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第十話「立派に育った桃太郎…」

むかし、むかし、生まれた桃太郎、おじいさんとおばあさんはそれはそれは大切に桃太郎を育てました。

しかし、桃太郎が思春期になると、どう間違えたのかすっかりぐれてしまいました。


「おいじじい!飯はまだか!」


ちゃぶ台をひっくり返して威張ります。


「鬼退治だと!誰が行くものかっ!勝手に決めるんじゃねぇ」


桃印のはちまきも、「日本一」と書かれた旗も蹴り上げて見向きもしません。


しかし、だんだんと鬼が悪さをしているという噂も広まってきました。

近隣の住人たちもそろそろと、期待して様子を伺いにくるようになりました。


おじいさんとおばあさんはたまらず、桃太郎にお願いしました。


「周りの目もあるし、そろそろ形だけでも鬼退治する気があるような感じで旅立ってくれないだろうか?」


「ああ?周りの目だと!俺様の命と周りの目とどっちが大事なんだ!このくそじじい!くそばばあ!」


暴れまわる桃太郎は、すっかり体格も良く、力も強いのでとても止められません。

おじいさんとおばあさんは慌てて外に逃げ出しました。


すると、様子をうかがっていた隣のおじいさんと目が合いました。


「え、ええと、うちの桃太郎がさっそく鬼退治の稽古をしているんですよ。私たちは邪魔になりますからね、外で待っていようかと」


おじいさんとおばあさんは、急いでとりつくろいました。隣のおじいさんは、それを聞くと手を打って喜びました。


「おお!それは素晴らしい!さっそく村中に言ってきましょう。うちの村からそんな勇者が誕生するなんて、なんて名誉なことなんだ。」


隣のおじいさんがさっそく村中に触れにまわるのを見送りながら、おじいさんとおばあさんは顔を見合わせました。


「どうしましょうおじいさん。」


「どうしようかねぇおばあさん…」


静かになった家の中を覗いてみると、桃太郎は畳の上に横になってぐうぐうと寝ています。


おじいさんとおばあさんは寝ている桃太郎の頭にはちまきを巻くと、日本一の旗をくくりつけ、きびだんごを腰に吊るすと、そおっと桃太郎を手押し車に載せて家を出ました。


桃太郎を起こさないようにそおっとそおっと連れ出すと、桃太郎を拾った川までやってきました。

小舟を用意して、桃太郎をそおっと乗せ、こっそり捕まえてあった犬とサルとキジも一緒に乗せました。


それからそおっと小舟から手を離しました。

小舟はゆりかごのようにゆらゆら揺れながらどんどん川をすべりおりて行きます。


後ろから村人たちの声がしました。


「おーい!桃太郎さんはどうしたかね?」


おじいさんとおばあさんは満面の笑顔で振り返りました。


「今旅立ちましたー!」


桃太郎を鬼退治に送り出すという重い使命をやっと果たせた二人は手を取り合って叫びました。

これで桃太郎のおじいさんとおばあさんの役目はひとまず終わりです。


おじいさんとおばあさんはさっそく荷物をまとめるとその日のうちに引っ越しました。

もう桃太郎は戻ってこないと思ったのです。


果たして桃太郎は、居眠りしたまま鬼ヶ島に到着しました。

そして、目が覚めたように自分の使命を思い出しました。


今は甘えた環境にはいません。

一人でなんとかするしかないのです。


桃太郎は力を振り絞り鬼退治を果たし、お宝を手に入れました。

そして村に帰って来たのです。


ところが、村中の人々に大喜びで迎えられた桃太郎でしたが、肝心のおじいさんとおばあさんはいませんでした。


桃太郎はおじいさんとおばあさんに育ててくれた恩返しが出来ません。


これでは昔話は終われないのです。

そこで、桃太郎はおじいさんとおばあさんを探す旅に出ました。


恩返しをしたいという桃太郎の言葉を聞いて、村人たちも応援しました。

そこで、引っ越し先のおじいさんおばあさんに、「桃太郎がお礼をしたがっているよ」と伝えに言ったのです。


しかし、おじいさんとおばあさん、お礼とは仕返しのことかと思い、またもや逃げ出しました。

桃太郎は探します。


おじいさんとおばあさんはまた逃げます。


こうして、桃太郎は今もおじいさんとおばあさんを探し続けているそうです。

どこかで会えて誤解が解けるといいですね。



おしまい

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