勇者のパーティ
俺たちは冒険者ギルドからの依頼を受けていた。依頼の内容はゴブリンキングとゴブリンクイーン、そして大量に増えたゴブリンたちの殲滅だ。
「雑魚はボク達がやる! エマはキングとクイーンを!」
近くに群がるゴブリン達を簡単に殺しながら叫ぶのは銀狼族のルイナだ。中性的な顔立ちをした美少年で、銀狼族特有の圧倒的な身体能力を兼ね備えている。
「わかった」
ルイナ言葉を聞き飛び出して行ったのは太陽のような美しい赤いの髪を持つエマ。自分よりも大きい魔物に対して恐ることなく戦う姿はまさに英雄的だ。
容姿も優れており美少女であることから戦う姿が非常に絵になる。
「後方支援は私にお任せください」
「お願いね!」
ルイナと同じようにゴブリンの相手をしているのは神官の服に身を包んだスフィリアだ。肉弾戦を得意とするルイナとは違い魔法を使って戦う。扱う魔法は神の力が宿ると言われる神聖魔法で、攻撃としても威力は申し分ないだけではないだけではなく味方の傷を癒すこともできる。
個々が高い能力を持ちパーティ的にもバランスの良い。まさに勇者のパーティと言える。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ゴブリンキングにむかって剣を振り下ろすエマ。その太刀筋は美しく鋭い。
「グゴォォォォォォ」
エマの攻撃はゴブリンキングの腕を斬り飛ばした。人に近い顔をしたゴブリンキングの顔が苦痛と怒りに歪む。
さすが魔物というべきか、勢いは弱まるどころか怒りに任せてまだ残っている手に握られた大きな斧のような武器をエマに向かって振るう。
その攻撃をまるで踊るかのように躱し、さらに攻撃を仕掛けようとしたところでルイナがエマに向かって叫ぶ。
「エマ、後ろ!」
エマの背後からゴブリンクイーンが襲い掛かる。しかし、まるで後ろからの攻撃が見えていたかのように危なげなく攻撃を躱すとゴブリンクイーンに向かって手をかざし魔法を発動させる。
手から放たれた火の玉がゴブリンクイーンの顔面に直撃する。
「ゴギャャャャャャャア!!」
不快な叫び声が響き渡る。
ゴブリンの上位種とゴブリンの大群相手に圧倒するパーティメンバーに対して俺はゴブリンを2体相手にするので精一杯だった。
襲いかかって来る2体のゴブリンの攻撃をそれぞれ躱しながら剣を振るう。しかし俺の攻撃は当たらず完成程度にしかなっていない。
銀狼族のような圧倒的な身体能力もなく、さらには戦闘職でもない【人形術師】である俺の戦闘力は高が知れている。人が努力して到達できる力は大したことがない。ほとんどは神から与えられる『職』に影響される。
「ーーくっ」
2体のゴブリンに意識を持っていかれていた俺は後ろからの攻撃をしかけて来るゴブリンの存在に気づかなかった。
だが、間一髪のところでルイナがそのゴブリンを殺す。それだけではなく俺が戦っていた2体のゴブリンまでもあっさりと倒してしまった。
「助かった」
お礼を言う俺な対して蔑むような目を向けるルイナ。
「弱いんだから向こうの隅でじっとしてなよ。足手まといがいる中で戦うのって不快なんだよ。荷物持ちくらいしか役に立たないんだからさ。自分の身の程を弁えなよ」
吐き捨てるように言うと再びゴブリン達を圧倒的な力で蹴散らしていく。ルイナの周りにはゴブリンの死体がゴロゴロと転がり、どんどん数を増やしていく。
辺りを見回せばあれだけ沢山いたゴブリン達はほとんど死んでいる。
俺が2体のゴブリンを相手にしている間にルイナと、スフィリアがほとんど倒してしまっていた。
残りのゴブリン達を倒し終える頃にはエマの戦いも終わりを迎えていた。
片腕だけではなく身体中に剣で切られてボロボロとなったゴブリンキング。
そしてその近くには上半身が炭のようになって倒れているゴブリンクイーンの死骸が転がっている。
「グゴォォォォォォ!!」
魔物らしい獰猛な叫び声と共にエマに突っ込むゴブリンキングだが、そんな単調な動きではエマの相手にならない。
目にまとまらない速さでゴブリンキングとの距離を詰めるエマ。そしてエマの一振りが一本の銀光のように走り、ゴブリンキングの頭を斬り飛ばした。大きな音を立てて倒れるゴブリンキングを背に剣を納めた。
エマの一撃を最後に俺たちは冒険者ギルドからの依頼を見事に達成したのだ。




