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弐拾捌

 マーダーが活動をしなくなったことによってガーディアンは少し退屈に思っていた。残ったガーディアンは神谷、村野、桐井、江口、桑井の5人。あの大戦から多田は行方知らずになっていた。

 桐井、江口、桑井の3人は刀の能力を手に入れる直前まで来ていた。そして、ついに刀たちが能力を渡してくれる日が来た。

 桐井は橙龍から「人の邪心を払う」能力を貰った。衆人、現世人共に使える能力だ。そして江口、桑井も緑龍、茶龍から桐井と同じ「人の邪心を払う」能力を貰っていた。


「3人同じ能力か。しかもガーディアンに持って来いじゃないか」

「橙龍が言うには、今の日本には邪心が充満していてマーダー予備軍のような奴が沢山居るそうです。なので、緑龍、茶龍と相談してこの邪心を払えと」

「なるほど。刀同士相談してたのか。随分仲良くなったな」


 3人の刀は互いに交信して仲間意識が強くなっていた。神谷は刀たちが言う「人の邪心を払う」ということに賛成し、邪心が溢れ出して今にも爆発しそうな現世人をマーダー予備軍と呼んだ。


 現世人は自分の中に溜まっている邪心が限界を超えようとしているとき、無意識に邪心を払う行動をとる。その1つが「坐禅」である。何の意味もなく体験で行ってみようと思い立つ時がある。それは、無意識に邪心のバランスを取ろうとしているのだ。

 ガーディアンは坐禅体験などをしているお寺に行った。寺に集まる人たちの中に入ると、何やら刀たちが騒々しい。邪心が渦巻いているようだった。


 「こんなところでずっと居たら殺人鬼に戻っちゃいそう」と、桐井も現世人から溢れ出す邪心を感じ取っている様子。姿勢を正して坐った状態で精神統一を行う現世人たちの中の1人を試しに橙龍で斬ってみた。

 見た感じでは何も変わらないし反応もない。しかし、坐禅を終えたその現世人は他の人よりもスッキリした顔をして帰って行った。

 桐井、江口、桑井が同じように坐禅体験に来る人々を次々と斬っていく作業をしている間、神谷と村野は少し地獄に戻っていた。


「2人ともご苦労様」

「閻魔大王、聞きたいことがあって」

「なんだ?」

「多田のことなんだけど」

「ああ、多田か。あいつはワシが連れ戻しておいた。しかしもう現世に送ることはない」

「そうか。それは良かった。現世で意思もなく彷徨っている状態だったらどうしようかと思ったよ」

「お前は随分変わったな」

「そうかな? 村野、俺はずっと一緒だよな?」

「ええ。始めから仲間思いな人だったわよ」


 閻魔大王と神谷、村野の3人で談話をしていたが、閻魔大王も仕事が沢山溜まっている。そろそろ現世に戻してもらおうと神谷は思っていたが、閻魔大王にもう一つ聞きたいことがあった。


「中沢はどうなった?」

「お前がこちらに送ってきた時は随分怒り狂っていたよ。よく勝てたなと思うほどに。今は無間地獄の牢獄で監禁中だ」

「かなりの危険人物だ。ちゃんと見張っててくれよ」

「ワシを誰だと思っている。心配するな」

「だったらいいけど。じゃあ現世に戻してくれるかい? 3人を働かせたままにしておけないからな」

「神谷、村野。お前たちの寿命はまだまだ残っている。せいぜい現世の人々のために働いて来い」


 そう言って閻魔大王は2人を再び現世に送った。神谷の能力で地獄に戻れる為、神谷は頻繁に閻魔大王と会っていた。別に媚を売る為ではない。ただ“暇”なだけなのだ。

 中沢がいなくなったマーダーは全く活動する様子もなく、ただ存在しているだけ。今まで散々自分の中の殺意を制御して戦ってきた分、普通の争い程度では物足りないと感じていた。しかし、マーダーのように現世人を巻込んで事を荒立てることも出来ない。そこで思いついたのが地獄に戻るだった。

 しかし閻魔大王も暇ではない。次々と来る死人たちを各地獄へ分けなければならない。そんなところに暇だと戻ってきた神谷に対して、始めは問答無用で現世に送り返していた。しかし、神谷も諦めが悪い。

 何度送り返されても地獄に戻ってくるのだ。地獄に来ては送り返されを10回程したころ、閻魔大王も流石に折れた。で、少しずつ暇つぶしの会話をするようになったというわけである。


 神谷が戻ってきた時、現世ではお寺で邪心のお払いを始めて1週間経ったころだった。現世人の間ではこのお寺で坐禅を組むと本当にスッキリするという噂が広まり、徐々に体験客も増えてきていた。

 桐井たちにとっては刀で斬るだけなので負担に思うほどでもない。しかし、詰まらないといえば相当詰まらない日々だった。


 ある日、お寺に霊媒師と名乗る女がやってきた。このお寺には悪霊が沢山住み着いているというらしい。しかしお寺はそれを断固否定。そりゃそうだ。悪霊が住み着いているお寺で坐禅を組んでスッキリするなんて思えない。営業妨害だとお寺側は怒っていた。

 しかし霊媒師も引き下がらない。強行突破するかのように除霊を始めた。その一部始終を見ていたガーディアン5人は嫌な感じがした。

 そう。沢山の悪霊とは自分達のことだ。霊媒師は本物だったのである。しかし神谷達は全く悪さをしていない。むしろ、貢献しているのに除霊されるなんて真っ平御免だった。


 霊媒師の除霊が始まり、徐々に息苦しくなってきた衆人たち。肺が潰されていくかのような苦しさが襲ってきて、堪らず寺を出た。すると先程までの苦しさはすっかりなくなった。衆人たちは霊媒師によって完全に寺から追い出されたのである。

 霊媒師は悪霊たちが居なくなったのを見計らって敷地の四つ角に札を貼り始めた。結界が張られたお寺の敷地には1歩も入ることが出来なくなった。


「完全に追い出されたな」

「ええ。ここの住職さん、結構いい人だったのにね」

「見えてもいない俺達にお供え物したりお経読んだりしてくれていたもんな」


 霊媒師の騒動から、坐禅を組んでも前のようにスッキリしないという噂が広まった。やはりあの霊媒師が何かやらかしたのだとお寺の人々は怒りを露にした。

 しかし住職はそんな僧侶たちを「今までと変わりなく修行に励みましょう」と、なだめた。

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