第七話「桃から…」
むかし、むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川に洗濯に行き、大きなももを拾ってきました。
そしておじいさんとおばあさんはさっそく桃を割ろうとしました。
すると、桃はひとりでにぱかっと割れ、中から可愛い可愛い男のあかちゃんが現れました。
赤ちゃんは、頭に二本の角、顔も体も赤く、虎模様の毛皮のパンツを履いていました。
そして傍らには棘がいくつも埋め込まれた鉄製のこん棒が置いてありました。
おじいさんとおばあさんは、困ってしまいました。
桃から生まれたのだから、「桃太郎」と名付けたいところでしたが、どう見ても現れた赤ん坊は「赤鬼」です。
桃太郎が鬼退治に行く話はよく知られていますが、赤鬼が出てきては、鬼退治に行けません。
桃から生まれた赤鬼太郎……。
これでは赤鬼太郎はどこに行けばいいのでしょう。
仲間の鬼を倒す話というのは倫理的、道徳的な問題をクリア出来る深い理由が必要です。
鬼に捨てられ、復讐する太郎の話になるのでしょうか。
赤鬼の赤ちゃんは、もうぶんぶんとこん棒を振り回し、出てきた桃を手始めに潰し、壁から囲炉裏からなんでもかんでも破壊して回っています。
まず、育てるところまで行くのも大変そうです。
おじいさんとおばあさんは顔を見合わせると、洗濯桶に赤鬼のあかちゃんを乗せて、手紙を中に張り付けると川に再び流しました。
赤鬼のあかちゃんは意外にもバランスよく楽しそうにこん棒を振り回しながら川の上を揺られていきます。
「無事にたどりつくんだよ~」
おじいさんと、おばあさんは手を振りました。
さてここは鬼ヶ島、とんでもないやんちゃな赤鬼の赤ちゃんがたどりつき、門を壊され、家を壊され大変です。
「全く誰だこんな大変なものを送ってきたのは」
赤ん坊が入ってきた洗濯桶には手紙にはこう書いてありました。
「前略、鬼ヶ島の皆様へ
桃に間違って入っていました。お返しします。また、もしそちらに間違って桃太郎が届いていましたら、こちらに送って下さい。
着払いでも結構です。住所は……」
おしまい




