つまりピクニックですね?(※違う)
さて、リリィお嬢さんのお返事はいかに?
「ええ、構いませんわ。ケイカさんのところなら信用もできますし、品質もいいと確信できますから」
「……随分とあっさりですね。リリィさんは有名人ですし、そういうお誘いは山ほどあると思っていました。難航することも視野に入れていたのですが」
かなり判断が早かった。ということは、やはり好感度も関係していそうか?
誰でも打診できるとはいえ、好感度は隠しパラメーターかなにかで必ずあるだろうし。
「わたくし、一応自分のお店の商品に自信を持っていますの。ですから、生半可な品質のものでは実用できませんし、納得できないんですよ。食品……特に植物由来のものは育成する際に必ず聖獣の助けが入ります。特に聖獣と仲良しなあなただからこそ、信用できると思っているのです」
かなり好感触。というより高評価。うんうん、いいことをしていると巡り巡って自分のためになるよね。そういうものだ。ゲームである以上、ある程度親交を深めれば同じ会話になるのだとしても、努力が報われている感じがあってとてもいい。
こういう会話があるということは、つまり普段から交流のない人からのお誘いは全部断っているということだろう。私としては嬉しい話だ。リリィはミズチシナリオで有名だから、すでに誰かと連携しているものだと思っていた。この感じだといつも取引きしている先はNPCだけなのかもしれない。これだけで確信を持つことはできないが……。
「なら、私からはひとまず果物の提供を打診しますね。お野菜はまだまだやり始めたばかりなので、良い品質のものが安定してできるようになったらご連絡します。こちら、試供品ということで受け取ってください」
言いながら、あらかじめ用意していた果物各種を十個ずつカゴに入れたものを渡す。プレイヤー相手ではないので譲渡機能でなく手渡しだ。
「ありがとうございます。あら? うふふ、ちょうどアップルパイも作りたかったところでしたから、嬉しいですね」
提供品の中にリンゴももちろんある。そして品質は最高のSだ。さすがレキ。
うちの果樹園の果実は全て収穫すればランクSになる。安定して手に入れられるし、これを調理するとバフ効果も大きい。
このまま続けていたら、そのうち黄金のリンゴが成ったりするんじゃないか? と思うくらい、レキはよくやってくれている。
「……この子が育てているんですよね?」
「ええ、そうですよ」
リリィが興味深げにレキを見るので、肯定する。
すると彼女はどこか考えるようにしてから、私を見つめた。
「あの、お願いがひとつあるのですけれど、いいですか?」
「お話を聞いてから……ですね」
「ありがとうございます」
リリィはそう言うと、膝の上に跳び乗ったこっとんの背中を撫でながら話し始めた。
「その……わたくしも、もう一匹。ほしい聖獣がいまして……人間の栽培では手に入らない果物を栽培している種の子なのですが、えっと、ケイカさんがよければですよ? わたくし、スカウトしに行きたいので、それについてきてくれたらいいなって……」
「その聖獣のお名前は?」
「く、クワックベリーというアヒルさんで、同じ名前のベリーを生産してくださる聖獣さんなのです」
なるほど、なるほど。私のところで聖獣を増やすのはいったんやめておきたいが、これはリリィが直接スカウトしたいというお話だ。
つまりは、定番のあれだ。
護衛クエストって、やつですよね?
「お任せください。一緒にピクニックするみたいでいいじゃないですか」
「本当? 受けてくださるのですね! やったー!」
そうそう、私はこの笑顔が見たいんですよ。
無邪気に喜ぶリリィに、自然と笑みが漏れる。
自分の理性の部分が「見知らぬ場所で護衛クエストはめっちゃ難易度高いですよ」と囁いているが、それも聞こえないフリをして、まあなんとかなるでしょと楽観的に思い込む。
「ケイカさんがいてくれるなら安心ですね」と微笑むリリィの期待に全力で応えてあげたいから。
それから3日後に待ち合わせをして、取引の契約も済ませてから私は緋羽屋敷に帰宅するのであった。
私が守るからなんの問題もない。むしろ一緒にお出かけなんてピクニックでしかないよね。とさらっと自信満々に思っているエレヤンさん。




