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異世界の勇者は何を見る  作者: 小淵執悲
第1章 異世界召喚
21/50

21話

連続1話目

「力也!」


準備をして集合場所に行くと既に英雄がいた


「よお」


「!?なんで髪がそんな色に?」


「創造属性の色らしいぞ」


そういや髪の色が変わってからこいつに会うのは初めてか


「くっそー、いいなあ…」


こいつ髪の色なんて気にするタイプだったか?まあいいか


「にしても久しぶりだな、全然顔見せないし」


「うん、今日のことを知ってからここで成長した俺を見せつけたくてね」


「へえ、いつになくやる気だな」


「今までみたいに力也に頼ってばかりじゃない、自分の力でちゃんと立てるって事、ちゃんと見せつけないと」


…別に俺はお前を支えてるなんて感じたことないんだが、なんか頑固になった時の悪化版みたいな感じがする、まーたこいつの隣にいるために上を目指さなきゃならなくなるか?


「そーかい、お前がその気なら楽しみにしとくよ」


「そして度肝を抜かれると良い」


…大隊長か


「サヴィーナさん!」


「英雄様、体調は大丈夫ですか?」


…俺をボコってからなんかこの人めっちゃ俺の事見下してくるんだよな


「もうやる気まんまんですよ!力也に成長した姿見せるんですからね!」


…ああ、英雄がそーやって俺の名前ばっか出すからか、今一瞬で不機嫌になったぞ。当の英雄が気付くわけないが


「そうですか、それは良かった。では修行の成果を存分に発揮しましょうね」


ちゃんと取り繕ってるけど…俺にとばっちりが来るのは元の世界もこっちの世界も同じか


違うのはこっちの世界だと俺より強いやつを相手にしなきゃいけないってとこだな


「はい!」


…英雄がやる気なのは良いが、空回りしなきゃいいがな


「勇者様、見送りに参りました!」

「英雄様、遅れて申し訳ありません」


バッと現れたのは第三王女、登場早々頭を下げたのはサーニャだ


「お、ルナちゃんありがとうな。サーニャさん、別に待ってないから気にしないで」


「勇者様、修行のようにやれば大丈夫です、自信を持って行ってきてくださいね!」


「うん、頑張るよ」


英雄が微笑みかけたらすげー嬉しそうな顔してんな


「すいません、英雄様の騎士にもかかわらず…」


「だから大丈夫だってば、頭を上げて?ね?」


サーニャとのやり取りはコントに見えてきた…


ん?少し英雄から離れて大隊長が俺のことをめっちゃ睨んでる…俺悪くないと思うんだがなあ


「大隊長、そろそろ出発の時間です」


そう言いに来たのは隊長格の獣人、良かった、彼の隊の訓練に参加するんだな


「分かった、ダグラス、隊の皆は?」


「魔法剣士隊第一隊、全員そろっております」


少し離れたところに数十人が列を組んでいる


「よし、では勇者の二人は初めてなので説明させていただきます。これから我々はあの転移魔方陣で危険地域の防衛拠点の一つに飛びます。そこは決壊によって守られているため安全ですが、そこから出れば危険地域、魔獣が跋扈していますのでご注意を。今回の訓練は数人で班を組んでの討伐任務です。勇者様二人と私、それにサーニャ、ダグラスが班を組みもしもの時は私とダグラスが命を懸けてお守りします」


「イカーチ家の名に恥じぬよう全力を尽くします」


きれいなお辞儀で頭を下げる獣人の隊長、もといダグラスさん…そうか、雷のドゥーカ、イカーチ家の人か


「また、外では冒険者がいる可能性もありますし、誰が見ているかわからないため勇者という単語と敬称、敬語を外さしていただきますがご了承ください」


そら顔の知られてるであろう大隊長が敬語使ってちゃ違和感あるよな


「日程は午前に討伐を行い、午後には模擬戦闘などを行う予定です」


本来ありえないほど日程が自由化されてるんだろうな、俺らに合わせてのことだろうから申し訳ない


まあこの機会は有効活用させてもらう


「では、私たちの班を含めて全10班で行きます。私たちの班は最後に行きますので、しばしお待ちを」


そういうと指揮を執り班ごとに魔方陣の中に誘導している。あの姿だけ見ればちゃんと大隊長やってるんだがな。実力もあるし


「…ダグラスさん」


だがひとつ気になることもある


「どうした?」


「隊長と大隊長が同じ班って大丈夫ですか?目立つような気がするんですが」


「ああ、それは大丈夫だ。新入りや目を付けたものがいればこの布陣は割と行ってきているからな。もし見ている者がいるとしたらそれは今までのことも見ているだろうし、問題ないだろう」


「そうですか、ありがとうございます」


「うむ…だがしかしもう一人の方、どうにかならんか?これから危険地域に行くというのに気が抜けすぎているだろ…」


「女の方は分かりませんが英雄なら大丈夫だと思いますよ?ちゃんと魔方陣に入るころには切り替えてるでしょうから」


「そうか、なら良いが…」


納得してはいないように見えるが、まあいいか


さてと、んじゃあまあいっちょ頑張りますか






……






「!前方に敵!」


「炎よ、我に力を!「炎装」!!」


大隊長の声にすぐさま反応し、英雄が腕、ではなく剣に炎を纏う


訓練始まって初の敵か、まあ英雄に任せていよな


「ほう、たった一言の詠唱であれほどの炎を纏うか」


結構な魔力が込められたとは思ったけど…ダグラスさんが言うんだ、相当なんだろうな


「流石は英雄様!!それならばB級の魔物とやりあえますよ!」


サーニャがいうが、B級…既にこの世界の上位に食い込むような力だよな



『じゃがうまく身体強化に魔力が回っておらん、あ奴にまだB級は無理じゃな』



へえ、やけに辛口だね



『力也はあ奴を死なせたくはないんじゃろ?ならしっかり見極めて助けに入らんとな…前衛がいればあ奴の魔法はB級なら殺れる』



へえ、ちなみに俺は?



『主ならとうにB級なら潰せるじゃろ、身体強化の錬度も相当上がっておるし、今ならあの大隊長に一泡どころか三泡くらい吹かせられるじゃろ。まあ勝てはせんが』



周りの評価的にはまだ俺の方が弱いがな


まだまだ勝てねえし…強いな、国の軍の大隊長ってのは



『周りの評価が低いのは主はいやがっておらんだろう。お、あ奴が魔獣を倒したようじゃぞ』



そうみたいだな…だが


「英雄、なんでとどめを刺さねえ?」


完全にのされてはいるが息のあるクマのような魔獣が横たわっている


「うっ、だがこの魔獣も生きてるんだぜ?命を奪うとかは…」


ばつが悪そうに顔を背ける…やっぱ甘いな、こいつは


「今ならまだ生かして無力化出来てるが、今後一筋縄じゃいかない敵も出てくるぞ?そんなんじゃ大切なもん、失うぜ?」


「っ!!!」


…言い過ぎたか?いや、こいつにはこのくらいが


「おい、黙って聞いていればなんだお前、魔獣にとどめを刺さなかったくらいで英雄さ…英雄を非難するとは」


…あんたはそれを止めなきゃならん立場だろうが


「そうよ、英雄様の優しさがあんたには分からないの?これだからおまけは」


やれやれといった体で首を振るサーニャにはイラっと来たぞ


「落ち着いてください二人とも、力也の言うことも間違ってはいないでしょう?」


ダグラスさんはちゃんと見ているし、ちゃんと考えてる…この班の唯一正確な判断ができる人か


「…ちっ。とどめなんて必要な時には我々がやりま…やる、英雄は好きなようにやりなさい」


「は、はい!」


…こりゃ嫌な流れだな



『無理やりにでもあ奴に言い聞かせればいいのでは?』



この空気でそれを強行したら俺が潰される…



『それもそうじゃな』



…にしても、俺らを囲うようにオオカミのような群れが集まってきてるよなあ



『そうなのか?私にも分からないレベルなのじゃ、魔力感知に関してはかなり飛び抜けておるのじゃな、主は』



すごい役に立つな、気配がすごく見やすいし



『…ん、私の感知にも引っかかった。かなりの速度で近くまで来たもんじゃな……主よ、武器は?』



短刀を頼む



『了解した』



「…我がもとに顕現せよ、「刀創造(グラデュース)」」


右手に刀を生成、クロが造った短刀はもとより打ち合わせていた脇と腰の裏にぶら下がるように顕現する


「?いきなり武器を造って、どうした?」


「っ!?大隊長!囲まれてます!」


ダグラスさんが気付き叫ぶとほぼ同時




ウォォォォォォォォオォォォォォオォン!!!




オオカミの雄たけびが上がる


「っ!、シャールウルフか!群れで見るとCランク相当ある、気を付けろ!」


先の雄たけびが合図だったのか一斉にオオカミが飛び出してくる



俺達をうまく分断するように動き回られるせいで俺、ダグラスさんが孤立…残り三人は一緒だし英雄は問題ないか



『やけに統率されてるんじゃな』



なかなかの軍力、こーゆー奴らは頭、リーダーを潰したら楽になるんだがな…



『きっと後ろじゃな、主。後方数十メートル、そっちから先ほどの声は聞こえた』



サンキュ


「…よっと」



飛びかかるオオカミを軽く受け流し目的の方向を向く…が


…こっちの方向のオオカミだけむやみやたらに飛びかかってこない、か


裏から飛びかかってくるオオカミをしゃがんで躱し下から刀を振り上げ両断する



『飛びかかる方に意識を向かせようとしとるようじゃな。じゃがいくらなんでも主は作業のように殺しすぎじゃ…心に乱れや戸惑いが一切なかったぞ』



殺すか殺されるか、二つに一つの野生だろ?気にかける必要はない



『まあそれもそうじゃな。にしても大隊長は受け流すだけであ奴の無力化を手伝ってるだけ、ダグラスとやらも余裕の感じでこちらに来そうなシャールウルフに牽制を加えてくれるだけか』



俺らでやれって事だろ。単体ならD級、この防御力なら身体強化すらいらねえよ。英雄も余裕だろ



ただ問題は数、(リーダー)を消しちまえば英雄にここら一帯を消し炭に変えてもらってもいいが、トップは少し戦ってみたいし、トップがそれなりに頭脳があれば避けられかねん。英雄は殺す気がないみたいで一匹ずつ相手にしているが、全体無力化魔法はまだ無理なんだろうし



「それに…何かを守ろうとしてるな」



『そうじゃな…このウルフども、皆オスじゃな。子とメスを守るためにか、逃がす時間を稼ぐためじゃろう』



…相手が悪かったと言うべきか、運がなかったと言うべきか



『不運じゃのう、主たちと正面衝突とは』



あの先に守るべきものか…?いや、魔力反応はないな。少し右にずれた数百メートル先に動く多くの魔力反応がある



『…常時発動ではないとはいえ意識しただけで普通数百メートルも離れた敵を察知などできんぞ?』



気配を読むのは得意なだけさ。ま、メスや子供に用はない…さっさと出てきな


殺気をぶつけ、それだけで圧倒…元の世界では楽にできたんだがなあ



『魔力を同時に威圧に使えばかなりのものじゃが、主の殺気は殺し合いの野生にはまだ弱いようじゃの。まあこれからかなりのものになりそうじゃが』



ちっ、無駄な戦闘はいらねえのに…多対一は慣れっこだが、この組織化された敵はだるいんだよな



「ふーっ、英雄がのらりくらりやってるうちにけり付けようぜ」


移動術に身体強化を重ねることで縮地の域に達した移動法でオオカミの作る陣形のど真ん中に移動する


「黒戸流、居合…「無矢放(むしは)」」


刀を鞘に再び収めた瞬間にオオカミたちの両前足がズレ、完全に切り離される


元は相手が矢を放つ前に手首から先を先んじて切り落とすために作られた技だとか



『…返り血すら浴びんとわ、恐ろしい速度じゃ』



…あとは数匹、多くが英雄に引き付けられてて楽になってるな


瞬間死角から飛び出してきた残りの(リーダー)以外を最小限の動きで躱しつつきゅしょを確実にえぐる



『死角からの攻撃すら軽く受け流すか…まあ主が強いに越したことはないんじゃがな。あとはボスだけじゃ』



…来た


グルルルルルと唸るようにこちらを見つめるオオカミ、今までの奴より一回り小さい?


「すまんな、だがまあ、お前の仲間、メスや子供は追わないから安心しな」


瞬間、飛びかかってくるが、その初撃は今までの奴らよりも圧倒的に速く、牙を受け流すだけにとどまる



…速いな、あれでCか



『このオオカミ共は単体ならDランク、群れだからこそCなんじゃがな…こやつは単体でCランクはありそうじゃ』



なるほど、さすがはリーダーか。流石にCランクはきついかと思っていたが、普通に何とかなるな



『まあD上がりじゃ、Cランクの中でも下位じゃからな』



ま、そうだよな



次撃、先ほどすでに速さは見た…もう、仕留められる


飛びかからず低姿勢で高速突撃してくるオオカミの攻撃ジャンプして避ける


待っていたかのように反転し飛びかかってくるが


「身のこなしが速いが、空中に誘われたお前の負けだ」


短刀を取り出し避けることのできない無防備な体に投げつける


…家族を守ろうとしただけだろうが、相手が悪かったな


完全に目に刺さりながら地面に叩きつけられるもすぐ立ち上がりこちらを見据えるオオカミ、その姿…かっけえなあ、おい


「ゆっくり、休め」



ざっと刀を振り下ろし、首と胴を斬り離す

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