氷上に舞う紅白の蝶【オボロとのデート 後編】
今回のマト当てゲームでは『フィールドを氷上に設定』し、マトを氷の結晶の形をしたものに設定。ランダムでフィールド上に現れたり消えたりする仕様で、真ん中に近いところを攻撃すればそれだけ得点が高い。
これは一定の距離からマトを当てるのではなく、無数に現れるマトを時間内にどれだけ攻撃して、得点を取れるかのゲームだ。
「準備はいいですか? オボロ」
「わふん」
制限時間は五分。
五分ならば…………当たり前だけど使うよね。だって今日はここに遊びに来たのと同時に、動画撮影をしに来たのだし。
氷上に二人で立ち、動画を撮影し始める。
自動撮影プラス、一体だけアルターエゴを雇って立体的な撮影もしてもらうことになっている。あとで編集して躍動感ある感じに仕上げたいのだ。
設定をいじり、ありったけのスピード系バフを自分とオボロにかける。
それから、中央にある開始のボタンを押すために二人、優雅にスケートリンクを滑って向かった。
「さあさあ」
ボタンを押す直前に所持していたオボロのエッグを使用。
「我が友、六花を宿したる使者。我の手足となり、共に氷上を舞い踊る華となれ! オボロ、『神獣纏』!」
「アオオオオオオオン!」
「開始!!」
以前の口上とはまた別の、アカツキとの口上と重なるように宣言。
雪に覆われるように白いオーラが私のアバターにまとわりつき、緋色の耳と尻尾が生える。手足ももこもこのケモノの手に変化し、隣のオボロと共に吠える。
口上の終わり間際には開始ボタンを押していたため、マト当てゲーム自体は変身途中から始まることとなる。
え、マト当て開始してから変身だとタイムロスだって? 案外そんなことはないんだよね! マトが出てくるのに三秒くらい時間がかかるから! その辺は他の人のお遊び検証動画で確認済みだ! つまりはその三秒くらいの間に準備完了できているようにすればいいだけなのだから!
足元は無駄に力まず、滑るようにしてスケートリンク上を縦横無尽に駆け回り始める。オボロもそれは同様で、最初の三秒を過ぎてから氷上に次々と現れるようになった氷の結晶のマトを思い思いに壊していく。
私は私で純白の扇子を使用して、雪属性のスキルで小さな氷の弾丸を生み出したり、宙に現れたマトに向かってバク転の要領で蹴り上げて壊したり、オボロが通り過ぎたところに不意打ちで現れたマトを見つけて緋色の扇子をぶん投げたり……まあ、やりたい放題だ。
「グァウ!」
連携して居場所が背中合わせになるように立ち回り、それぞれの視界の範囲でマトを一つ残らずぶっ壊していく。
フィールド上は結構広めなので、それぞれが動く範囲を決めて、そこに出てきたものをなるべく漏らすことないよう叩く。それを徹底しているのだ。ときおり、お互いが撃ち漏らしたものに氷のつぶてなどの援護を送って、完全に余りがないように立ち回る。
「ひとつも逃すな!」
「ウォン!」
私は私で、鼓舞するように声を張り上げて笑う。
返事をするオボロの声もまた勇ましく。この場で舞い踊り、跳ね回る一人と一匹がどちらも美しく、勇ましく、そして格好良く見えるよう口角をあげる。
ああ、懐かしいな。ミズチ戦前に、トレント達相手に実を打ち返しまくったときも確か、「一体も逃すな!」とか言って鼓舞をしていた。あのときは、ただただぶちギレていただけだったけれども、今は冷静に正確に、格好良く振る舞うことを意識してやっている。
どうか、見てください。
あの頃よりもずっとずっと洗練されて、強くなった私達を!
そんな思いを込めてオボロと二人、交差するように跳ねて場所を交代する。
空中のマトには、よりいっそう高く飛び上がったオボロが勇ましく噛みついて砕き、私は氷上に次々と速度をあげて出たりいなくなったりしていくマトを、扇子を両手に持ってまとめて薙ぎ倒す。
特に真ん中を狙っているわけでもないが、大半はしっかりとマトの中央に吸い込まれるように技が入るため問題はなし。
氷に足の爪が当たってガリガリ、チャカチャカと軽い音が鳴る。
重さの違う二種類の足音が氷上を自由自在に動き回り、私はたまにオボロの真似をして四つ足で駆けてから飛び上がってみたりもする。
手足の形状が狼型だから、手をついて四つ足にしても不自由さはない。むしろスピードが上がるので、積極的に遠くのマトを狙うときは手をついて駆けた。
優雅に、しかしどこか野生みを感じる動きで、縦横無尽に氷の上で跳ね回る姿は……きっと、ひらひらと舞う紅白の蝶のように見えないこともないだろう。
まあ、今は蝶じゃなくてオオカミなんだけども!!
「がおー! なんてどうですか!」
「わふぅん!」
「可愛い? ふふ、ありがとうございますオボロ! 君も最高に可愛いですよ!」
「きゅん! グァウ!」
オボロとなんとなく意味が通じているような通じていないような、微妙な感じの会話をしながら極小サイズの雪玉のようなマトを全てさばききる。
そうして、そこかしこから現れていたマトが現れなくなったとき……開始ボタン付近の電光掲示板に五分経過のお知らせと、マトを全て漏らすことなく壊したパーフェクトの文字。そして八割強も中央に当てて壊していたことを表す高得点が表示されたのだった。
「やりましたね!」
「くぉん!」
私が手をあげると、オボロも右前足をあげてお互いにハイタッチをする。
はじめてのマト当てにしてはかなりいい得点だろう。
こうして、その日は一日中そんな調子でオボロと遊び通したのだった。
掲示板はデートが終わってからまとめて!ということにいたしました。ご意見・コメントありがとうございます!!




