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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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317話:支配の終焉

世界が変わる。


それは、

ある日突然ではない。


飢えなくなる。


病で死ななくなる。


学べる。


働ける。


家族を持てる。


未来を考えられる。


その積み重ねが。


静かに。


だが確実に。


世界そのものを変えていた。


共和国中央会議院。


巨大円卓。


各国代表。


帝国。


北方国家。


商業国家。


山岳国家。


獣人連盟。


全部集まっている。


議題は一つ。


「旧型国家の限界」


共和国外務官が資料を投影する。


巨大魔導掲示板。


数字が並ぶ。


旧支配国家群。


人口減少。


暴動増加。


生産性低下。


逃亡率増加。


徴兵拒否。


税収低下。


全部悪化。


逆に。


共和国圏。


人口増加。


生産量増加。


識字率向上。


出生率増加。


寿命増加。


全部上昇。


会議室が静かになる。


もう。


誤魔化せない。


現実として、

差が出ている。


帝国代表官が低く言う。


「……教育済み民衆の方が強い」


北方代表も頷く。


「自立した民衆の方が豊かだ」


誰も反論しない。


昔ならあり得なかった。


国家とは。


支配するもの。


恐怖で従わせるもの。


それが常識だった。


でも。


共和国が壊した。


グロマールが壊した。


“支配しない国家”


それでも成立するどころか。


むしろ強い。


それを世界が見てしまった。


共和国中央都市。


朝。


巨大市場。


人が溢れている。


獣人。


エルフ。


ドワーフ。


人族。


魔族。


全部混ざっている。


誰も珍しく思わない。


共和国では普通だからだ。


物流ゴーレムが走る。


食料。


繊維。


薬品。


建材。


魔導機器。


全部流れていく。


ジミーが市場を歩いていた。


昔は、

小狡いだけの少年。


今は共和国最大級の物流責任者。


流通スキル。


商売スキル。


完全覚醒済み。


商人達が頭を下げる。


「ジミー様!」


「西部物流、

今月も更新です!」


ジミーが笑う。


「当たり前だろ」


「止めたら腐る」


それが共和国物流思想。


“流し続ける”


止めない。


滞らせない。


囲い込まない。


だから物が死なない。


市場の老人が言う。


「昔はなぁ」


「食い物は貴族が止めてた」


若い商人が苦笑する。


「今やったら暴動ですね」


本当にそうだった。


教育された民衆は、

理不尽を理解できる。


数字も読める。


相場も分かる。


だから騙せない。


共和国中央学校。


子供達が授業を受けている。


農業。


数学。


物流。


衛生。


魔力制御。


普通に教えている。


ピーターが教壇へ立つ。


「じゃあ質問」


「病気は何故広がる?」


子供達が即答する。


「衛生不足!」


「水!」


「栄養不足!」


「隔離不足!」


ピーターが頷く。


昔。


病は呪い扱いだった。


今は違う。


原因を理解している。


だから対策できる。


知識がある。


教育がある。


それだけで、

人は死ににくくなる。


ピーターは、

教室を見渡した。


昔の自分みたいな子供もいる。


弱い子。


自信ない子。


怖がってる子。


でも。


共和国では、

そこで終わらない。


育てるからだ。


ピーターが静かに言う。


「才能だけで人は決まらない」


「環境で変わる」


それが共和国教育。


北方国家。


旧奴隷鉱山地帯。


昔。


鎖だらけだった場所。


今。


学校になっている。


元奴隷達の子供が学んでいる。


北方官僚が報告する。


「犯罪率さらに低下」


「教育層増加」


「冬季死亡率激減」


北方王が笑う。


「結局」


「食わせて学ばせた方が安いんだよな」


現実だった。


支配は高コスト。


監視。


弾圧。


処刑。


反乱鎮圧。


全部金がかかる。


でも。


教育された民衆は、

自分で動く。


勝手に働く。


勝手に改善する。


そっちの方が強い。


帝国中央。


巨大会議室。


フェルド・レイヴンが報告書を整理していた。


「旧奴隷制度地域」


「経済効率、

共和国式導入後二・七倍」


若手官僚が呟く。


「もう戻れませんね」


フェルドが淡々と答える。


「戻したら崩壊する」


帝国も理解している。


もう。


“無知な民”を前提にした国家は成立しない。


識字率。


教育。


物流。


全部広がった。


世界が繋がった。


情報が流れる。


比較される。


だから。


遅れた国家ほど崩れる。


フェルドが言う。


「支配国家は」


「民を弱いまま固定する」


「でも」


「教育国家は、

民が国家を支える」


若手官僚が頷く。


それは。


根本思想の違いだった。


共和国中央農業区。


巨大農地。


見渡す限り畑。


魔導灌漑。


水路。


土壌制御。


ゴーレム農機。


全部動いている。


食料充足率。


七百五十%超。


もはや異常。


でも。


共和国は止めない。


理由は単純。


“足りない方が危険”だから。


グロマールが畑を見ていた。


ミレナも隣にいる。


ミレナが苦笑する。


「ここまで来ると怖いわね」


「食料余りすぎ」


グロマールは普通に答える。


「余剰は保険だ」


「不足の方が危険」


相変わらずだった。


浮かれない。


現実主義。


ミレナが笑う。


「アンタほんと変わらないわね」


グロマールは畑を見る。


子供達が走っている。


農業実習。


共和国では、

農業も教育。


“食える技術”


を全員へ教える。


グロマールが静かに言う。


「食えないと」


「全部壊れる」


その通りだった。


この世界は長く、

そこを軽視してきた。


だから飢えた。


だから崩れた。


共和国は逆をやった。


食わせた。


教育した。


治した。


結果。


国家が強くなった。


夕方。


共和国中央広場。


街頭演説。


地方代表が民へ話している。


「共和国は支配しません!」


「支える!」


「学ばせる!」


「働ける環境を作る!」


民衆が拍手する。


昔なら、

こんな言葉は綺麗事だった。


でも今は違う。


実際に実現している。


だから支持される。


共和国の強さは。


軍だけじゃない。


民衆そのものだった。


夜。


帝国皇城。


アレクシスとマーガレットが報告書を見ていた。


マーガレットが静かに言う。


「世界が変わりましたね」


アレクシスも頷く。


「もう」


「恐怖だけでは維持できん」


帝国も変わった。


支配だけの国家ではなくなり始めている。


理由は単純。


その方が強いから。


マーガレットが言う。


「共和国は」


「人を使い潰さなかった」


「だから増えた」


「だから続く」


アレクシスが窓の外を見る。


帝都。


光。


人。


物流。


工場。


学校。


全部動いている。


昔の帝国とは違う。


“民が生きている”


そんな空気がある。


深夜。


共和国中央。


グロマールが一人で歩いていた。


巨大都市。


光が溢れている。


夜でも人がいる。


治療院。


市場。


学校。


工場。


全部動いている。


昔。


この世界は。


支配で回っていた。


恐怖で縛っていた。


でも。


もう違う。


人は。


育てた方が強い。


支えた方が動く。


教育した方が豊かになる。


世界が。


ようやく理解し始めていた。


グロマールが静かに呟く。


「支配は」


「止まる」


短い言葉。


でも。


その視線の先には。


次の時代があった。


“人が自分で立つ文明”


それが。


今、

始まっていた。







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