蛇足 怖いまま終わりたくないあなたへ
タタン、タタン…。タタン、タタン…。
あれから3ヶ月。俺はまた、あの駅に来ている。
ついに手に入れたんだ…俺だけの切り札を…。
「貴方もシツコイですね。何度来ても同じ。貴方の死は変わりませんよ」
階段を上がり、ホームに顔を見せた俺に、死神は、やれやれと溜息をつく。
毎週金曜、この時間、こいつはこの場所に現れる。
「で?今日は何です?土下座ですか?泣き落としですか?あと5分ほどで列車が来ますので、さっさと失せやがれなんですが…」
俺は無言で財布を取り出す。
「金なんか出されても、私、全く興味ないんですが…」
俺は勢いよく財布からそれを取り出し、死神の前に並べる。
「そ、それは…!?」
死神は、並べられた写真の数々に目の色を変える。
「そう、30年前にわずか3日で廃車になった、幻の車両カケコミクンだ!」
死神の腕がわなわなと震え、指が触れたそうにワキワキと蠢く。
「お、オークションでも出回らない幻の芸術を、どうして貴方なんかが…」
死神の声が震える。
「ふ、こちとら腐っても記者なんでな、コネクションってものがあるんだよ」
荒い呼吸を整えながら、死神は俺を睨みつける。
「話を聞いて差し上げようではないですか、望みはなんです?」
釣れた…!!
「俺たちの呪いを解け」
「呪い?そんなものありませんよ」
死神は馬鹿にしたように笑う。
「幸せな時に死ぬってあれだよ…」
本当に心当たりがなさそうな様子に、俺は補足する。
「はぁ。まぁ、いいでしょう。何人かコロっとやったら、それなりにスカッとはしましたし」
「いや、今までこの呪いで死んだ人間も全員元に戻せ」
死神は、勿体ぶった顔で、ニヤニヤと俺に向き直る。
「ほう、列車に飛び込んだままにしろと言うことですか、興味深い…」
「違うに決まってんだろ、幸せの絶頂でお前が殺したのをなかったことにしろって言ってんだよ」
死神はちっと舌打ちをする。
「面倒ですね…辻褄合わせ、大変なんですよ?」
「ネガもつける」
「乗りましょう!」
勢いよく俺から写真とネガをひったくると、死神はそれを掲げてクルクルと周り出す。
そして、ピタッと止まって俺を振り返る。
「あ、でも、また飛び込んでも知りませんよ?」
「それは…知らん!!」
そんなとこまで面倒見切れるか。
「ほっほ、貴方、人間にしておくにはもったいない潔さですね」
タタン、タタン…。タタン、タタン…。
電車が来た。
死神は、パシャパシャと数枚写真を撮ると、さっさと先頭車両に乗り込む。
空いている席に腰を下ろし、写真とネガを抱きしめて、笑顔で俺に片手をあげる。
なんともあっけない終わりだ。
俺は腰が抜け、しばらくその場から動けなかった。
というわけで、死神さんご満悦、な蛇足でした。
ご賞味いただき、ありがとうございましたー。
ホラー成分摂取した後って、謎にトイレ行くのとか勇気いりますよね。
え?そんなこともないですか?おかしいな…。
それでは、お粗末さまでした。




