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Section 14: 海賊艦隊vs海賊艦隊~惑星クラン星域海戦~

●惑星クラン星域海戦各艦隊編成:

◇アンネリース艦隊

旗艦:バハムート【リヴァイアサン級突撃艦】 司令/ML:アンネリース

★スコードロン1

 ディビジョン1:突撃艦隊

  エレメント1:旗艦バハムート+リヴァイアサン級

  エレメント2:リヴァイアサン級+リヴァイアサン級

 ディビジョン2:高速砲艦隊

  エレメント3:ワーム級+ワーム級

  エレメント4:ワーム級+ワーム級

勝利条件:

 ヴェロニア艦隊を抑えて【突撃艦・迅龍(中破、航行能力低下)】がジャンプポイントに到達するのを支援し退去させる。

解説:

 極めて基本的な高機動艦混成スコードロン編成。

 艦隊としての艦艇数の格差がかなり大きく、火力支援用の戦列砲艦がないのがネックではある。

 なにより、ヴェロニア艦隊の勝利条件は、「アンネリース艦隊の隙間を抜けて【突撃艦・迅龍】をおとす事」なのでそれを阻止するためには、かなり強行的な艦隊運用が必要になる。


◆ヴェロニア艦隊

旗艦:アガルタ【アガルタ級高速砲艦】 総司令/ML:ヴェロニア

★混成火力スコードロン

 高速砲艦ディビジョン

  エレメント1:旗艦アガルタ+カナン級

  エレメント2:カナン級+カナン級

 戦列砲艦ディビジョン

  エレメント3:レムリア級+レムリア級

  エレメント4:レムリア級+レムリア級

★独立高速砲艦エレメント

  エレメント5:カナン級+カナン級

★駆逐艦スコードロン

 駆逐艦ディビジョン1

  エレメント6:サンプソン改級+サンプソン改級

  エレメント7:サンプソン改級+サンプソン改級

 駆逐艦ディビジョン2

  エレメント8:サンプソン改級+サンプソン改級

  エレメント9:サンプソン改級+サンプソン改級

★支援エレメント

 クロンダイク改級駆逐艦母艦改修艦+50万t級輸送艦

勝利条件:

 アンネリース艦隊を突破して【突撃艦・迅龍(中破、航行能力低下)】を撃沈又は拿捕する。

解説:

 突撃艦を喪失した少し常識から外れた艦隊編成。

 いわゆる圧倒的火力を持ちながらも護衛戦力を喪失した状態であり、今回の「惑星クラン星域海戦」とは「ヴェロニア艦隊」にとっては、ようするに戦闘機を失った攻撃隊が、敵戦闘機4機に襲われながら爆撃任務を強行しているようなものだと解釈できる。

 要するに、アンネリース艦隊は「艦艇数からくる迎撃火力が低めだが、高機動&高防御な編成」で、ヴェロニア艦隊は「艦艇数が多く超火力をバカスカ撃てるが、ボコボコ落とされやすい紙防御な編成」なのである。



 ◆◇◆



 ヴェロニア艦隊後方——、50万t級輸送艦で運ばれてきた簡易補修材によって破損箇所の修復を行っている旗艦アガルタとカナン級高速砲艦二隻。

 その旗艦の艦橋にて、ヴェロニアは眉を歪めて星域図とそこに展開している艦艇を示す光点群を眺めている。


「アンネリースは戦列砲艦がない高速艦艇中心の編成……か。今更ながら突撃艦を喪失したのは痛いな……」

「はい……、このまま海戦を進めれば、かなりの被害を被るかと……」

「……、だから下がれ……と?」


 ヴェロニアが冷たい目でアガルタ艦長を睨みつける。そんなヴェロニアに、少し怯えた表情で首を横に振りつつ苦笑いするアガルタ艦長。


「ふん、まあいい……。駆逐艦母艦は前進してくる敵突撃艦を避けて迂回航路に入れ……。そして、目標【突撃艦・迅龍】へ接近後に駆逐艦を展開して、その全艦で目標撃沈を図れ……」

「……ふむ、では……、敵突撃艦は……」

「おそらくアンネリースは……、こちらの迅龍追撃艦の迎撃と、後方火力艦——戦列砲艦を狙う艦艇を分けて来るだろうから……、こちらの高速砲艦と戦列砲艦の連携で殲滅しつつ穴を開けてそこを突破する……」


 今回の海戦はこちらの艦艇の数がかなり多い。それらに対し敵艦は数的不利を承知で追撃阻止を行わねば【迅龍】が堕ちる事になる。

 ——だからこそ各個撃破も可能だと言える。


「ククク……、アンネリースよ……。私に喧嘩を売ったこと後悔させてやろう……」


 ヴェロニアはそう呟きながら嘲笑を浮かべたのである。



 さて——、その同時刻のアンネリース艦隊旗艦バハムートでは……。


「……いいかお前ら……。状況は明確にアタシらが不利だ……。後方に控える輸送艦がナニカしてるっぽいし……、とにかく優先順位をつけて順番かつ即座に撃滅してゆく必要がある……」


 そのアンネリースの言葉に各指揮官が頷く。


「突撃艦はアタシのエレメントともう一つのエレメントで分けて運用する……。アタシの艦と僚艦は高速で迂回して後方戦列砲艦を処理……、前進してくる高速艦艇の群れは、それ以外の六隻で迎撃する……。ただ……」


 アンネリースは顎に手をやって眉を歪めて言う。


「……この……駆逐艦母艦は……、こちらの迎撃を避ける形で迂回する可能性が高いな……。あの艦艇は鈍足だから高速艦が待つ真正面からの突破はしないだろう……」

「そちらにも艦艇を分けるっすか?」

「いや……、ア(・)レ(・)は——駆逐艦はやたらと数が多いから全艦で当たらないと取りこぼす……。だから……」


 ——あえて後回しにする。


「……!」

「アタシらは戦列砲艦処理を速攻で終わらせて反転……、駆逐艦を迎撃する……。それまでには他の艦艇もあらかた処理して……、駆逐艦迎撃に集中できる状態にしろ……。いいかみんな……」


 ——殲滅速度が鍵だ! 駆逐艦展開が始まったら全突撃艦ですべて落とす! 補完艦艇が残っている場合でも突撃艦は駆逐艦殲滅に集中しろ!!


 アンネリースのその言葉に艦内の全員が緊張した面持ちで頷いた。



 ◆◇◆



『第一段階』


 海戦開始直後、ヴェロニア艦隊は「数」で戦線を押し広げようとし始めました。

 ヴェロニアにとって何より重要なのは「迅龍を逃がさないこと」です。だからこそ、「アンネリース艦隊を全滅させてから迅龍を追う」などとは考えません。

 そうしてヴェロニアは艦隊を複数方向へ展開し、そこからの迅龍追撃を図ります。駆逐艦母艦を迂回させてそこから駆逐艦展開を行い迅龍追撃へと繋げる考えでした。

 どこか一部隊でもアンネリースの阻止線を突破して迅龍へ到達すればヴェロニアの勝利は確定します。

 それに対しアンネリース艦隊は、突撃艦隊を2つに分けて速攻殲滅を図ります。

 相手は防衛のための突撃艦を喪失している状態、もはや突撃艦をそれぞれの単艦では落とせない状態でした。

 だからこそ、高速砲艦による支援を受けながら、ヴェロニア艦隊所属艦艇を翻弄しつつ撃沈してゆきました。



 ◆◇◆



 迅龍艦内にてジェレミアの声が響く。


「アンネリース艦隊……、ヴェロニア艦隊と交戦——。ふむ……、リヴァイアサン級突撃艦、及びワーム級高速砲艦、それぞれに——敵戦列砲艦と高速砲艦のデータリンクによる高度管制砲撃の被害を受けたようですが……。さすがアンネリース……、戦列砲艦へ向かった二隻の突撃艦によって戦列が崩壊してゆきますよ……」

「たしかそこら辺には、あのヴェロニアの旗艦アガルタがいるはずだが?」

「アガルタは……、どうも簡易補修の後に前進してデータリンクの支援をしていたようですが……。アンネリースの旗艦バハムートの側面攻撃を食らって、大破した後に後方へ避難しましたよ」


 それを聞いて少し安堵する艦内の全員。しかし——、


【……みんな……、艦隊戦の領域とは別方向から駆逐艦の機影を確認……。直線機動は比較的鈍足だから追いつくまでには時間がかかるけど……】

「警戒が必要だな……」


 ティアナのその警告に、ロバートは緊張した面持ちで答えた。



 ◆◇◆



『第二段階』

 

 ヴェロニア艦隊は戦列砲艦をあらかた失い、旗艦アガルタも大破後退を余儀なくされました。

 しかし、だからとてアンネリース艦隊も無傷とは言えず。多数の艦艇による複数方向からの集中砲撃によって、無傷の艦艇は存在しない状態におこまれ、そして中破に至る艦艇も出始めました。

 そして——とうとう、駆逐艦母艦より駆逐艦八隻が展開して【迅龍】追撃にかかります。アンネリース艦隊旗艦バハムートは一足先に駆逐艦母艦に迫って、それを大破——そして爆沈へと追い込み、そのままの勢いで駆逐艦の殲滅に入りました。そうして、リヴァイアサン級突撃艦の機動力は若干劣る敵駆逐艦を追い込んでゆきますが、それに集中する各突撃艦への敵カナン級高速砲艦の集中攻撃がダメージを蓄積させてゆきます。第一段階の時点で二隻の撃沈を数えていたカナン級高速砲艦ですが、残りの三隻は十分な攻撃火力を残しており、ワーム級による攻撃を受けながらも奮闘して……。



 ◆◇◆



 その時、アンネリース艦隊旗艦バハムートの艦橋にリヴァイアサン級突撃艦一隻の爆沈報告が入った。

 その直前にはカナン級高速砲艦と撃ち合っていたワーム級高速砲艦一隻が爆沈し、もう一隻が大破して後退を余儀なくされていた。


「……ち」


 アンネリースは失われた仲間を想って舌打ちする。しかし——、


「ここからが正念場だ! 気合入れろ!!」

「はい! 姉さん!!」

 

 そうして、艦橋に——心強い漢達の声が響いた。



 ◆◇◆



『第三段階』


 そして【迅龍】がジャンプポイントに到着、ジャンプ航行の準備に入ります。

 無論、それをさせじと駆逐艦残存四隻——、そしてカナン級高速砲艦残存二隻が迫ってゆきます。

 迎撃するアンネリース艦隊は、旗艦バハムートと僚艦共に中破して機動性が落ちた状態、残るリヴァイアサン級突撃艦一隻、そしてワーム級高速砲艦の残り二隻もいくらかの損傷を受けて機能不全を起こしていました。しかし、二隻のリヴァイアサン級が駆逐艦三隻を撃沈、ワーム級高速砲艦がカナン級高速砲艦の一隻を撃沈、もう一隻を撤退に追い込みます。

 そして——、



 ◆◇◆



 【迅龍】のブリッジにティアナの緊張した声が響く。


【ジャンプドライブ起動——、これより亜空間軌道へとシフト……、一路、惑星グシオン付近のジャンプアウトポイントヘ向かいます】

「頼む!」


 そう声を上げる瞬間にも、高速で迫る一隻の駆逐艦が見えている。このままではジャンプ完了前に軌道砲の狙撃を受けかねない。


「……く」


 もはや祈るしかない【迅龍】のクルーらは、目をつぶって時間がすぎるのを待った。

 ——そして……、


 「——!」


 ジュレミアがその瞬間笑顔になって喜びを表す。

 近づいてきていた駆逐艦が——、アンネリースの旗艦バハムートの砲撃によって爆沈していた。

 思わずその場の全員がその艦に向かって敬礼する。


 ——そして……、【迅龍】は無事、その星域から離脱したのである。



 ◆◇◆



 後方ですべてを見ていたヴェロニアは苦虫を噛み潰したような顔でその手を座席に打ちつけた。

 今回の被害は甚大——、旗艦アガルタを除いて、カナン級高速砲艦一隻、レムリア級戦列砲艦一隻、そして50万t級輸送艦のみが生き残って、すべて失われてしまった。

 実のところ、ヴェロニアは第二段階の時点で撤退すべきと部下に言われていたのだ、——が、


 ヴェロニアはそのプライドと配下を捨て駒にする艦隊運用によって、——【迅龍】への攻撃を優先しすぎたのだ。

 艦隊全体の生存を考えず、高速砲艦を突撃艦への足止めに投入して消耗させ、駆逐艦に【迅龍】への強引な突撃命令を指示し、戦列崩壊後の戦列砲艦を前進させて射線を確保する、など無茶が過ぎたのである。

 これはアンネリース艦隊への火力集中とその消耗に繋がったが、アンネリース側がそれに耐えきったことで、ヴェロニア艦隊の編成上の長所が全部消えることになった。

 戦列砲艦は戦列を失い、高速砲艦は突撃艦と近距離戦を強いられ、駆逐艦は護衛なしで突撃し、駆逐艦母艦が戦場へ取り残される。

 ——まさに「各艦種が不得意な戦いを強制される」艦隊戦であった。


 不意にアガルタへ超光速通信が来る。

 それに出ると——それはあのアンネリースだった。


「よう……クソババア……。弱いものイジメを楽しみすぎて弱くなったな……」

「……」

「……まあ、このままじゃ終わらねえだろうから……。再戦を楽しみにしておいてやる……」


 そうして笑うアンネリースとの超光速通信を強引にカットする。

 ヴェロニアは血が出るどに唇を噛んで——、そして艦内に全軍撤退を命令した。

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