559 作業の片手間
料理組
「巽くん、本当にお料理上手だよね」
お昼ご飯を作っていると、手伝ってくれていた水瀬さんがそんなことを言う。
「そうかな?まあ、昔からやってるしね」
「いつ頃からやってるの?」
「うーん、物心つく頃には包丁握ってたかな」
最初は母さんが喜ぶから。その後は家族のために作り続けた。
「基本的なところは祖母と巡李さん・・・雅人の母親ね。その2人に教わったんだよ」
「そういえば、結婚式でも仲良しだったよね」
「水瀬さんも挨拶はしたんでしょ?」
「う、うん・・・娘って呼んで貰った」
相変わらず気の早いことだが、まあ、雅人が唯一紹介した彼女だしそうなるよね。
「そういえば、中条くんの妹さん・・・薫ちゃんにも会ったけど、可愛い子だったよね。巽くんは付き合ったりとかしなかったの?」
「薫ちゃん?はは、あんなに可愛い子が俺と付き合うことはないでしょ。それに、俺はもう遥香の物だし」
「そうなんだ。うーん・・・」
何やら考え込む水瀬さん。というか、薫ちゃんみたいな美少女が俺を好きになるってラノベ展開だよねぇ。幼なじみでも俺にそこまでの魅力はないから叶わぬ夢だけど。それに、俺は遥香と結婚して遥香の物になったから無理な話だし。
「あのさ、巽くん。もし良かったら、時間空いてる時に料理教えてくれないかな?」
「別にいいけど・・・巡李さんの方が良くない?」
「そ、それはちょっと、まだハードルが高くて・・・」
まあ、義母になる人だし、恋人だとハードル高く感じるのかもしれない。俺は結婚前に何度も会ってるけど、それは俺が男だから出来たことだし、同じようには難しいか。
「分かった。でも、雅人が嫉妬するからちゃんと説明はしなよ?」
「嫉妬・・・してくれるのかな?」
「多分ね」
というか、雅人的にかなりベタ惚れっぽいから嫉妬くらいするだろう。まあ、向こうも俺が遥香一筋なのは分かってても、他の男と一緒なのは嫌だろうし。現に今もこちらを見て複雑な表情を・・・あれ?そうでもない?
微妙な顔をしてても嫉妬とかではなさそうな・・・というか、遥香まで似たような表情なのはどうなの?ちなみに我が愛娘の千鶴は遥香の隣で楽しそうに絵を描いていた。きっと、見慣れぬ場所で筆が走るのだろう。
なんとも楽しそうで見てて微笑ましくなる。
「さて、ちゃちゃっと、作ってご飯にしようか」
「そうだね」
嫉妬してるのか微妙ではあっても、俺としても2人の側に早く行きたいので頑張って作業を早めつつ、でもクオリティを落とさないように美味しいものを作る。




