第二章 私が木村春人である
第二章 私が木村春人である
私の名前はキンバリウム・ラインハルト。キンバリウム家の長男である。
ガザス大陸のアルガスヘイトでは古くから残っている一族だ。我が一族はこの世界で言うところのヴァンパイアという種族である。
とは言っても少し認識に違いがあるが。私が元いた世界は悪魔や魔獣が住む世界だ。名もないような獣もいれば、名を出すのも恐ろしいような上級悪魔もいる。
我が一族は下級悪魔ではないが、中級の下の方に位置づけられている。まあどちらかと言えばカス扱いを受けることが多い。
そして私の世界にも人間のような種族も存在している。厳密に言えばこちらの世界の人間とは色々と異なっているが、だいたい同じようなものに見える。
私はあまり関わらないように暮らしてきたので詳しくは知らない。
そんな世界から、なぜ私がこのような見知らぬ世界に来てしまったのか。
それは3週間前だ。
磁場の不安定な天気の日に稀に発生する歪みが大きくなっていたところに稲妻を発するドラゴン族が通りかかり、私は運悪く、そのドラゴンに放たれた落雷に吹っ飛ばされ、見事に歪みに吸い込まれたのだ。
歪みは遥か以前から危険なものと言われたり、エリルソフィアと言われる楽園に通じると言われたり、様々な伝承があったが、その歪みに飲まれた者は誰一人戻らないため、近寄る者はいなかった。
ん?なぜ私はそんなところの近くにいたのか?
まあ興味本位だよ。
そしてその結果がこれだ。楽園どころか元の世界より荒んだ世に来てしまった。
3週間で色々と学んだが、この世界には歪みがほとんど発生しないようだ。よって帰る手段がない。
なぜか言葉が通じるのがせめてもの救いだ。
しかしこの世界、どうしてこうも住民票というものが大切なのだろうか。
どこに行っても求められる。
そして私が名前を名乗ると決まって変な目で見られるのが苦痛でたまらない。私は断じて木村春人などという爽やかな名前ではない。
キンバリウム家の血を引くヴァンパイアなのだ。しかし不本意ながらアパートの大家にこの名前を授かってから、本当の名を名乗るよりは受け入れられ、そして行動がしやすくなっている。
あとは住民票を手に入れて生活保護を受けることが出来れば食事と睡眠の心配がいらなくなるのだがな。
どうやってあの担当者を説得しようか。
よし、まずはお友達になろう。




