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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
29章 白き神の聖女

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「ササッち。あんなに堂々と言われると陽子さんが焦るのだけど」


 オルクスを置いて帰ってきたシェリーはリビングで本を読んでいた。


 最近、シェリーの座椅子かと言いたくなるカイルの膝の上でだ。


「別に嘘は言っていません」


 そのシェリーの向かい側で、寝そべっている耳が黒く長い犬のキャラクターのTシャツを着ている陽子が、黒く泡立っている飲み物をストローで飲んでいる。


 どう見てもこの世界のものとは思えない飲み物だ。そもそも黒い飲み物は一般普及はしなかったというべきだが。

 あと黄色いキャラは鳥なのかどうなのかという疑惑があるのだが。


「でも、まだ出来上がっていないんだよ。陽子さん最近頑張りすぎだとおもうんだよ」

「でも予定の日にはできあがりますよね?」


 シェリーは何かを陽子にお願いしているようだ。

 確かにリオンの呼びかけにも忙しいと断っていた。


「シュロス君がサボるから、陽子さんの作業も遅れているんだよ」

「オリバーにも言えば……」

「ササッち。陽子さんを殺す気?大魔導師様に陽子さんが頼めるはずないよね」

「だったら、シュロスさんを脅して動かすしかないですね」


 何の話をしているのかわからないが、また恐ろしい悪巧みをしているようにしか聞こえない。


「はぁ、そんなことでシュロス君がうごいてくれるなら、こんなに陽子さんは苦労していないよ」


 そんな話をしている二人の耳に、廊下を走る音が聞こえてくる。


 そして勢いよく開くリビングの扉。


「ヘラクレス16号だ!」


 その噂のシュロスが、黒い何かを持ってリビングに入ってきた。


「見てくれ!今度は飛ぶんだぞ!」


 その言葉と同時にシュロスが持っていた黒い何かが、羽音をさせながら飛び立った。


「あれだよ。あれ」


 陽子は黒いシュワシュワの液体を飲みながらシュロスを指す。

 相手にすらしたくない感じだ。


「カイルさん。あれを壊してください」


 シェリーも動く気がないのか、座椅子化しているカイルに壊すように頼む。

 するとカイルが視線を向けただけで、飛んでいる黒い物体がシェリーと陽子の間のテーブルの上に落ちた。


 雄々しい立派な角が頭部と胸部から生えている虫だ。それが凍りついた状態で転がっている。


「のぉぉぉぉぉ!ヘラクレスぅぅぅぅぅ!」


 白髪の青年がテーブルの上に落ちている虫に駆け寄る。それを手にとった瞬間に、ガラス細工のように砕け散った。


「酷い」

「生態系を壊すようなものを創らないでください」


 シェリーはクソ虫でも見る目でシュロスに視線を向けた。


「何を言う。これは佐々木さんの弟が学校から帰ってくるというから作ったんだ」

「そんな生物は普通にいませんので、創らないでください」

「なんだと!男の子と言えばムシキングだろう!」

「何ですか?それ?」


 どうやら、シュロスはシェリーの弟が長期休暇で戻ってくるというのを、誰かから聞いたらしい。

 それで、子供が喜ぶものをと思ったようだが、完璧にズレていた。


「それよりも結界の基盤の数が足りていないと陽子さんが言っているのですが?」


 結界。これは王都の第一層と、第二層の結界のことだろう。

 シェリーはもうできているという感じで口にしていたが、どうやらまだ完成していなかったようだ。


「あ、それはエルフっぽくないエルフに任せた!」


 エルフっぽくないエルフ。それはスーウェンのことだろうか。

 シュロスとしては思っているエルフ像ではなく残念な感じだったが、最後には納得したと思っていたのだが。


「シュロスさんがやる気をだせば、一瞬で創れると思うのですが?」


 シュロスの能力は創造なので、本気をだせば今の瞬間にも出来上がるはずだというのが、シェリーの見解である。


「いや、俺の今やるべきことは、世話になっている家主の僕ちゃんに媚びを売ることだ!」


 どうどうと言うシュロスに、シェリーと陽子のため息が重なる。

 シュロスの中でルークがどんな存在になっているのかは不明だが、ある意味間違いではない。


「シュロス君。今、弟君は反抗期だからいらないことはしないほうがいいよ」


 その陽子の言葉に、今まで何がいいのかと思考しているシュロスの表情がスッと消えた。


「ああ、そっか。だったらエロほ……」


 陽子が床から鎖を伸ばして、シュロスをぐるぐる巻にした。それ以上喋らないようにだ。


 その鎖の隙間を縫うようにシェリーが黒刀をシュロスに向って突き刺した。

 躊躇することなく、シュロスの心臓部分に突き刺したのだ。


「シュロスさん。私のルークにおかしなものを与えるのであれば、このまま刀を横に引きます」


 シェリーは本気だった。神殺しとしてシュロスの存在は重要だったが、そんなものよりルークに怪しいものを与えようとする存在を抹消することに戸惑いはなかった。


「佐々木さん。思いっきり突き刺さっているんだけど?」


 だが、シュロスは陽子の鎖を攻略したのか、その存在を消滅させ、シェリーに話かける。


「あと、弱点はそのままにしておくのはプレイヤーとしてないからな。それはもう、俺の弱点じゃない」


 シュロスは、以前核となっていた青い魔石は既に存在していないと口にする。

 これでは本当にシュロスは無敵の存在になってしまったかのようだ。


「そうですか。では、今日の夕食は硬いパンだけで良いですよね」


 するとシュロスはシェリーの黒刀の刃を持って引き抜き、床に土下座をする。


「すぐに結界の基盤を作るので、晩ごはんは普通に食べたいです」


 シェリーがいない間、この世界の料理事情を知ってしまったシュロスは、シェリーに料理の全権を握られているようなものだった。



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