拾捌
マーダーとガーディアンの仲介人を務める岡島からは、電波で情報が送られてくる。リアルタイムで気付く時もあれば、気付けない時もある。その場合、刀の白龍がしっかり情報を受け取ってくれていた。
「お前さ、本当にすぐ血が上るのどうにかしろよ」
「ごめんごめん。こればかりはどうもね」
「ほら、情報を言うから覚えろよ」
白龍は神谷の脳に直接情報を伝えた。それを神谷がガーディアンのメンバーに伝えた。
今回の情報はマーダーのその後の行動だった。各地に散らばり、次の計画場所を探しているようだ。そして、明日の正午に岡島が札幌駅に行くから会いに来いというメッセージもあった。まだ釧路に居た神谷達は、ひとまず飛行機で札幌へと向った。
札幌に到着後、駅周辺で正午になるのを待っていた。時間を無駄にすることはなく、マーダーの情報共有をしていた。神谷は中沢と戦った時の様子を話し始めた。
「中沢は確かに強い。ただ、あの能力にも弱点がある」
「弱点?」
「衆人を消滅させるという事は、中沢自身も消滅するという事だろ?」
「確かにそうだけど、どうやって自分を刺させるの?」
「それはまだ分からない。でも、中沢は無敵じゃないという事実さえ分かっていれば、勝機が見えてくる」
続いて浩太が話し始めた。
「高坂という女性は人の能力をコピーする能力というのは大体知っているよね?」
「ああ。そのせいで一度閻魔大王の元に戻された事があるからな」
「あの能力の持続時間は1時間はある。刀の能力は分からなかったけど、多分使えない可能性がある。刀とのコミュニケーションは取っているけど、コピーした能力がどんな能力かを高坂に伝える程度だ」
「なるほど。刀の能力を持っていると厄介だけど、とりあえずはまだマシだな」
「あと、能力のコピーの上書きは出来ない様子だった。僕の能力をコピーすることはなかったからね」
さすが浩太の情報収集だった。ガーディアン達は高坂の能力を十分理解できた。
そして次に多田が島内について話し始めた。
「島内も刀の能力は習得していない。これは断言できる。島内は現世の物に触れることが出来る能力だが、衆人に対しては基本的に影響はない。能力的には一番警戒度の低い人物だが、刀を振るう技術が長けている。もしかすると中沢並み、それ以上のものかもしれない」
「能力以外は中沢に匹敵する強さということか」
「そうだね。更に刀の能力はないが、刀とのコンビネーションはあるみたいだから、戦闘時は身体能力も上がる。私もこいつ(刀)が居なかったらとっくの前に消滅していたかもしれないね」
浩太も多田も、刀の能力を習得していなかったが、コンビネーションだけは出来るようになっていた。刀とコンビネーションが出来なければ、人間の身体能力だけで戦わなくてはならない。それは勝つのは不可能を意味していた。
そして次に星川が話し始めた。
「私が戦っていたのは梅田という男。梅田の能力はワープだったわ」
「ワープ男、梅田というのか」
「衆人をワープさせるのはもちろん、現世人をもワープさせることが出来るの。それは実際にこの目で見たわ。戦闘前に親とはぐれた子を親の元にワープさせているのを目撃したの。あの男、マーダーに居るのが不思議なぐらい心優しい人よ」
「だったらなんでマーダーなんかに……。中沢に何か脅されてるのか?」
「そんな風でもなかったわ。自分の意思であちらに居るみたい。中沢のことを慕っているような事も言っていたし。私の能力で梅田の殺意が抑えれたからこそ、冷静に話を聞けたというのもあるかもしれないわね」
話を聞く限りでは、確かに梅田はガーディアンの方が合っている気もするが、自分の意思で中沢についているなら何も言えない。中沢もワープ能力に関してはかなり重宝している様子だった。
そして最後に村野が話し始めた。
「私は始め、川上と戦っていたけど神谷さんが閻魔大王の元へ送り返したから今回は省略するわね。ただ、もう1人戦った人が居るの。名前は分からなかったけど、痛みを感じていない男だったわ」
「通り魔を起こした奴か?」
「そう。神谷さんが矢島と山根を相手している時にその男と戦ったの。通り魔を起こした現世人を斬ると出てきたのが小太りの男。私も少し冷静さを失っていたから、その男を全力で斬り続けた。男は避けることもせず、ただ私の刀を受けては死に、また生き返って刀を受けるという行動を繰り返していたの。私もある程度のところで冷静さを取り戻したんだけど、男は刀を槍の形に変化させたわ。刀の能力が何かは分からなかったけど、槍に変化するということぐらいかしら」
「なるほど。痛みを感じない身体に、槍使いか」
「最後は私の紅龍の傷口を受けていたからか、自ら首を刎ねて自害したわ。私の目を見ながらね」
「嫌な感じの奴だな」
「その男は井口徹よ」
ガーディアンの話に入ってきたのは岡島だった。まだ正午になっていなかったが、思っていたより早く着いてしまったらしい。
「岡島。早かったな」
「あなた達も早くに集合していたのね」
「早めに来てここで会議してたんだよ。ところで井口については他に情報はあるかい?」
「いいえ。私も村野さんが言っていたことぐらいしか知らないわ。お役に立てず」
「いや、名前だけでも分かってよかったよ。で、今日呼び出したのはどういった用件だ?」
岡島はポケットからとある物を出して神谷に渡した。神谷が受け取った物はサイコロだった。
「サイコロ?」
「これは閻魔大王がくれたの。マーダーにも同じものを渡してあるわ」
「閻魔大王がどうやって」
「急に地獄に戻されてね。現世での役目は終えたのかと思ったけど、このサイコロを両チームに渡せと」
「なるほど。で、このサイコロには何の意味があるんだ?」
「あなた達が私に連絡を取る手段よ。今まで私が一方的に連絡を取っていたけど、そのサイコロがあればあなた達からも連絡を取れる。使い方は簡単。神谷、あなたの刀に当てて御覧なさい」
神谷は白龍を鞘から抜いてサイコロを押し当てた。すると岡島と連絡を取っている時のように頭の中で通信を始めた。
「なるほど。これは便利だ」
「今回の用件はこれだけだから。じゃあ」
「待って。マーダーはあれから計画地を決めたのか?」
「まだよ。だからあなた達はとりあえず自分達の拠点に戻った方がいいかもしれないわね。北陸、いい場所だと思うわよ」
そう言って岡島は去って行った。




