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異世界の勇者は何を見る  作者: 小淵執悲
第2章 学園編
45/50

5話

あークソ、手も足も出ないってのはこの事か



『身体強化のレベルが尋常じゃなかったな、魔力の扱いからして別次元のそれじゃ』



分かってたさ、あれには勝てないって事くらい


しかも英雄を魔法戦で圧倒してたからな、隙が無すぎだ


「あら、おはよう」


次の決闘に向けて治療室から出ると丁度戻ってきたデイジリーとはち会う


「……デイジリーか、化け物かよあんた」


英雄相手では英雄の土俵で叩き潰しやがった。

それだけじゃなく、俺相手では俺の土俵で…万能かよコイツ


「まだまだね、あなたも英雄も。あなたはもう少し身体強化の錬度を上げることにすれば?あなたの技術があっても世界クラスの相手じゃ何も出来ずに殺されるわよ」


「ご忠告痛み入るよ」



『じゃがデイジリー嬢の言う事もある意味的を得ているじゃろ?……今回デイジリー嬢の攻撃に対し完全に対応できたのは初激だけ、その後ギアを上げた彼女に手も足も出ずに防戦一方……身体強化だけでもワンランク上に行かないと相手にすらならんぞ?』



分かってる、痛感したよ


「あなたの技術と適正属性は身体強化ありき、今のままじゃ魔物もB級が限度……Aにすら届かないわよ?」


「………分かってるよ」


次は俺と先輩か……英雄は負けた、油断できねえな



『本気で行くかの、なめていい相手じゃないじゃろ』



おうよ




……





『では、初めてください』


闘技場内で対峙するとアナウンスが流れる


「さて、英雄の分まで勝たないとね…さっきは一瞬で負けたからデータ取れてないだろうし」


「あなたのデータなど関係ありません……潰します」


こえーこえー、魔物程じゃねえけど面白い闘気だな



『のんきに考えとる場合か、詠唱が始まっとるぞ』



あいよ


「身体強化……「刀創造グラデュース」」


日本刀を一太刀、左手に造り上げる


「フー、行くか」


「……「立ち上る氷の柱(ライジングアイス)」!!」


先に先輩が魔法を発動、瞬間俺の足元から氷が飛び出し上に押し上げられる


攻撃ならもっと鋭いはずだがそこまででもなく難なく上に乗れ、威力も不足気味の柱が立ち上る


「ちっ、上空にはじくのが目的か……」


空中じゃあ流石に足場が無い。この状況は予想していたから空中に足場を作り移動する手段を模索中だった事が悔やまれる。まさかこんな早く必要となる瞬間が来るとは思っていなかった


「その状態なら、流石にあなたでもただの的でしょ?「アイスランス」!「アイスソード」!!」


バランスを崩しつつも何とか飛来する数十の氷の槍と剣を叩き落とす。昔片足を木に吊るされて五人くらいからの木刀による攻撃をいなす訓練で何度も青痣を作ったことを思い出す


「詠唱破棄の速さ重視のおかげで下級レベル、助かった」



『完全に落下しとるがの!早く対処せい、次の詠唱が始まっておるぞ!』


わーってる、落ち着け


頭から落下しながら魔力を手足に集中させ、更に目にも魔力を集中させる。事件のあと唯一デイジリーが教えてくれた「魔力視」、上級者は皆使っているらしいがなかなかこれが難しい



『主、詠唱が終わる……来るぞ!』



そびえ立つ氷の塔を駆け下り、蹴り飛ばし転がりながら地面に着地する。態勢を整えるとほぼ同時に魔力が収束するのが見え、目の前が白く輝く


「喰らいなさい!「アイスバニッシュ」!!」


飛んでくるのは氷の礫?詠唱してる割には大した事無い……


「よっ!!」


氷の礫をいくつか弾き飛ばし、避けれるものは避けると、いなす程度にしか触れていない礫が弾ける(・・・)


「弾けろ、「ゴッドブリザード」!」


とたん氷の礫が弾けて吹雪に変貌し、視界が完全に奪われる


やられた、わざわざ詠唱をしていたんだ、何かあって当たり前だろうに…



『主、後悔してる場合じゃない!前に突っ込むのじゃ!!』



前!?


後ろや左右でなく前なことに疑問を覚えながら身体強化を両腕両脚にかけ、腕を顔の前にクロスさせて前に突っ込む。吹雪に混じる礫の破片が体中に突き刺さってダメージの代わりに魔力がガリガリ削られる


「抜けたっ!」


抜けてから後ろを確認すると先ほどの吹雪は左右に広く広がっていていち早く抜けるには前しかなかった事が分かる。その事についてクロに感謝しようと考えていると目の前で魔力の収束が起こる


「待ってましたよ、「氷虎ひょうこ」」


目に映るのは大口を開けた氷の虎…


「やられた…」


思わずそんな言葉を漏らしてしまうほど完璧に踊らされた



『ここまでは完全に敗北なのじゃ……』



side out



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



side アリソン


釣れた!


思った通りに正面に吹雪を抜けてきた相手を完全に捕らえる。このまま畳み掛けるれば…


「唸れ唸れ唸れ、我に集いし黄泉の冷気よ…全てを凍てつかせこの世の理を破壊せよ!」


操りきれる最大量の魔力を込め魔法を詠唱、今は速さじゃなく威力。勇者の魔力がどれほどのものかは知らないが、流石にここまで来れば…


「万物を永久の眠りにつかせよ、「極寒地獄ヘルコールド」!!!」


魔法を唱えると同時に自分を中心に暴風が巻き起こり、あたりを飲み込んでいく


私の使える最大威力、極寒地獄……氷の大精霊が好んで使ったとされる使うものが使えば軽く最上級魔法となる大技。私じゃまだまだ上級が限度だけど、ゴッドブリザードで削り氷虎に飲まれた状態なら……魔力を削りきれるはず!


「私の……勝ちよ!」


だがその確信は一瞬しか続かなかった。極寒地獄、これは空間支配魔法…彼は部分的に魔力濃度を上げる事でそれだけで相手を戦闘不能にしていたけど私には出来ない。だからここまで削ってきたというのに、中で私のコントロールとは別の魔力の流れを感じる


「なにが……?」


いや、この魔法の中で動くなんてことは……


そう自分を納得させようとした瞬間支配空間に横一文字に線が入る


「うそ、でしょ……」


「嘘じゃないんだな、これが…だけどいきなりこれ使わされるとは思ってなかった、強いですね」


魔力の纏われた刀を先ほどまでとは違い右手に持って出て来る。自分の魔法は完全に決まった、だけどこの相手には効かなかった…その事実が酷く自分を焦らせる。落ち着かなきゃいけないのは理解しているが、後衛型の自分が前衛型の相手と戦うとき重要なのが、相手の間合いに入れせず自分の間合いで決着をつける事、それを理解してるが故に現状の絶望感を際立たせる


「いったい何を…」


「教えるほど優しくはありません、よっ」


言い終えるかどうかの所で急接近されるが焦りにより思考が停止しかけているため完全に反応できない


「魔力が肩代わりするから、怪我はしませんよね」


魔力を纏う刀、それを振りかぶる相手の姿が、私の見た最後の光景だった



side out

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