黒歴史←現在進行形
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お前の目は月のように綺麗だなぁと、女が言った。
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「さあ、イベント開始の日がやってきましたね!」
イベント当日。
アルカンシエルの街はいつも通りのようにも見えていたが……いつもよりも少し気温が低い気はしていた。
配信までにイベント会場となる場所に着いている必要があったため、すでにワープ用の印を設置しに行き、今日はこの街からひとっ飛びするだけで参加できるようになっている。
ヴィーヴィルのザクロもめちゃくちゃレベリング周回して、レベル50くらいになっている。晴属性単体の子だが、霊術スキルやデバフ系スキル、状態異常スキルが豊富でなかなか育てがいがあった。まあその辺のレベリング風景は配信もしていたことだし、見たい人だけアーカイブで見てもらうことにするとして……イベントに向けた準備はなにもかもが万端だということである!
「日々のレベル上げ配信を見ていてくださる視聴者の皆様も、今回がはじめましての人も、こんにちは! 舞姫のケイカです! 今日もはりきって『ケイカのブリーダーチャンネル』の配信をやっていきましょう!」
リアルが秋真っ盛りなせいか、それともこれもイベントの異変が原因なのか?
異変の起きている場所はかなり遠いというのに、こうまでアルカンシエルにも影響があると少々恐ろしくなってくるよね。
実際現場は寒さの耐性がないと一定時間ごとに体力が削られる仕様になっていたので、対策は必須だ。私は装備自体が晴属性のものをふんだんに使っているため、あまり影響はないが……念のため、事前にストッキンさんへと依頼して装備を耐寒用にアップデートしている。素材はザクロのいた鍾乳窟で採れるものだったのが幸いした。
さて、そんな感じで寒さが目立つ神獣郷内だが……その代わりNPC達のちょっと厚着した姿を見ることができるので、ちょっと嬉しくもある。
キャラの衣装チェンジは滅多にないからね。神獣郷ではたまに衣装チェンジしているキャラもいるが、大体は固定なため、グラフィックが変わっていると「おっ!」という気持ちにもなるだろう。
ゲームプレイヤーってやつは、好きなキャラの衣装チェンジに一喜一憂するものなのだ。推し達が今日も可愛い! とやる気もアップして、笑顔で一日頑張れるようになるからね。
「ではでは、今日のメンバーを紹介してから、さっそく現場に行きましょう! 一応最初は初見プレイを心がけるつもりですよ。どうやらダンジョン探索型のようですし、そんなに苦労はないでしょう。予告の意味深な感じが気になりますが……まあ、飛び込んでみれば分かるでしょう!」
考える前に飛び込めってね。
「今日のメンバーはなるべく晴属性と太陽属性で固めてあります。寒いところに行くというのと、炎が消えているって言葉から『火』を出せる子達で様子見しようってことですね」
メンバーは晴・太陽属性のアカツキと、晴属性の新入りちゃんザクロ。太陽属性を持っているレキ。それと寒いところだからという理由でオボロである。
今回のダンジョンは一階層ごとにメンバーを変えられるようになっているらしいので、二階層目に入る際にシズクとジンを連れてくることを約束して、一番最初はお留守番をしてもらうことにした。
アイテムなどは途中で買えない仕様らしいので、回復薬が足りなくなってきてからが、シズクの活躍時だろうと判断してのことだ。
それはそれとして、「せめて二階で呼んでくれなきゃ嫌です!」というシズクとジンの気持ちもちゃんと優先しないとね。レベリングには散々付き合ってもらったが、案外あの子達も人に見られるのは好きなのだ。配信にも付き合いたいし、私の役にも立ちたい。そういうことだろう。約束は守るから安心してほしい。
「にしても、この公式のイベント紹介結構好きですね。私は」
公式ページに書かれているイベント概要。それはこんな感じである。
――――――
【イベント概要 壱】
第一段階
・アルターエゴからの依頼。
『消えゆく灯火達』
突然街から「火」が消えて徐々に冷え込むようになっていってしまった。
管理者の鳳凰らが方々を周り「火」が失われて行く原因を探ったところ、街全体が凍りつき、街の人間全てが眠りについて目覚めない、異変の始まった場所だと思われる地域が発見された。
このままでは異変が広がり、世界中が凍りつき、誰もが目覚めることのない眠りに落ちた世界が広がって行ってしまうだろう。
影響を受けないのは共存者とそのパートナー達だけである。
共存者らは、異変の起こった街で唯一眠ることなく助けを求める共存者の少女に話を聞き、原因を探って解決せよ!
――――――
「第一段階って書いてあるのが気になりますよね。これ、なにか分かるごとに段階が進んでいきそうじゃないですか? 全体に共有される情報なのか、それとも個人で進めるストーリーなのか……そこも気になるところです」
しかし、やはり『火』は重要そうだ。
「頼りにしていますよ」
「カァ!」
私の言葉へ真っ先に反応したのは翼をバサッと広げたアカツキ。
そして、「うぉん!」と返事をするように吠えるオボロ。
鼻息のような音を立てつつ炎の舌をぺろりと動かすザクロ。
ゆっくり「おう」と返事をするレキ。
そしてワープした私達は……目の前一面に広がる凍りついた街を見上げた。
遠くには……両開きの扉だけが空中に浮かぶように存在している異様な光景。そして、そこに押しかける数多のプレイヤー達と、扉の前で背の高い女性が話しをしている様子。
あの女性が恐らく公式ページに載っていたNPCだろう。
冬に沈んだような凍りついた街の中で、一人だけ肌を露出した軽装の魔女っ子服を着ていることがどこか違和感を覚えさせる。
NPCは普通に気温に合わせた服を装備しているものだが……あの子は寒くはないのだろうか?
それと、彼女の足元には、パートナーらしき三ツ首の暗い紫色をした狼の姿がある。どう見ても地獄の門番、ケルベロスだろう。
ときおり女性に近づきすぎたり、ちょっかいをかけようとするプレイヤーを大きな尻尾と三つある首で牽制している。
さて、順番待ちするべきかな? いやしかし……そんな風に考えながらワープ地点から一歩踏み出すと――突然目の前の景色が歪み大勢いたプレイヤー達の姿が消える。
「え」
そして、先程の女性NPCが両開きの宙に浮いた扉の近くから、ゆっくりとケルベロスを伴ってこちらに向かってくるのが見えた。
「あ、もしや初期イベント的なの入りました?」
そのようだ。
多分、最初にはじめましてのクローズイベントに入ってから、先程のオープン空間に再び出ることになるんだろう。
女性が近づいてきて、それから私達の前で立ち止まるとニヤリと笑った。
「よっ! お前達が俺様の手伝いをしてくれる、同じ共存者ってやつか?」
超絶美人な金髪魔女っ子からそんな言葉が飛び出してきて、私は度肝を抜かれてしまい、とっさに「へぁ?」という言葉しか出てこなかった。
確かに勝気そうな見た目だなぁとは思っていたけれど、言葉遣いが予想外がすぎる。
キャラが……キャラが濃い。
「あっはっは! こんな言葉遣いで驚いたか? 俺様の名前はペチュニア。この言葉遣いは、尊敬するお師匠様の真似してたら染み付いて取れなくなっちまった黒歴史現在進行中の証だ! よろしくな!」
「なにこの人ぉ! さらっと自虐ネタしてくるんですけどぉ!?」
しかも、帽子についてるのは百合の花なのに、名前はまったく掠りもしないペチュニアだし!? どういうことなの……あと寒くないんですかその格好。
色々と言いたいことはあったが、全部口から出てくることはなかった。
「お名前は?」
「え、あ、ケイカです。よろしくお願いします?」
「よろしく!」
豪快に笑って手を差し出してきた彼女と握手をする。
そんな様子を、彼女側のケルベロスはものすごく微妙そうな顔で見ていたのだった。
初手俺様魔女っ子とかいう濃さ。
なお、もちろんあり鯖では殺害チャレンジされてたりします。
しかしあっちはあっちで、殺しても平然と殺されたことを認識しながらリスポーンするとかいう別格レベルのヤバいやつ扱いされ始めているとかなんとか……その辺もそのうち掲示板回にて。




