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催眠おじさんのダンジョン無双~「俺は最強」と思い込んだら、本当に最強になってしまった~   作者: ぽんぽこ@銀郎殿下5/16コミカライズ開始!!


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第8話 ダンジョン装備の罠


「神代レイジの薬、本当に死者蘇生の秘薬かもしれないらしいぞ」


 俺の名前は吉岡直人。

 三十二歳、探索者歴八か月のEランクだ。


 今日も幼馴染の遠山と松木を連れ、大宮第一迷宮の浅い区画を探索していた。



「正式な鑑定結果は、まだ出ていないだろ」


 痩せた顔の遠山が先頭を歩き、その後ろでは大柄な松木が傷だらけの盾を構えている。


 俺たちは小学生の頃からの付き合いだった。

 三人とも仕事が長続きせず、探索者になる前の夜に「今度こそ一緒に成り上がろう」と約束した仲である。


「神級アイテムなら、国が何百億でも出すだろ。俺たちも一つくらい当たりを拾いたいよな」

「直人は先月結婚したばかりだしな。奥さんに楽をさせてやれ」


 松木に肩を叩かれ、俺は苦笑する。



「まずは、お前の盾を買い替える。次に遠山の正式鑑定器だ」

「自分の装備が一番ボロいだろ」


「俺は逃げ足で何とかする。残った金で、沙耶に指輪を買うよ。結婚指輪、安物で我慢させてるからな」

「また自分を後回しにするのか、お前は相変わらず良い奴だなー」


 遠山は呆れていたが、口元は少し笑っていた。

 俺たちが小型のジャンクゴーレムを倒すと、その背後に小さな宝箱が現れた。



「おい見ろ、武器が入ってるぞ!」


 中にあったのは、銀色に輝くナイフだった。

 刀身には錆も刃こぼれもなく、地上製の安物とは明らかに違う。


「もしかしてミスリル製じゃないか?」

「柄を見ろ。スロットが二つある」


 二つのはめ込み口には、赤と青の《効果石》が収まっていた。


 ダンジョン産の武器や防具には《スロット》を持つ物があり、効果石によって炎を出す、重さを変えるなどの特殊な力が加わる。


 俺は腰の簡易鑑定器を向けた。


【効果石:《必中》】

【効果石:《回帰》】


「やったぞ、二つとも当たりだ!」


 《必中》は放った攻撃を対象へ当て、《回帰》は使用した装備を持ち主のもとへ戻す。投げれば必ず命中し、その後は自動で戻ってくる。最高の投擲武器に思えた。



「これを売れば、三人分の装備を揃えられるぞ」

「その前に、ちょっと試してみようぜ! 初めての当たり武器だしさ!」


 興奮してそう言うと、遠山がナイフを持つ俺の腕をつかんだ。


「待てよ。簡易鑑定では、効果石同士の干渉までは分からないだろ」

「だけどさ、正式鑑定は高いじゃん。一回投げれてみれば済むだろ」

「沙耶さんが待ってるんだぞ。危険な真似はするな」


 言われなくても分かっている。


 それでも、傷だらけの盾を持つ松木と、安い簡易鑑定器を何度も修理している遠山を見たら、この機会を逃したくなかった。


 都合よく通路の奥から、ジャンクゴーレムが現れる。



「一回だけだ。危なければ、すぐやめる」


 俺は狙いもつけず、ナイフを投げた。

 銀色の刃は途中で軌道を変え、逃げようとしたゴブリンの額へ突き刺さる。


「見たか! 本当に《必中》だ!」


 ナイフがゴブリンの額から抜け、俺へ戻ってくる。


 笑いながら右手を伸ばした。


 だが、刃は手の横を通過し、俺の腹へ深く突き刺さった。


「……え?」


 《回帰》によって、次の到達先は持ち主である俺へ変わった。そこへ《必中》が働いたのだ。



「抜くな!」


 遠山が叫んだ時には、俺は恐怖に負けてナイフを引き抜き、遠くへ投げ捨てていた。


 刃が空中で向きを変える。


「直人、伏せろ!」


 松木が俺の前へ飛び出し、傷だらけの盾を構えた。


 だがナイフは盾を避けず、その中心を貫いた。

 銀色の刃は松木の胸へ突き刺さり、それでも止まらない。幼馴染の身体を押し込むように進み、背後にいた俺の腹へ再び届いた。


「松木……?」

「いてぇ……いてぇよぉ……」


 松木は血を吐きながら、地面をのたうち回った。



「大丈夫か二人とも!? 待ってろ、俺が今から助けを呼んでくる!!」

「行かないでくれ遠山! 松木がもう……!」


 倒れた俺の手の先で、松木の身体がどんどんと動かなくなっていく。


(ちくしょう、どうしてこんなことに……)


「ぎゃああっ!!」

「遠山!?」


 しまった。

 もしや一人でモンスターに遭遇しちまったのか!?



 だが失血した俺では助けに行くこともできない。

 遠山の叫びが小さくなっていくのを聞きながら、俺の意識は徐々に遠のいていった。



 ◆


「さぁて、初購入のオリパは何が入ってるかな~」


 俺は洞窟の床へ座り、《装備オリジナルパック》の段ボールを開けた。


 箱には《訳あり品・効果競合品》《返品不可》と書かれている。使い道のない装備を安く詰め合わせた、探索者向けの福袋らしい。



「おっ、これは高そうだぞ!」


 傷ついた胸当てや片方だけの手袋をどかすと、銀色のナイフが出てきた。


 澪が簡易鑑定器を向ける。


【効果石:《必中》】

【効果石:《回帰》】

【同種装備による死亡事故あり】


 澪は事故情報を読み、わずかに眉を寄せた。


「完全な外れだな」

「当たりじゃないか。投げても絶対に失くさないぞ」

「愚か者め。アマチュアならともかく、プロの探索者は無暗に手を出さず、効果石がどんな意味を持つか慎重に考えるもんだぞ」


 澪はこれまで新人が犯した事故事例をアレコレと語った。

 どうやら講習でキチンと説明があったそうだが、俺は半分くらい寝てたんだよな。


 そう返すと「そういう奴から死んでいくんだ。車の免許取ってすぐ事故る奴と同じだぞ」と怒られてしまった。



「……というかだな。深く考えずとも、これを投げたらお前へ刺さりに戻ってくると分かるだろうが」

「なら大丈夫だ。俺なら刺さっても死なないし」


 ナイフを持って立ち上がると、試し投げをするため洞窟の外へ向かった。


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