( ΦωΦ )♡#15 むかしむかし
ルナの過去編です。
むかしむかし。
俺がまだ、とても小さな子猫だった頃の話。
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その頃の記憶は曖昧だ。
ーーー
みんなのにおい。あたたかい。
俺には母さん、兄さん、姉さんが2匹。
きょうだいの中で俺がいちばん小さくて、なにもできなかった。
母さんは、小さくてちゃんとごはんを飲めない俺のばしょを作ってくれた。
兄さんは、大きくて、よく俺を守るようにとなりでねていた。
姉さんたちは、毛づくろいがうまくて、よく俺をなめて遊んでいた。
みんないっしょだった。
せまくても、くらくても、さむくても、母さんのお腹にくっついてねる時間がだい好きだった。
しあわせ…“だった”
ある日、母さんのにおいがおかしくなった。
人間のにおいがいっばいになった。
こわい声。大きな音。
俺はなにもわからなかった。
ただこわくて、母さんもふるえていたことが、いちばんこわかった。
母さんはみんなをぎゅってして、ねていた。
お月さまがまん丸になった夜。
母さんは俺たちをつれて外へ出た。
さむかった。
すごくさむかった。
まだ小さかった俺は何回もころんで、それでも母さんは俺を立たせて、どこに行くかもわからず、あるいていた。
兄さんが待ってくれた。
姉さんが鳴いて呼んでくれた。
姉さんが後ろからおしてくれた。
母さんはすごくいそいでいて、なんだかこわかった。
ただただ雨の中を走った。
冷たかった。
母さんは、どのくらい歩いたかわからないくらいとおくの、ボロボロのダンボールの前で止まった。
俺はホッとした。
やっと休めると思った。
でも、
母さんはみんなを小さくてくらいところへ入れた。
兄さん。姉さん。姉さん。
そして俺。
母さんのはなが、おでこにふれた。
あったかかった。
だから俺はなんだかうれしくて、ないた。
「みゃ」
母さんも短く、小さくこたえてくれた。
「にゃぁ」
そして母さんはどこかへ行ってしまった。
俺たちはずっとまった。
さむくて、おなかがすいて、ねむかったけど、まった。
母さんならぜったい帰ってくるって思った。
だって母さんだから。
俺たちをむかえに来て、なめて、ごはんをくれると思った。
でも、来なかった。
つめたい雨だけが俺たちにふりかかって、さむかった。ふるえた。おなかもすいた。
そして、こわかった。
俺はないた。
それにつられるように、兄さんも、姉さんも、ないた。
それでも母さんは来なかった。
夜になってもっとさむくなってからは、ダンボールの中で俺たちはぎゅってして、あたたかくした。
兄さんが俺をかかえこんで、姉さんたちがくっつく。
ちょっとだけだけど、あたたかくなった。
翌日。
雨は止まなかった。
俺はもう、泣く力もなくなってねころんでいた。
いつもうるさい兄さんはしずかで、いつもふざけ合っている姉さんたちはふるえていた。
俺もつかれた。なにより、ねむかった。きのうもあんなに寝たのに。
ねたら楽になれる。
なぜか俺はそう思って、目をとじた。
ゆっくりと意識がおちていく。そんな時に、音がした。
「〜〜ねこ〜!〜たす〜〜〜る!」
人間の声というのだろうか。何を言っているか分からない。
知らないにおい。
近づいてくる足の音。
俺たちの入っているはこが、ぐらっとして、光が入ってきた。
俺はしかたなく目を開けた。
そこには、まだ人間にしては小さい女の子がいた。
ーーー
その子が傘を持って、泣きそうな表情で見つめていたのを、今でも覚えている。
俺たちを見て、その子は本当に泣き出しそうになっていた。
「え…?うそ……」
優しい声が震えていた。
その時のことはよく覚えている。
俺が初めて安心できたから。
この人は怖くない。と、どうしてかそう思った。
その子…みこと迷わずスマホを取り出し、どこかへ電話した。
そして、そっとダンボールに傘をさしてくれた。
みこと自身が濡れてしまうことも厭わずに。
そのあとは病院で、
ミルク、毛布、たくさんの人、色々あった。
小さかった俺には難しくて、そこら辺はあまり覚えていない。
でも一つだけ、はっきり覚えているのは、美琴が毎日来て、撫でてくれた。
俺にはその時まだ名前がなかったから、名前を付けて、呼んでくれた。
「ルナ!」
その名前が好きだった。
呼ばれるたび嬉しかった。
その時からだと思う。俺は美琴が好きになったのは。
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ルナが後になって知ることだが、
ルナの兄と姉たちは、三匹とも生きていた。
別々の人に引き取られて、元気に育ったらしい。
親猫は残念ながらどこにいるか分からない。
ただ1つわかることといえば、ルナの記憶に残る母猫は、白く美しい毛並みを持った猫だったということくらいだ。
それはまた別のお話。
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