ここの運営さんって、本当商売上手だよね
竜宮城でのイベントが終了し、ログアウトする人達や自分の聖獣達を抱きしめてわんわんと泣く人達を見ながら、私も竜宮城で借りていた部屋に戻った。
なお、とっくに配信は切ってあるのでここからはプライベートな時間だ。
部屋のベッドに飛び込んでセーブを行う。
ああ、しばらくはここに泊まり込んでいたいなあ……と、漠然と考えながら。
正直さっきの手紙で上の空になっているところなんだけど、やることはやってしまわないとね。イベント報酬の受け取りのためにも、いったんログアウトしないといけないのだが……まだいいか。
手紙は大事に大事に鍵をかけてなくさないようにボックスの中にしまった。いつでも取り出せる位置だ。ここに、きっとこれからたくさんの手紙が増えていくんだろう。とてもではないが、ホームの倉庫用ボックスに預けるなんてことはできそうにない。いくらボックス内を圧迫しようと手放せそうにないからだ。それくらい、私はこの子達に依存していると言っていい。
本格的にこの『世界』から抜け出せなくなってしまいそうだ……そういう人は結構いるんじゃないかな?
現に今、セーブをしたのだからログアウトすればいいのに、ログアウトする動作ひとつにすら躊躇いを覚えている。こちらの世界のほうがいいのではないかとか、そんな風に思っちゃってどうしようもない。
膝の上でまるまるジンを撫でながら困っていた。
現実でVR機器が軽めのバイタルチェックもしているのだから、そのうち強制ログアウトになるのは目に見えている。それまでは入り浸っていてもいいかな……とか。
そんな風に穏やかに考えていると、突然目の前に薔薇色の光の玉が現れた。
「そんなキミにいいお知らせー!」
聞き覚えのある声と一緒に薔薇色の光が弾け、その中からは運営マスコットの小さな赤い竜――アルター・ドライグ・ゴッホがポーズを取るようにくるりと回って現れる。
一瞬なにか運営に通報されるようなことをやらかしてしまったか? と心当たりを探して、それからさっきアルターの言った言葉を思い出す。
運営のアルターエゴ、アルター。運営からの言葉を代理してプレイヤーに届けることもまあ、あるだろう。
「いいお知らせとは?」
「えーっとね、インベントリにチラシ突っ込んだり運営メールでお知らせするだけじゃあ、みんな読まないでしょ? だからオレが直接持ってきたんだよー! あ、あとケイカさん宛の大事なお知らせメールも兼ねてるよ!」
確かに、ただの広告やメールは読まない可能性が高い。読んだとしても、さらっと流し見るだけで終わりそうだ。
「というわけで、まず最初にこっちね。イベントも重なったけど、キミが応募していた『新モーションコンテスト』の受賞のお知らせ! おめでとう! さすがの人気だったよー!」
「へ……」
そういえば、登録するだけしてコンテストの経過観察とか一切してなかったね!?
確か……登録したのは大上段からのかかと落としをする『神前舞踊・青嵐』だったはず。審査には運営審査と人気投票制両方があったはずだけれども……受賞したということは、両方パスすることができたということだ。
人気投票に関しては、配信者としてそれなりに人気を取っているから心配していなかったけれども、それでもやっぱり受賞は嬉しい!
「ということはつまり……」
「モーションの精査はログを見てこっちでやってるから、あとはもう一度『このモーションでいいですか?』ってお話をメールでするよ! 今回は受賞のお知らせと、お名前を公表していいですか? って確認が主だね。プレイヤー名を出して受賞の発表をするけど、それでも大丈夫かな?」
「もちろんです!」
「それじゃあ、この用紙をよく見てサインをちょうだーい!」
「サイン……」
契約書みたいなものなのかな……?
「心配なようならこの書類をアイテム化して渡すから、内容をよく読んで納得してからサインをしてね?」
私の不安を感じ取ったのか、アルターが契約書類を手渡ししてくれる。今すぐ、この場で決めなくてもいいというのは、ある程度の安心感を抱かせるのに十分な言葉だった。
「ただ、注意点がいくつか。これを持っている間は配信ができないし、スクショしても映らないようになっているよ! つまり、正式な発表までは情報をうっかり漏らさないようにしてねってこと! サインをしたら自動的にメールになって運営に送られるから、新たにメールとかはしなくて大丈夫! 分かったかな?」
「分かりました。なにからなにまでありがとうございます!」
「うんうん。それからこれから言うのは、全体に伝える『いい』お知らせだよー」
アルターがもったいぶってそこで止めるので、思わずジンを撫でる手が止まる。そしてジンが不満げに頭をぐりぐり押しつけてきたので撫でるのを再開すると、アルターはにこにこしながらとんでもないことを言い始めた。
「次回の大型アップデートに合わせて、新たなサーバーが開設されるよ! まあその話はホームページを見てもらうとして……今回、海イベントのハッピーエンドクリアをして、我ガ心ハ友ト在リシステム適合成功者には、もれなく『神獣郷リアライズ計画』の正式な商品の第一陣を一台、必ずプレゼントすることになったんだよ! それも、ちゃーんとオーダーメイドでカスタマイズしてね!」
神獣郷リアライズ計画。
知っている。私はその名前を知っている。
それは初期聖獣のぬいぐるみにホログラム機器を埋め込み、神獣郷オンラインのパートナー達のAI情報をコピーしたチップを使用することで、現実に神獣郷のパートナー達が実在するかのように召喚することができるという夢のような『グッズ』だ。
それを第一陣で手に入れることができるうえに、オーダーメイドカスタマイズまでできる?
しかも必ず一台はプレゼントってつまり……。
「うっそでしょ……」
「本当だよ! あ、でも複数台欲しい場合はしっかり応募して代金も払ってもらうけどね? みんながいっぱい課金してくれてるからこそできる暴挙だよねー!」
運営……やってくれるなあ。
「これで、この世界からログアウトしたくないなんて言えなくなるでしょ?」
「うわぁ、そこまでお見通しですか。末恐ろしいですね」
ブレイブハートシステム実装と共に仮想現実から外に出たくない人達が現れることを想定して、その原因たるパートナー達を現実に連れ込める! という商品を正式に発表。
そうすれば、このゲームにのめり込んでいる人なら必ずお財布の紐が緩くなるというものだ。
現に私だって、ひとつだけじゃ足りないからと銀行に預けてある今までのお年玉分のお金を切り崩すつもりでいる。それに、そろそろ配信が収益化するのでアルバイトを無理にしなくてもお金を稼ぐことはまあまあできるだろう。
何十万としても絶対にこの子達全員分の機器を買いたい。
そうやって心が動いているのだから、完全に運営さんの手のひらの上で転がされている状態だ。
しかし、それでもいい。現実でもこの子達に会えるなら、私頑張れる!
イベント限定の食材と料理で広告を入れてきたりすることといい、ここの運営さんって本当に商売上手だよね! 悔しい! でも貢いじゃう!!
「ゲームの中だけじゃなく、リアルでも金欠確定ですね」
その言葉に高笑いするアルターのほっぺたをぎゅうぎゅう引っ張りながら、私は肩の上で呆れた顔をするアカツキに頬を寄せるのだった。
ということで新章ではリアルでもアカツキ達がいる!という状況になりますし、新たなサーバー開設に伴って色々とやりたいことをやります!
こんな運営だったら喜んで貢ぎますね間違いない。
電子的な問題は未来だからとりあえず割高だけどなんとかなる! という認識でどうぞ。
この運営のことですから、そのうちアニメも作りそう。
第一シーズンは「神獣郷オンライン!〜はじまりの伝説」とか言う名前でPVで語られている、太陽の神獣を説得したはじめの共存者のお話。
第二シーズンでは「神獣郷リアライズ!〜日常を取り戻せ!〜」で、
ゲームの世界から抜け出した魔王軍が現実世界に侵攻!? ブレイブハートシステム適合率120%を記録した五人の共存者の聖獣達も本当にリアライズした!? ゲームだと思われている裏側で本物の魔獣達と聖獣達の物語が今始まる……!
みたいなのが製作されそう(小並感)
意外にもお金が全部溶けることはありませんでしたが、リアルでも散財確定路線です。どうもありがとうございました!!!




