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4.幼少期③

「それで、どういう状況なの?」

「説明、させていただきます……」


 あれからレッドウルフの死体を取り合えず埋めた後、死体が埋まったその場で話をするのも何だかアレなので、少し場所を移して二人で木陰に腰かけて話をする事になった。


 まず、私と魔王軍幹部の3人が揃って転生を実行した日まで遡る。

 私はあの時100年後の未来へ人として転生すると言葉にした。その言葉を聞いたアグニスはほんの少し、5年程私より先に生まれる様に調整を行った。

 少し誤差が出て3年先に生まれる事になった様だが、それはさて置き、そしてもう一つ、私の近親者へと生まれる様にも調整を行ったらしい。

 魂の情報を少し私に寄せて、繋げたそうだ。前世で私の鱗を欲しがっていた事があったので、少し与えた事があるがどうやらそれを利用したらしい。

 そして何故近親者になったかと言うと、人に転生したばかりで弱くなっているであろう私を守る為と最初から近くに居たかったからという理由からと答えが返ってきた。


「話は大体解ったけど、何で教えてくれなかったの?」

「それは、その……。魔王様が……」

「私が……?」

「確かに、生まれた直ぐに貴女が魔王様だという事は解りました。

 私も直ぐに名乗り出ようと思ったのです……」

「うん、それで?」

「ですが……、魔王様が、妹として生まれて来たウェンディが可愛すぎたのですっ!

 私は不敬にも魔王様の、ウェンディの姉として生きたいと、この子を守りたいと……、思ってしまって、そのまま、名乗り出るのが遅れ、ズルズルと……。そして、現在に至ります……」

「な、なるほど?」

「私がアグニスであると告げてしまうと、その、姉としての関係が無くなってしまう様な気がして……」

「ふむ……」


 配下に戻りたくなかったと、家族として生きたくなったと言う事か、と私は理解する。

 ふむ。別にいいんじゃないかな?という感想が浮かんでくる。

 そもそも転生した時点で別に配下としてまた私に仕える必要性は無いのではないだろうか。

 私を慕って転生までして付いて来てくれたというのに、少し白状かもしれないが……。


「うん、アグニス、いや、姉様」

「はい」

「じゃぁ、今まで通り私の姉として第二の人生を好きに生きてよ。

 私も今まで通り姉妹、家族として付き合うからさ。

 折角転生までしたんだし、好きに生きなきゃ勿体ないでしょ?」

「え……?よろしいの、でしょうか?」

「うん。勿論。それに配下っていう関係よりもそっちの方が楽しそうじゃない!

 私は英雄になるんだし、部下よりも仲間とか友達とかのほうがいい。

 それこそ姉妹で英雄なんで、吟遊詩人(バード)の恰好の題材じゃないかっ」


 そうだ。姉妹で英雄なんて楽しそうだ。


「という訳で、これからもよろしく。姉様」

「は、はい!勿論です!ウェンディ!」


 こうして話も纏まり、一人目の魔王軍幹部と合流を果たした。

 後二人も無理に私の配下としてではなく、好きな人生を送ってもらった方がいい気がして来た。

 まぁどうするにしても一度は会っておかなければ、ずっと私を探してしまうかもしれない。

 何か合言葉や暗号でも転生する前に仕込んでおけば良かったなぁと、今になって後悔するのだった。



 それから暫くの月日が流れた。

 今日の特訓を終えて家へと帰宅した私は部屋で本を読んでいる。

 何故か姉の膝の上で。


 あれから箍が外れた様に、姉の私への密着度が上がった気がするが、まぁいいかと好きにさせている。

 姉として好きにしていいと言ったので今更前言撤回するのも気が引ける。


 上機嫌で私の頭を撫でている姉は取り合えず放置して、父の書斎から取って来た絵本を読む。

 私が前世で読んだことの無い英雄譚だ。

 やはり英雄譚は心が躍るな。

 しかし、子供向けの絵本というだけあって話が少し短かった。

 暇つぶしになるかと思ったのだが、ものの10分程でもうクライマックスに差し掛かっていた。


 目で文章を追い、とある一文でふと目を止める。


 勇者は聖女と口づけを交わし……。


 という件の部分。

 他の英雄譚でも時折出てくるこの件はやはり重要な箇所なのだろう。

 口づけというのがイマイチ良く解らない。竜だった頃や魔王だった頃は私には関係のない部分だとして特に気にもしなかったのだが、私は今人に転生し、英雄になろうとしている。

 これはやはり知っておくべき事なのだろうか?


 私よりは恐らく人という物を知っているだろう姉に聞いてみる事にしよう。


「姉様、少し聞きたい事が」

「うん?なあに?」

「この部分の文章が良く解らないんだけど」

「うん?」

「ここ。口付けという所。口付けとは一体どういう物なの?

 英雄に必要な教養なのかな?」


 私の言葉を聞き、姉は後ろから本を覗き込んで文章を読み、暫し考えた後口を開いた。


「口付けと言うのはですね、親しい間柄の者同士や、家族のっ!親愛のっ!表現としてする事もありますね。方法としては、自分の唇を相手の体の一部へ付けるという説明になるのでしょうか」

「ふーん。成程……」


 良く解らないが大体は解ったと思う。

 なぜか家族とか親愛とかを強調していたのが少し気になるが、気のせいか?


「そ、そう言えば、ウェンディが竜だった頃や魔王様であった頃は、そう言う御経験は……?」

「んん?いや、無いな……」

「同族等とその、致したり……」

「同族?同族というと他の竜か……。いや、出会ったら戦闘になった覚えはあるけど……」

「な、なるほど……」

「しかし、口を他人にねぇ……。あ、そう言えばまだ幼子の自分に両親が口を付けていた事があった気がする。あれの事か」

「えっ!ズルイ!」

「ず、ずるい?」


 一体何がずるいと言うのか。


「両親が良いのなら、姉である私も、してもいいという事ですよねっ!?」

「え?ん?いいのか?」

「ええ!いいんです!」

「ふむ。まぁ、家族同士でもする事があるというのならそう言うモノなのかな。いいんじゃない?」

「よっしゃぁ!では失礼して……」

「……ん?今?」

「もちろん!」


 そう告げた姉は膝の上に座っていた私を少し持ち上げて自分の方を向かせる。

 膝の上に座って向き合うって少し安定が悪い。

 そう感じたのが早いか遅いか、ガシッと背中に腕を回されたかと思うと、段々と姉の顔が近づき、私の唇は姉の唇で塞がれた。


「んむっ!?」

「はむっ……、ちゅっ……」

「んんっ……」


 息がし難い。これが口づけと言うモノか。

 良く解らないがフワフワする。熱でも出て来たかのように顔が熱くなって来た。

 そもそも両親にされた口づけは頬や額だった記憶があるのだが、これは口づけなのか?

 もう……、無理……。


「ぷはっ……、も、もういいっ!終わりっ!」

「んんっ……、えぇ……、もうちょっと……」

「い、いやっ、もういいっ。そもそもこれは両親にされたのとちょっと違う!

 謀ったの!?」

「いえいえ、そんなまさか。あ、でもこの口づけは私以外としては行けませんよ」

「んん?良く解らないぞ。家族ならいいと言ったり、姉様としかしてはいけないと言ったり……」

「何れ解る時が来るのですっ!

 と、に、か、く!この口付けは、私としかしては行けませんよ!解りましたねっ!?」

「えぇ……?あ、あぁ……わ、わかった」


 良く解らん……。しかし有無を言わせない雰囲気に押されて頷いてしまった。

 まぁこんな事、何処かの知らない奴としろと言われてもごめんだ。


 頷いた私を見てやけに上機嫌な姉を見つつ、小さく溜息を漏らす私であった……。






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