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「これはフレンドリーな接触です」〜ゲーム世界に転移したけどNPCがバグってる件〜  作者: 鱈場蟹


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第29話:見えているものの名前が全部違うんだが(認識バグ)

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朝。


俺が目を覚ます。


少女がこちらを見る。


「おはようございます」


普通だ。


……いや、普通に見える。


だが、次の瞬間。


「その“机”、よく眠れましたか?」


「ベッドな!!」


俺が寝ていたのはベッドだ。


どう見てもベッドだ。


なのに少女は平然と続ける。


「本日の机の寝心地はいかがでしたか」


「だからベッドだって!!」


俺は周りを見る。


部屋はいつも通り――


のはずなのに、


違和感がある。


机の上にある“コップ”を手に取る。


少女が言う。


「それは椅子です」


「飲める椅子あってたまるか!!」


中身を飲む。


普通に水だ。


「味は?」


「水だよ!!」


「椅子ですね」


「会話成立してねえ!!」


外に出る。


通りの人が話しかけてくる。


「今日はいい壁ですね」


「天気だろ!!」


空を見る。


青い。


どう見ても空だ。


「どこが壁だよ!!」


「非常に広い壁です」


「スケールで誤魔化すな!!」


パン屋。


店員が笑顔で言う。


「いらっしゃいませ。本日は剣が焼き上がっております」


「パンな!!」


店内を見る。


並んでいるのは完全にパン。


どう見てもパン。


だが、


「こちらの剣は外がカリカリで――」


「説明はパンなんだよ!!」


俺は一つ取る。


「これ一つ」


店員、


「剣一点ですね」


「通すな!!」


一口食べる。


サクッ


「うまい」


店員が頷く。


「良質な剣です」


「歯で削る武器あってたまるか!!」


通り。


兵士がやってくる。


「現在の治安は安定しています」


普通だ。


……と思った瞬間。


兵士が俺を見る。


「あなたは現在、パンです」


「人間だわ!!」


「二足歩行のパンです」


「情報足してもダメだろ!!」


自分の体を見る。


普通だ。


腕も足もある。


「どこがパンだよ!!」


少女が言う。


「認識情報が書き換えられています」


「見たままじゃねえのかよ!!」


「視覚と名称が一致していません」


「ややこしすぎるだろ!!」


広場。


男が女に告白している。


男が言う。


「私はあなたという冷蔵庫に恋をしています」


「人間!!」


女が困惑する。


「私は冷蔵庫ではありません」


「そこは正しい!!」


男が続ける。


「しかしあなたは非常に美しく、機能的で――」


「性能評価すな!!」


女が言う。


「私は人間です」


男、


「え?」


一瞬の沈黙。


「……人間?」


「やっと気づいた!!」


その瞬間、


「いや、やはり冷蔵庫です」


「戻るな!!」


子供が走ってくる。


転ぶ。


ドン!!


「痛い!」


普通だ。


……と思った瞬間。


子供が言う。


「私は今、地面というパンに衝突しました」


「全部ズレてる!!」


地面は地面だし、パンはパンだ!!


俺は頭を抱えた。


「もう何が何だか分かんねえよ!!」


少女が言う。


「現在、この世界では“名前”がランダムに割り当てられています」


「またランダムかよ!!」


「そのため、正しい対象を認識できません」


「生活できねえだろ!!」


その時。


パン屋の店員が走ってくる。


「大変です!!」


「今度は何だ!!」


「パンが――いえ、剣が――いや、壁が――」


「決めろ!!」


「爆発します!!」


「そこだけ正しいのかよ!!」


ドン!!


遠くで爆発。


兵士が叫ぶ。


「爆発が発生しました!!」


次の瞬間、


「これは爆発ではなくパンです!!」


「訂正すな!!危機感なくなるだろ!!」


「安全です!!」


「どっちだよ!!」


俺は叫ぶ。


「ちゃんと名前つけろ!!」


その時、空にウィンドウ。


「ユーザーフィードバック」


来た。


「“何が何だか分からない”」


その通り。


「“名前が信用できない”」


知ってる。


「改善を実施します」


やめろ。


少女が言う。


「次のアップデートでは、認識の統一が行われます」


「頼むぞ……」


「言語アップデート ver.4.3」


「だから言語だけじゃねえだろ!!」


光。


静寂。


俺は周りを見る。


ベッドはベッド。


パンはパン。


人は人。


「……直った……!」


少女が言う。


「おはようございます」


普通だ。


兵士が言う。


「安全です」


普通だ。


店員が言う。


「パンです」


普通だ。


俺は安堵する。


「やっとまともに――」


その瞬間。


少女が言う。


「あなたは現在、“仕様”です」


「概念にするなああああああ!!」


俺は空を見上げた。


「この世界、“ちゃんとした名前”って概念ないのかよ……」


少女が一言。


「仕様です」


「知ってた!!」

次回もお楽しみに!

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