265 帰るまでが文化祭
おかえり
「ただいまー」
「おかえりなさい。お疲れ様でした遥香さん」
「ああ、瑠美はどうした?」
時刻は22時過ぎ。明日の分も仕事をしてきたであろう先生を出迎えると既に千鶴ちゃんが寝ているとわかっていたのか真っ先にそれを聞いてきたので俺は苦笑気味に言った。
「今は丁度お風呂に入ってますよ。千鶴ちゃんはさっき寝かしつけました」
「そうか・・・今日はバンド無理矢理参加させて悪かったな」
荷物を受け取ってから、夕飯の準備をしようとするとそんなことを言ってくるので俺は首を傾げて言った。
「むしろ楽しかったですよ。それに千鶴ちゃんも喜んでたみたいですし、遥香さんも少しは楽しめたなら良かったです」
そう言ってからバタバタと、しかし千鶴ちゃんが起きないようにして夕飯を温めてよそう。それを見ながら先生はポツリと言った。
「なあ、明日のデート本当にいいのか?」
「まあ、折角瑠美さんと千鶴ちゃんが気を使ってくれましたし、遥香さんが嫌じゃなければ」
「そりゃ、私は嬉しいが・・・ちーちゃんを置いていくのは気が引けるな」
「なーにを言ってるんだか。夫婦の時間も時には大切なんだよ?」
そう言いながらバスタオル姿で顔を出した瑠美さん。俺は即座に目を閉じてから先生が何かを言う前に言った。
「とりあえず服を着てください」
「ありゃ?健斗くんは私の裸には興味ないのかな?」
「失礼を承知で言えば」
「ほほぅ、おアツいですなぁ」
目を閉じていても瑠美さんがニヤニヤしてるのがわかる。着替えに部屋に行ったのをなんとなく気配で確認してから、俺は先生にそのまま言った。
「千鶴ちゃんは振り替え休日に存分に遊んであげますよ。それに・・・2人きりのデートはもしかしたら結婚前最後かもしれませんしね」
「ま、お前がちーちゃんを放置するわけもないし任せて大丈夫か。そういうことなら明日は私はお前に存分に甘えるが後悔するなよ?」
「ええ、大丈夫ですよ」
そう言いながら料理を並べていると寝間着に着替えた瑠美さんが出てきたので冷たいお茶を渡すと美味しそうに飲んでから言った。
「健斗くんは、本当に気がききすぎるねぇ」
「そんなことないですよ。俺は結構鈍感ですから」
「自覚があるのが難いねぇ。ま、それは置いといて楽しんできなよ。私がちーちゃんと大人しく留守番してるからさ」
「お昼は作っていきますが、お願いします」
「はいはい。任されましたー♪」
ひらひらと手を振る瑠美さんに苦笑してから、先生の帰宅と同時に文化祭が終わったことが実感できた。後は先生とのデートが終わればいつもの日常になるのだろうと、そう思いながらデートを密かに楽しみにするのだった。




