『夢幻回廊』のルール
ほう、とため息を吐く。
まさか運営メッセージに予告映像までついてくるとは思っていなかった。
いつもはログアウトするとベッドの上でサイトを巡ったりするが、今日はちゃんと椅子に座って、机に設置しているパソコンのほうから見た。
そうしてログアウトしてから見た予告映像は、その場でホログラム展開されて流された。特にアルターエゴの小さな赤いドラゴンが慌てて、しかしいつもよりふざけるような口調を抑えめにして伝えてくる言葉は、特に【緊急メッセージ】感があった。
実際に神獣郷という異世界から通信を入れられたような気持ちになる。いい演出だ。これほど気合いの入った予告をするくらいだから、イベント本番も期待できるだろう。
今からでもイベント内容と、その仕様、ルールについてしっかりと把握しておかないとね。
運営メッセージは神獣郷からのメッセージを兼ねてるから簡素な感じだけれど、中に公式サイトへのリンクがあったからそちらへ飛ぶ。
「くぅ?」
「アカツキ、気になるならお膝の上においで〜」
学習机と、その上にあるホログラム展開型のパソコン端末目当てで、いつもとは違い椅子に座っているので下からアカツキが声を上げた。
あいも変わらず、リアライズ計画のぬいぐるみはアカツキとしてこの場にある。最近ではいつも一緒だ。街中でもたまにリアライズ計画のぬいぐるみを連れている人を見かけるようにもなったし、そのうち本当に流行りとして騒ぎ立てられるかも……?
今でも十分流行ってはいるが、表立って大流行! 老若男女誰でも知ってるぞ!! って感じではないからね。
「200年くらい前は学習机で勉強してたらしいよ〜アカツキ〜。絶対パソコンか端末置き場にしたほうが使いやすいよね〜」
「くー?」
「分かんないよね〜。そりゃそうか」
学習机とかいう前時代的なものは、平成っぽいレトロな商品として密かに人気がある。和風建築の家だと特に合うからとかなんとかいって、三面鏡台みたいな令和レトロなものも備え付けられていたり……あれ、令和じゃなくて昭和だっけ? ま、いっか。歴史は習ってもその辺ややこしすぎて覚えづらいんだよね。
ともかく、私の家には、家柄もあってレトロな家具が結構あるということだ。
たまに友達とかに物珍しいからって見せて欲しいと頼まれたり、あとはご近所の小さい子にその時代のことを調べてるんですーって言われて写真を撮って見せてあげたり、そういうのはたまにあるね。
「えーっと、ダンジョン探索型のイベントで……何階層にも分かれている。階層ごとに連れていける聖獣を選ぶことが可能。あ、これは便利。嬉しいなあ」
階層をひとつ『突破』するごとに扉が出現し、その中に入ると次の階層に連れて行く聖獣達を選び直すことができるようだ。待機している子達からも連れていけるようだし、階層によって適正のありそうな子を選んで攻略してねって感じみたい。
こんな感じになってるということは周回前提なのか? それとも、初見の固定メンバーでは絶対にクリアできない仕様なのか? それはそれでどうなの? って感じだし、念のための措置なのかなぁ……それは行ってみないと分からないか。
階層の『数』は不明。
不明というか、運営側で伏せている感じかな。さっきの仕様といい、もしかしたら階層が100とかあって、疲れた聖獣と待機組を交代させながら進まないといけないのかも?
まあ、イベントの趣旨からして階層の数が判明していたらおかしいというのは分かる。
謎のダンジョン。街の住民を巻き込み、『火』を奪う謎のボス。ダンジョンの奥で『ナニカ』が『ダレカ』を待ち続けている。そのために火をこの世から奪い、凍りつかせ、人がやってくれば必ず一人は奪っていく。そして、それに対抗できるのは共存者のみ。
そんな状況下なら階層の数が伏せられているのは仕方ないことだろう。
むしろ階層ごとに連れていける聖獣を選択可能っていうのが破格な条件なのかもしれない。
なんか、公式サイトには、このパーティ変更は鳳凰さんと麒麟さんの管理AIコンビが頑張って『夢幻回廊』に干渉して組んだシステムらしいことが書いてあるし、いろんな神獣のサポートもありつつ完全に封じ込めておくことが不可能な状態だということだろう。
……本気でまずい状況下なんだな、これ。
あと気になるのは現地で待っているという共存者の女性だが……。
画像は載っているけど、詳細はなし……か。
まあ、楽しみは本番にとっておくほうがいいだろうし、どんなストーリーなのか考察しながら待っていることにしよう。
「さて、アカツキ。いったん今日は寝て……本番に備えましょうか」
「くう!」
イベント開始までもうすぐだ。
その間にヴィーヴィルのレベル上げもしておかないと。
やる気を胸に、私はその日は素直に就寝するのだった。
いつもご感想・評価など本当にありがとうございます!!
新規で読んでくれるかたもたくさん増えており、また最新話に報告くださることもあって非常に嬉しく思います!
どうかこれからもよろしくお願いいたします!
ここからの新章は謎解き要素ものざいますので、どうかお楽しみください!
今回イラストを用意してくださっているのは、友人の『ピギョの人』様です。いつもありがとう!!




