248 零れた本音に
ぽろり
「おはようございます、お義母さん」
「あら、けんちゃん。やっぱり早起きしてきたのね」
支度をしてから朝食の準備を手伝うために台所に向かうと、嬉しそうに出迎えてくれるお義母さんの姿が。
まあ、本当はもっと前に起きていて、先生と千鶴ちゃんの2人の寝顔を眺めていたのだが、流石に手伝いもしたかったのでこうして顔を見せたのだ。
「ええ、何かお手伝い出来ればと思いまして。ご迷惑でしたか?」
「ふふ、そんなことないわよ。うちの娘達はあんまり一緒に台所に立ってくれなかったから嬉しいわぁ。ただ、けんちゃんもこういう時くらいはゆっくりしてもいいとは思うけどね」
うーん、むしろ俺としては、こういう時に何もしないのが落ち着かないのだが・・・まあ、これも俺の自己満足なので言わないでおく。
「朝食は和食が多い感じですか?」
「ええ、日本人ならお米だってあの人もお義母様も言うからね。遥香ちゃんや瑠美ちゃんはその影響かパンの方が好きになったみたいだけど」
「なるほど」
まあ、家庭の方針なら従うべきだろう。今のところお義母さんが作ってるメニューなら2人も食べれないことはなさそうだし大丈夫かな?、と思っていると、お義母さんはくすりと笑って言った。
「けんちゃんは本当にいい子なのね」
「・・・いえ、そんなことありませんよ。俺なんて全然ダメです。親孝行もろくに出来ませんでしたから」
「あら、そう思っているのは多分けんちゃんだけよ?少なくともお父様の恵さんはけんちゃんには苦労をかけたって言ってたしね」
そんなことはないと思うけど・・・むしろ、俺は母さんにも父さんにもちゃんと親孝行出来なかったのだろうと少しだけ後悔しているくらいだ。
「でも、そうね・・・けんちゃんの気持ちをちゃんと晴らしたいなら、幸せになってそれを叶えるといいと思うわよ。恵さんも、天国のお母様もきっとそれが1番の望みなんだから」
「・・・ありがとうございます。さっきのは寝ぼけていたってことで忘れてください」
「うふふ、いーや♪だって、義理の息子がせっかく初めて本音を話してくれたんだもの」
そう微笑むお義母さん。でも、そうだな・・・出来ないことを引きずるよりも先のことを考えなくちゃいけないよな。俺はもうすぐ本当に父親になるんだ。だからこそ、もっとしっかりしないといけない。
千鶴ちゃんやこれから産まれてくる子供が幸せなれるように導ける大人にならなくちゃいけない。そして・・・先生の夫として相応しくなれるようになろうと密かに決意をしながらお義母さんと朝食の準備をするのだった。




