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ぶつかりおじさん、異世界に転生する。  作者: 秋ヶ瀬胡桃


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第4話 最凶!

「ふぅ……今日も今日とて、女の子たちに囲まれて最高の一日だったぜ」


 奴隷のエミリア、アリシア姫、そしてドラゴン娘のアメリア。

 その後も俺の魅力に引き寄せられるように、ハーレムのメンバーは増え続け、俺の屋敷は毎日がパラダイス状態だった。

 そんなある日、俺がいつものように冒険者ギルドで暇を潰していると、不穏な噂が耳に飛び込んできた。

 なんでも『魔王ラーレ』なる存在が魔王軍を率いて、この世界を征服しようと動き出したらしい。


「世界征服だと? 調子に乗った魔王だな。いつか相手になってやるか」


 俺がそんな軽い気持ちで構えているうちに、事態は急変した。

 なんと魔王軍の魔の手が、このユーテリア王国にまで伸びてきたのだ!

 王国軍も必死に迎え撃ったものの、魔王軍の圧倒的な戦力の前にまったく歯が立たない。それでも奇跡的に、王都の手前ギリギリの防衛線でなんとか侵略を食い止めている状態だった。

 業を煮やしたのか、魔王は王国のすぐ近くに禍々しい城を築き、王都をいつでも灰にできるよう準備を始めたという。


「ヒロシ様! 私も一緒に行きます!」


「お兄ちゃん、アメリアも戦うー!」


 泣きつくハーレムの女たち。だが、俺は自慢のトゲトゲ肩パッドをパシッと叩き、不敵に笑った。


「お前たちは俺の屋敷で大人しく待ってな。これは男の戦いだ。それに……一対一でぶつかり合うのが、俺の流儀だからな」


 こうして俺は愛する女たちを屋敷に残し、単身で魔王城へと乗り込んだ。


 ◇


「オラオラァ! 邪魔だどけぇい!!」


 魔王城に突入した俺は、襲いかかってくる魔王の手下どもを自慢のショルダーアタックで文字通りミンチにしながら、一本道を突き進んだ。

 雑魚ざこどもを蹴散らし、ついに辿り着いた最深部――玉座の間。


 ギィィ……と重厚な扉を開けた俺の目に飛び込んできたのは、予想を裏切る光景だった。

 玉座に腰掛けていたのは、むくつけきおっさんかと思いきや、黒いドレスを身にまとった息をのむほどの絶世の美女。


「ふん……。あなたが噂の、トゲトゲ肩パッドの英雄ね?」


 妖艶な笑みを浮かべる彼女こそが、世界を滅ぼす恐怖の魔王だったのだ。


「へえ、魔王ラーレがこんな美女だったとはね。だが、容赦はしないぜ!」


「やってごらんなさい。人間のウジ虫が」


 俺と女魔王の、世界を賭けた最終決戦が始まった!

 俺は開幕と同時に、トップスピードで突撃。必殺のトゲトゲショルダーアタックをぶちかました!


 ――ドゴォォォンッ!!!


「なっ……!?」


 いつもなら敵が消し飛ぶはずの衝撃。しかし、女魔王はその豊満な胸で、俺の突進を完全に弾き返してみせた。


「だったら、これならどうだ! 【ストームスラッシュ】!!」


 烈風の剣術を放つが、それすらも彼女の放つ漆黒の魔力障壁にねじ伏せられる。強い、強すぎる!

 俺は激しく攻撃を続けながら、ずっと気になっていた疑問をぶつけた。


「おい魔王! お前ほどの力があるなら、無理して世界征服なんてしなくても好きに生きられるんじゃないか? あんたなら、黙っててもイケメン逆ハーレムだって思いのままだろうに」


「世界征服が好きな生き方なのよ。悪い?」


「それもそうか」


 俺はちょっと納得してしまう。


「でも、なんで最近になって急に? ちょっと前まで魔王の話なんて聞いたことがなかったぞ」


 魔王はクスクスと不敵に笑いながら、衝撃の事実を口にした。


「……私、あなたと同じ『転生者』なの」


「何だって!?」


「驚いた? 私はね、あなたがこの城へ来る前から、そのトゲトゲ肩パッドの戦い方を見て気づいていたわ。 あなた、前世で人混みで弱そうな人にわざとぶつかっていた『ぶつかりおじさん』でしょ?」


 心臓がドクンッと跳ねた。なぜ俺の前世を知っているんだ!?


「な、なぜそれを……」


「あなたに私と同じ波動を感じるのよ。なぜなら私は、世に言う『ぶつかられおばさん』だったんだから!!」


 俺と同じような鬱憤を抱えて生きていた女。被害者(づら)をすることで小さなプライドを保ってきた哀れな女。

 きっと、ぶつかられ方を失敗して命を落とし、この世界へ転生してきたのだろう。


「ふっ、面白い。だが、お前は俺の世界にいてはならない存在だ」


「私が恐い? 私がいると心の痛い部分をえぐられるような気にでもなるのかしら?」


「うるせえ! 最強は俺一人なんだ! 俺の前に立ち塞がる奴なんていないんだ!」


「なら私は最凶ね」


 前世の鬱憤、異世界での全能感、そして二人の「好き勝手に生きたい」という歪んだ最強のエネルギーが、今ここに極まる。

 最強の「ぶつかりおじさん」と、最凶の「ぶつかられおばさん」。

 二人は持てるすべての魔力、腕力、そして魂を肉体に凝縮させ、互いに向かって限界を超えた超光速の突撃を敢行した。


「「うおおおおおおおおおおッ!!!!」」


 ――ズギャアアアアアアアアアアンッ!!!!!!


 二人の究極の肩と肩が正面からぶつかり合った瞬間。

 因果律は崩壊し、次元の壁は粉々に砕け散った。

 光と闇、おじさんとおばさんのエネルギーが超高密度で融和し、ビッグバンを引き起こす。


 世界はまばゆい光に包まれ――。


 そして、新たなる宇宙が誕生した。


 おわり。

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