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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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307/322

305話:教師国家

共和国中央統計院。


朝。


巨大魔導表示盤が静かに光っていた。


人口。


物流量。


識字率。


出生率。


食料備蓄。


全部表示されている。


その中央。


巨大文字。


『共和国登録教師数:4,023,881』


室内が静まり返る。


若い統計官が震えた声を漏らした。


「……四百万」


「ついに突破しました」


共和国最大職業。


教師。


世界史上初。


農民より多い。


兵士より多い。


貴族より圧倒的に多い。


国家最大勢力が、

「教育」へ変わった瞬間だった。


中央教育院。


巨大会議室。


各分野責任者が集まっている。


農業。


工業。


物流。


治癒。


索敵。


建築。


全部教師がいる。


共和国では、

教師は学校だけの存在じゃない。


知識継承者。


そこが重要だった。


ピーターが資料を見る。


静かな目。


側近教師が報告する。


「農業教師、

百十万人突破」


「工業教師、

七十万人突破」


「治癒教師、

四十五万人突破」


「物流教師、

継続増加中」


共和国は、

教える人間が増え続けている。


理由は単純。


教えるほど、

国全体が得をするから。


昔。


知識は独占物だった。


共和国は逆。


配った方が強くなる。


そこへ到達している。


中央農業区。


巨大農地。


朝露。


広大畑。


農民達が働いている。


だが。


普通の農地ではない。


若い農民が子供達へ教えていた。


「土を見ろ」


「乾きだけじゃない」


「流れを見るんだ」


子供達が真剣に聞く。


共和国では。


農民でも教師。


そこが大きい。


昔。


農業は経験依存だった。


父から子。


口伝。


勘。


共和国は違う。


理論化した。


土壌循環。


水分管理。


病害予測。


魔力循環農法。


全部教育化。


だから継承速度が異常に速い。


老農民が笑う。


「もう俺達の時代とは違うな」


隣の若い教師農民が頷く。


「子供の方が詳しいですからね」


共和国農業。


すでに「知識産業」へ変わり始めていた。


中央工業区。


巨大繊維工場。


紡織機械が並ぶ。


大量生産。


でも。


共和国工員達は、

ただ作業していない。


若い工員教師が新人へ説明する。


「糸張力を一定化しろ」


「織り速度だけ上げるな」


新人達が真剣に頷く。


共和国では。


工員でも教師。


知識を抱え込まない。


共有する。


だから工業速度が落ちない。


帝国視察官が呆然と呟く。


「……なんだこの国」


「現場全員が教育してる」


共和国工業責任者が普通に答える。


「止める理由がありません」


それが共和国だった。


知識を止めない。


だから循環が止まらない。


中央治療区。


巨大治療院。


白衣の治癒師達が動いている。


子供達。


高齢者。


労働者。


全部治療対象。


若い治癒師が新人へ説明する。


「傷だけ見るな」


「生活を見る」


「栄養を見る」


「水を見る」


共和国では。


治癒も教育。


病気を治すだけじゃない。


病気を減らす。


そこまで体系化されている。


だから平均寿命すら伸び始めていた。


老治癒師が静かに言う。


「昔はな」


「治せる奴だけ救ってた」


「今は違う」


「病気になりにくくしてる」


新人達が真剣に聞く。


共和国治癒理論。


それは、

文明維持技術だった。


中央物流区。


巨大荷車列。


道路。


倉庫。


積載場。


全部整備済み。


ジミーが巨大物流盤を見ていた。


共和国物流責任者。


元ズル賢い少年。


今や世界最大物流網の管理者。


若い物流教師が説明している。


「輸送は速さだけじゃない」


「安定が命だ」


新人達が頷く。


共和国では。


物流でも教師。


知識共有が前提。


だから人材が減らない。


物流事故率。


輸送遅延。


全部低下。


世界が追いつけない。


中央大学。


巨大講堂。


共和国教師認定式。


数万人。


新教師達が並んでいる。


農民。


工員。


治癒師。


索敵師。


建築士。


全部いる。


共和国では。


「知識を持つ者」が教師。


資格は身分じゃない。


能力。


継続。


共有意志。


そこだけ。


壇上。


ピーターが立つ。


静かな空気。


新教師達が見つめる。


ピーターが口を開く。


「共和国教師に必要なのは、

才能ではありません」


「次を育てる意思です」


静かな声。


だが。


全員が聞いていた。


「知識は、

止まった瞬間に腐ります」


「だから渡してください」


「渡し続けてください」


「それが共和国です」


巨大拍手。


共和国教師国家。


ついに完成段階へ入り始めていた。


中央街道。


夕方。


子供達が歩いている。


本を抱えて。


笑いながら。


その横を。


農民教師が歩く。


治癒師教師が歩く。


工員教師が歩く。


共和国では、

教えることが日常だった。


そこが大きい。


昔。


教育とは特別だった。


共和国では違う。


生活そのもの。


だから広がる。


だから止まらない。


中央高台。


夜。


グロマールが街を見る。


無数の灯り。


学校。


工場。


治療院。


研究区。


全部動いている。


セレスが隣へ来た。


「四百万人教師って、

もう意味分からないわね」


少し笑う。


グロマールは静かだった。


遠くを見る。


「知識を独占しないから、

国が強くなる」


短い言葉。


でも。


共和国文明の核心。


昔。


強い国ほど、

知識を閉じた。


共和国は逆。


配る。


育てる。


共有する。


だから。


民全体が強くなる。


セレスが小さく息を吐く。


「支配国家とは真逆ね」


グロマールが頷く。


「ああ」


「支える側を増やした」


そこが違う。


共和国は、

英雄を量産していない。


「育てられる人間」を量産している。


だから循環する。


だから文明が止まらない。


夜空。


大学灯り。


農村灯り。


工業区灯り。


全部繋がっている。


共和国教師国家。


それは。


世界で初めて。


「知識を独占しないことで成立した超大国」


その形へ。


静かに到達し始めていた。







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