予想外な素顔、予想外な種族
「……」
「別に、見たからには生かして帰してあげられない……なんてことにはならないわ。この子はただ、恥ずかしがり屋さんなの」
リンデが膝に乗せた2号ちゃんを構いながら言う。
いや、興味があるかないかと言えばあるけれども……恥ずかしがり屋さんなのに、いいのかな? という疑問はある。2号ちゃんがよければ見せてもらいたいなあ……って感じか。
「2号ちゃんが良ければ……見せていただきたいなと思いますわ。本当に、なにか無茶な言いつけとか、いたしませんのね?」
「あなたの、わたくしに対する認識がよく分かるお言葉ですね。この子の顔を見たくらいではなにもありませんわ」
んんん、なんか言いかたが引っかかる気もするが……ここまで念押しされて大丈夫そうなら、まあ。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……2号ちゃん、見てもいいですか? ……じゃなくて、見てもいいかしら?」
お嬢様言葉縛りが存在するため、ちょっと言いにくいなあと思いつつ2号ちゃんに微笑みかけた。彼女か彼かは分からないが、とりあえずこの子が可愛いことは間違いないのでどんなお顔でも愛でられる自信があるが……そのヴェールの下についての興味は尽きない。
見せてもらえるなら見せてもらおうじゃないか。
「……!」
元気よく頷いて、2号ちゃんはシスターのようなヴェールに手をかける。
果たしてその下の姿は……?
「お、おお……」
ヴェールが取り払われたとき、私は驚いた。
コメントでもかなりざわついている。
こういう方向性は予想外だったとしか言いようがない。
「ふふ、驚いているわね。この子、怖がられちゃうこともあるから、普段は自分からヴェールをしているのよ? 素顔も可愛らしいのに、もったいないでしょう?」
「……予想外でしたけど、私は好きです」
2号ちゃんの素顔は、一言で言うと『異形頭』という種類のものだった。
映画を撮影しちゃダメ! というムービーで入る泥棒さんみたいな、頭が生き物ではなく無機物の部類のデザインなのだ。
2号ちゃんの首から上に乗っかっているのは、上部が丸い鳥籠のような形をしたランプだった。
中心に小さな炎が灯っていて、その炎は緊張しているかのように色を忙しなく黄色や赤へと変化していく。
鳥籠のような見た目をしているが、ランプであることは間違いないのでカゴの隙間部分は透明なガラスになっている。人で例えると、正面の鼻から口にあたる部分に鳥籠の扉が位置していて、そこを少しだけ開いてリンデがクッキーを与えている。
クッキーは中心の炎に触れると、かじったようなあとがついてだんだん消えていく。飲み物も同様に、リンデが紅茶をスプーンに少しばかり乗せて与えている。
なるほどなあ……そういうパターンか。
好きな人はめちゃくちゃ好きなやつだよね、異形頭。
その中でもランプはわりとスタンダードなほうだと思うので、あんまり怖くもない。むしろこれを公開していたほうが人気が出そうである。
この子が可愛いことは元から知っているわけだし、多少予想と違ったところで距離を取りたくなるわけでもないし……人を怖がらせたくないからヴェールで煽って普段は見せないっていうのもポイントが高いね。
ジンはちょっとびっくりしたようだが、テーブルの上におりて興味深そうに近づこうとしている。
「あ、あの……私もクッキーをあげてもいいでしょうか?」
「いいわ。ほら2号ちゃん、いってらっしゃい」
2号ちゃんのほうから来たものだから、ジンも喜んでいるようだ。いつものようにジンを抱っこしたがる2号ちゃんに彼を渡して、私も扉の中の炎にクッキーを近づける。
ほのかに温かいくらいで、熱さはあまり感じない。本物の炎とかではないのかも? かじったようなあとがつくのが、なんだかおもしろい。可愛い。
「聖獣……なんですよね? 種族を教えていただくことはできますか? 始めて見るんです! 私とーっても気になりますわ! どの子から進化いたしますの!」
口調に気をつけながらリンデに尋ねると、彼女は機嫌を良くしているのか快く教えてくれた。新たな聖獣発見に、その貴重な情報源だ。これを聞かないという選択肢は普通ないだろう!!
「この子はメイドゴブリン。猿系統の聖獣の器用値をあげて、『揺らめく異界のランプ』を持たせることで進化する子よ」
ここで私は、2号ちゃんが異形頭だったことを知ったとき以上に驚いてしまった。
「えっ!? ゴブリンですか!? えっ!?」
私のイメージしてたゴブリンと違う!! というか神獣郷にゴブリンとか出るとは思ってなかったよ!?
でも、私が叫んだあとのコメントのひとつでちょっと納得してしまった。
有識者に感謝である。
コメント曰く、『七大罪の強欲を示す動物は、ゴブリンと蜘蛛である』……と。
神獣郷
>>人外みが強ければとりあえずおっけー!
>>運営側は多彩な人外性癖の人が集まっているようだ。




