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飼い猫が超絶イケメンで困っています!  作者: 酔い氏


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2/19

( ΦωΦ )#2 慣れは遠い

ルナが人間になってから、1週間。


美琴はようやくこの生活に慣れてきて……いる訳がなかった。

「みこと」

「なに」

「膝」

「は?」

ソファに座っていた美琴の前で、ルナが当然みたいな顔をする。

「猫の時いつもしてた」

「今サイズ感違うの分かる!?」

でもルナは気にしない。

そのままごろん、と頭を膝に乗せた。

重い。

でかい。

が、顔が良すぎる。

心臓に悪い。

「……狭い」

「ルナが大きいんでしょ!?」

「んー」

適当な返事をしながら、ルナは美琴の腰に腕を回した。

「ちょ、離れて」

「や」

「最近そればっか!」

「だって落ち着く」

昔のルナもこうだった。

嫌なことがあると、美琴の腕にずっとくっついていた。

だから強く押し返せない。

ルナは満足そうに目を閉じる。

さらさらの黒髪が膝に広がって、美琴は困ったようにため息をついた。

「……ほんと猫みたい」

「猫だし」

「今は人間!」

ルナは最近どう言えば、どうすれば美琴が困るか、などを覚え始めていた。

しかも本人は無自覚で距離が近いからタチが悪い。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ある日の夜。

美琴が勉強していると、背後から腕が伸びてきた。

「……また?」

「暇」

ルナが後ろから抱きついてくる。

顎を肩に乗せ、教科書を覗き込む。

「難しい顔してる」

「テスト近いの」

「ふーん」

返事しながら、ルナは美琴の髪を梳くって遊んでいた。

「……いい匂い」

「やめて、くすぐったい」

「やだ」

最近のルナは、やたら触ってくる。

猫時代は肉球だったから耐えられた。

でも今は体温も声も全部男で、美琴の心臓がもたない。

「ルナ、近い」

「近くない」

「近い!」

振り返った瞬間。

顔がすぐそこにあった。

青い目がじっと美琴を見る。

ルナは少し首を傾げた。

「みこと、赤い」

「誰のせいだと……」

言い切る前に、額がこつんと当たる。

猫の頃、甘えたい時によくしてた仕草。

懐かしくて、美琴は少しだけ力が抜けた。

その隙を狙ったみたいに、ルナが笑う。

「やっと逃げなくなった」

「……逃げたくないわけではない。」

「前は触るとすぐどっか行ってたし…」

「だって急に抱きついてくるじゃん!」

「嫌だった?」


その声だけ、少し静かだった。

ルナは時々こういう顔をする。

昔から、美琴はその顔に弱い。

今から捨てられるみたいな、不安そうな目に。

「うっ……嫌じゃない」

「ん」

「慣れてないだけ。」

するとルナは、ふっと目を細めた。

嬉しい時の顔。

猫の時となんら変わらない。

次の瞬間、美琴の肩へ顔を埋める。


「ならもっと慣れて」

「は?」

「いっぱい触るから」

「待って待って待って」

「無理」

ルナは即答した。

そのくせ抱きしめる腕は優しい。

逃げられないようにしてるのに、怖がらせないよう、力加減だけは完璧で…

美琴は顔を熱くしながら思う。

……このイケメン、絶対わざと覚えてる、と。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ルナは、人間になっても寝る場所だけは絶対変えなかった。


つまり


美琴の布団の中だ。

「狭い!!」

夜十一時。

ベッドの中で、美琴は半分本気で叫んだ。近所迷惑になることも考えずに。

ルナは当然みたいな顔で隣に潜り込んでいる。

「前から一緒に寝てた」

「猫サイズだったでしょ!」

「今もそんな変わんない」

「変わるわ!!」

身長差は、ほぼ三十センチ。

もちろん美琴が三十センチ下だ。

変わっていないと言うには無理がある。

どう考えても圧迫感が違う。

なのにルナは全く気にしていなかった。

むしろ満足そうに、美琴の肩へ額を擦り寄せる。


「……落ち着く」

「私は落ち着かないんだけど」

「なんで」

本気で分かってない顔だった。

猫の時と同じ感覚なのだ。

寒いからくっつく。好きだからそばにいる。それだけ。

でも今は、見た目が完全に男。

しかも無駄にイケメン。

心臓に悪い。

「ルナ、近いって」

「いつもこれくらいだった」

「肉球と腕は違うの!」

ルナは少し考え込む顔をしたあと、美琴の腰へ腕を回した。

「じゃあこれで」

「悪化してる!!」

抱き枕みたいに固定された。

びくともしない。


猫の頃から力強かったとは思っていたけど、人間になってから本当に強い。抵抗できない。

「離して」

「や」

「……」

「みことあったかい」

低い声が耳元で落ちる。

男慣れしていない美琴にとっては致命傷になりかねないほど、綺麗な声。

しかし、眠そうである。

美琴が抵抗している間に、ルナはどんどん脱力していく。

数分後には完全にうとうとしていた。

「……ねえ」

「ん……」

「そのまま寝ないでよ」

「みこといるから安心する」

そう呟いて、ルナは胸元へ顔を埋める。

立派な男の人の体格のくせに、甘え方は昔のままで、感覚がバグりそうになるのを必死に抑えつつ、美琴はじわじわ熱くなる顔を隠すように天井を見る。


美琴の胸に顔を埋めていたルナが薄く目を開けた。

「……どきどきしてる」

「っ!」

「聞こえる」

「近いからでしょ!」

ルナはほわっと笑う。

「かわいい」

「……うるさい」

「みこと」

「なに」

「撫でて」

完全に猫だった。

美琴はため息をつきながら、仕方なく黒髪を撫でる。

するとルナは気持ちよさそうに目を細める。

しっぽはないが、あったら犬のようにブンブン振り回していただろう。……猫だが。

「……ルナほんと変わんないね」

「みこと好きなのはずっと同じ」

さらっと言われて、美琴の手が止まる。

ルナは半分寝たまま続けた。

「猫の時から、ずっと」

静かな声。

誤魔化しもない言葉。

美琴は何も返せなくなる。

その沈黙の中で、ルナだけが安心したみたいに目を閉じた。


そして数秒後。

「……みこと」

「ん」

「おやすみのキスちょーだい」

「調子乗るな」

額をぺちっと叩く。

でもルナは嬉しそうに笑って、そのまままた抱きついてきた。

結局その夜も、美琴は狭い布団の端で丸くなって寝る羽目になった。

この度は手に取ってくださり、ありがとうございます。

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