ん? ああ構わないけど」


 一先ず自販機の前で立ち尽くすわけにもいかず、すぐ傍に設置されたベンチをさくらちゃんに勧める。

 手でミルクティーを握りしめて、視線を落とすさくらちゃんを待ちながら、さっき買ったコーヒーを一口啜って喉を潤す。


「えっと、その……どうしたらいいかわからない人がいるんです」

「ほう?」

「話してみると、その人自身は普通の範疇みたいなんですけど、その人も理由があって悪いことをしているみたいで」


 うーん、これは……。さくらちゃんの好きな人の話か? 女子高生が気になる男、の話だよなぁ。

 ……気になるところがやめときな? 悪ぶってる奴がかっこよく見える年頃かもしれないけど、理由があっても悪いことをしている以上、碌なのじゃないよ?


「それがなければ。は、それがあるから悪い人なんだよ」

「それがあるから」

「そう。世の中まともな奴はいっぱいいるんだしそっちにしなさい。まだ若いんだし、しっかり見極めた方がいいよ」


 さすがにその人物とどうなるかを決めるのはさくらちゃん自身だが、変なのに騙されなくてもいいじゃない。いや、いくつになっても騙されていいわけではないが。

 それこそ手に負えないのなら、ちゃんとした機関に頼るのも必要だからね。


 本当にこの子、変な事件とかに巻き込まれてないだろうな?

 この前も逃げ遅れたのか、怪物が暴れているところにいたし。自分から巻き込まれに行っているわけではないと思うが、気を付けてほしい。

 一応俺が近くにいる時は可能な限り気を付けるが、危ないことはしないでくれよ。


「見極める……できるかな?」

「できるできる。疑問に思ったり、変だなってなったらその感覚を無視せず人に相談しなさいな。世の中悪いことやってる奴より、真面目に頑張ってる奴の方が格好いいんだから」


 そういう人を見付けて、健全なお付き合いを経た上で幸せになりなさいよ。

 さくらちゃんは少し考え込んだ後、ペットボトルの蓋を開けて一口、ミルクティーを飲んだ。


 その一口で、どんな気持ちを呑み込んだかは知らないが、あのさくらちゃんがねぇ。

 初めて会った時は数カ月前まで中学生だったお嬢さんだと思ったんだが、女の子の方が精神的な成長が早いってこういうことか。

 まぁまだ危なっかしいところもあるし、もうちょっとだけ子供でいなさいよ。



根本は何も解決していない

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