5.幼少期④
「ウェンディももう6歳か。時が経つのは早いものだな」
「ふふふ、そうですねぇ」
そんな会話をしながら歩いている両親の後ろを、姉に手を引かれて付いていく。
今日は私の6歳の誕生日で、兼ねてから予定されていた『女神の査定』と言う儀式が教会で行われる。
この世界の人は、6歳になると皆その儀式を受ける義務があるそうだ。
その儀式を受ける事で、その個人が進むべき道であったり、潜在能力であったりを女神様のお告げの様な物で導いてくれるとの事だ。
簡単に言うと、その子供の持っている潜在能力、潜在魔力量と先天的な能力等を見る事が出来るらしい。
それ等を踏まえて、将来就く事の出来る『職業』が解るという事だ。
稀に生まれ持った能力等の先天的な力がある子供は、6歳という若さで『職業』を持つ事が出来るそうで、例を挙げるとするならば、『勇者』や『聖女』等だ。
若くして得た『職業』は、他の人よりも早く職業の能力が熟練すると言った恩恵もあるらしいので、私もそれに肖り、英雄の階段を一段登らせてほしい所だが、そればっかりはどうなるか文字通り、神、女神のみぞ知ると言う所だろう。
因みに、何も『勇者』や『聖女』等と言ったレアな職業だけが例外という訳では無く、例えば、潜在魔力量が極端に多い子供が居れば、『魔術師』系統の職に若くして就く事も可能だし、剣の才能があれば『剣士』程度ならば既に就いている子供も多少なりとは居るそうだ。
まぁ何も戦闘職だけが進むべき道である筈も無く、『商人』や『鍛冶師』等の職業も勿論存在するので、若くして『見習い商人』や『見習い鍛冶師』に就いている子供は大勢居る。
唯、戦闘職についてはやはり敷居が高いので数が少ない。
更に因みにだが、私の姉であるヴィアリス・ジルベルトも既に職業持ちである。
教えてもらった所、こんな感じだ。
名称:ヴィアリス・ジルベルト
種族:人族
職業:魔導剣士
魔力量:B
称号:火の加護 隠匿の加護
二つの加護持ちは結構な珍しさらしい。レア度としては、恩恵、加護、寵愛と上がっていく。
しかも剣と魔法両方に才能があるらしく、最初から魔導剣士に就いたという事だ。
次に魔力量についてだが、Fから始まり、上限はSSまで。
F、Eの一般的から、D、Cで少し才能があり、Bは大成の器で、Aとなると天才レベルで勇者や聖女クラスだ。
これがS以上になると話は変わってくる。潜在的に秘めた魔力だけで到達する事は不可能な魔力量であり、これは最早伝説に片足突っ込んだ領域まで鍛え上げた英雄が『保有』する魔力量という話だ。
SSクラスとなってくると、それは魔王や神竜、それこそ英雄譚で謳われるような勇者、英雄の到達点。
人の身でSSクラス……、憧れる……。
因みに、このステータスは辺境の村やこの街の様に王都から離れた街にある教会や神殿で見る事の出来る最低限のモノであるらしく、都会の冒険者ギルドや教会等ではもっと詳しく見る事が出来るらしい。
まぁ今は見る事が出来ないので諦めるほかない。
閑話休題。
さて、教会へと辿り着いた私と姉と両親は、私の同期である子供達の列に並び、その時を待つ。
私より両親と姉のほうがソワソワと落ち着きが無いのは少し恥ずかしい……。
「あぁ……いよいよ次だ……。
い、いいか、ウェンディ、し、深呼吸だぞ!お、落ち着いていけ!」
「だ、大丈夫よ。お母さんがついてるわっ。
お姉ちゃんもお兄ちゃんもちゃんと出来たんだから、ウェンディも大丈夫、大丈夫よ……」
「ウェンディ、姉様が手を握っていてあげようか?トイレは大丈夫?
おんぶする?ちゅーする?」
「私は大丈夫だから3人とも落ち着いて……」
あと姉、この場でおんぶとちゅーはする意味が解らない。
そんなソワソワと落ち着きのない3人を宥めつつ、いよいよ私の番だ。
教会に備え付けられた透明の水晶玉の様な物の前へと歩みを進めて、その目の前で立ち止まる。
未だ頑張れとエールを送ってくる3人は放って置いて、私は数度深呼吸をした後、両手を水晶玉へと翳す。
すると、淡い光が水晶玉から漏れ、文字の羅列がその中へと移り込んだ。
名称:ウェンディ・ジルベルト
種族:人族
魔力量:A
称号:風の寵愛 風竜の寵愛
ここまで出た所で、水晶を覗いていた教会のシスターと神父と思しき男性の感慨の息が漏れた。
私としては少しホッと胸を撫で下す思いだ。
英雄を目指す為にもここで躓くのは勘弁してほしかった。取り合えず、良かった。そんな感想を抱く。
しかし、寵愛の二つ持ちは結構珍しいのでは?とそんな感想を抱いたのも束の間、先に映った文字の羅列は一瞬で消える様に新たな文字の羅列で塗りつぶされていく。
どうやら私が今後就ける可能性のある職業の一覧と、今現在就く事の出来る職業の一覧が表示されたらしい。
それを見た教会関係者と私の後ろの身内の3人が何やら慌てふためいている様だが、取り合えず現在就く事の出来る職業の確認に勤しむ事にする。
この選択は後々の英雄人生を左右するかもしれないので慎重に選びたい。
まず、能力を上げていけば恐らく就けるんじゃない?というニュアンスの、今後就ける可能性のある職業一覧は取り合えず飛ばして置くとして、現在就く事の出来る職業を上から順に見ていく事にする。
どうやら私に剣の才能は無いらしい。
剣の文字が一つも見当たらない。
一般的な物から、拳士、風魔導士から始まり、魔導拳士等も選ぶ事が出来る様だ。
レアな所で『風読み』と呼ばれる索敵能力に秀でた職業や、『風水師』という職業等も見える。
しかしどれもピンと来ない。
英雄っぽくないというか……。先の派生を見越して、拳士や魔導士系統、それこそ魔導拳士等は候補には入るが……。
うーむ、と唸っていた所で、就く事の出来る職業の最後の一つが目に入った。
「ん?これは……、『風竜の巫女』?」
その呟きに反応したのは、神父と思しき男性だ。
「それは……、君は何故か風竜様の寵愛を受けているようだからその職業が出たんだと思うけど……。
就いた事のある人は……、ひょっとしたら居ないかも知れない程珍しいモノだね……」
「ふむ……」
他に居ないかもしれない程珍しいという言葉に、私は非常にそそられる。
英雄としての階段の一歩かもしれない。
よし、これにしよう。私はそう考えて即決する。
そう心の中で決め、水晶に両手をもう一度翳すと、頭の中で言葉が流れる。
(職業が『風竜の巫女』に設定されました)
そして、その言葉が終わると同時に、私の掌には竜を模った緑の文様の光が一瞬浮かび、消える。
こうして私は『風竜の巫女』というレア職業に就いたのだった。
しかし、風竜の寵愛とは、自分が大好きな奴みたいでちょっと恥ずかしい。
それとも、先の神父の言葉にあった風竜様という発言から思うに、私とは別の風竜でも神格化されているのだろうか……。
そんな事を思いつつ、私の事で我が事のように喜んでいる身内三人と共に帰路へとつくのだった。




