ザクロちゃんと食べ放題です!
「さあ、ザクロちゃんデートだ!」
「ぴゅるるるぅい!!」
ノリに任せて言えば、元気よく鼻息で返事をしたザクロちゃん。可愛いの権化かな?
ともかく、私は彼女の宝石をみがき、鱗をみがき、そして鞍と頭絡を装着して乗り込み、大空へと飛び立った。
ワイバーン型の姿をしているので、もしやモモンガとかムササビみたいに滑空のほうが得意だろうか? とか最初は思っていたけれど、普通に大空を舞うのに支障はなく、むしろ得意げである。
ドラゴン系列の聖獣はプライドが高く、認めた相手にはデレッデレというのが基本なのだが、彼女はその典型例なのだろう。初期聖獣の辰も、懐くのに時間がかかる代わりに、一度認めたらたとえパートナーがカルマ値を稼ぐ悪になろうと、魔獣堕ちしながらも地獄までついてくる……それがドラゴン系聖獣である。
ただ……その分、パートナー以外にはそんなに心を許さない。誇り高きドラゴンだ。
ワイバーン系はドラゴンじゃないみたいな過激派もたまにいるけれど、もしもそういうやつがいても、「この神獣郷においてはワイバーンもドラゴン枠ですぅ!!」と口を酸っぱくして言ってやる。
「さてザクロちゃん、食べ放題ですよぉ!!」
そしてやってきたのは、彼女を仲間にした宝石だらけの場所。
そう、『宝石樹の鍾乳窟』である。
里帰りかな?
「ぴゅるるるん!」
「さあさあ食べ放題です。好きなものを採掘して味見しちゃいましょう! それから、好きな味があったら教えてくださいね? ご飯を選ぶときに参考にしますから!」
「ぴるる!」
テンション高めに腕を挙げて、ガッツンガッツンと採掘を繰り返す。
泊まり込みでこの鍾乳窟にいる人達は、ときおりなんだなんだと騒がしい私達に視線を寄越すが、ただ単に採掘しにきているだけと分かると自分の作業に戻っていく。
ザクロちゃんに君と同じ名前だよ! と語尾にハートがつく勢いで柘榴石を渡せば、ぺろりと炎の舌で舐めて大事そうに抱え込む。はあ〜可愛いかよ。
「食べていいんですよ?」
「ぴるっ!」
大事そうにもぐもぐ食べだすザクロちゃんマジかわなんですけど。ちょっとお写真いいですか???
採掘したものを次々渡していくと、ザクロちゃんは美味しそうにポリポリとイイ音をたてながら食べていくのだが、そのうち食べた数が20を超えた辺りで私に宝石を差し出してきた。
「ん、どうしたんですか? 今日は食べ放題なので君が食べてていいんですよ?」
「ぴゅぅ……」
大きな体に似つかわしい大きな尻尾が私を囲い込む。シズクもそうだけれど、これは尻尾のある子達の癖のようなものなのだろうか? その独占欲にも似た仕草が心底可愛いくて、私は内心「た〝 ま〝 ら〝 ん〝」ってなりながら笑顔で首を傾げる。笑顔に内心のヤバさはいっさい乗せないようにするのが、デキる淑女のたしなみです。
ザクロちゃんが大きな水晶をバキッと割って私に差し出してくる。
アッ、もしやこれって、自分ばかり食べているから貴女も食べてっていう……? そういうアレですか……? は〜尊い。女神じゃん。
「残念ですが、私は宝石を食べられないんですよ」
「きゅ……」
明らかにしょんぼりとした彼女に胸が「うっ」となって、思わず宝石を受け取る。これは……これは私が食べるべきでは??? だってこの子がこんなにも美味しそうに食べてて、なおかつパートナーの私に自分が好きな食べ物を、一緒に食べてほしくて渡してきたわけでしょ? 食べない選択肢なんてないのでは??? この子をしょんぼりさせてしまうなんてこの世の罪では??? は??? 私はなにを常識に囚われているんだ。よっし、食べよ。
「ちょっ、待った! 待った! ケイカさん! なにトチ狂ったことしてるんですか! 親バカすぎるにもほどがあるでしょう!!」
「誰がバカですか! ああん!?」
振り向いたら、そこには久しぶりの変態紳士がいました。
「!? えっ、なんでここにいるんですか!?」
秒で五メートルくらい距離を取ったら、ついてきたザクロちゃんが私を尻尾と翼腕でホールドして威嚇の唸り声をあげる。今にも火を吹いて目の前のストッキンさんを黒焦げにしてしまいそうだ。いいぞ、やってやれ。
「いや、たまたま宝石を入手しに来てたのですが……さすがにトチ狂ったことをしようとしているのが見えて止めに来たんですよ。あなたも料理して普通に一緒にご飯食べればいいだけの話じゃないですか。なんで宝石にかじりつこうとしてるんです?」
私はかじろうとしていた宝石を、そっとザクロちゃんの口に持っていって食べさせながら、もう片手で口元を覆った。
口元に宝石差し出されて、思わず食べちゃうザクロちゃん、ぐうかわ。
「ハッ、その手がありましたね!」
「あなたは時々、ご自身のパートナー達のことになるとIQが下がりますね……」
「それは煽ってます?」
すでに正気には戻っているが、久しぶりに会えたストッキンさんに、嬉々として絡みに行ってみる。もちろんただ、彼と言い合いするのが楽しいからふっかけていっているだけなのだが、彼もそれを察してか口元を笑みに変えて返事を寄越す。
「煽っているつもりはないです。エレヤンは喧嘩っ早くて嫌ですね」
「やっぱり喧嘩売ってません? いい値で買いますよ?」
「その商品は現在品切れです」
「あ〜、とっても残念です」
そんな私達のやりとりに、ザクロちゃんは私と彼を交互に見てから、ますますギュギュッと抱きしめてくる。
「ああ、すみません。ザクロさんでしたっけ。デートのお邪魔ですね。それじゃあ、私はこれで」
なるほど、やっぱり嫉妬かな? デートの邪魔をされて怒ったのか。ザクロちゃんは本当に可愛い子だなぁ。
ストッキンさんに手を振ってバイバイしてから、自分もボックスの中にストックしてあるサンドウィッチの入ったカゴを取り出し、手頃な岩に座る。
「さ、食べましょうかザクロちゃん。このサンドウィッチはリリィの店で買ったものなんですよね〜。味が薄くても美味しくてほっぺたが落ちちゃいそうになるくらいなんですよ? 一緒に好きなものを食べましょうね!」
私がそう言って一口かじると、ザクロちゃんは宝石を持ったまま慌てて私の両頬に指先をそっと添えた。ん? なにかな? と思って見つめると、どこか心配そうな顔……?
あっ。
「大丈夫ですよ! 本当にほっぺたが落ちちゃうわけじゃなくて、そういう比喩ですからね!」
「ぴる……?」
「本当ですってば!」
はー??? 可愛いがすぎるよね???
私がほっぺたが落ちちゃいそうになるくらい美味しいとか言ったから、両頬に指先添えたの??? はーーーーーーーなにこの子。天使かな???
萌えの過剰供給で死ぬかもしれない。
そんな感じで、彼女から供給される『萌え』に内心悶えながらも、私はザクロちゃんとの一日デートを完遂したのだった。
周囲にいた人達が高速でなにかをタイプしているのが見えたので、私公認の目撃情報スレ辺りで拡散されているような気がする。
ま、みんなとのデートが終わったら確認すればいいかな!
ここまできたらラストはアカツキだな〜と思ったり。




