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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
28章 穢れと鬼

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「俺が守れる範囲ってそんなに多くないって、何度も言っているよな」

「エンなら大丈夫」

「説得力ねぇー!」


 炎王がヴィーネの言葉に突っ込んでいる。

 大した理由もなく、シェリーの言葉に乗るように言ったヴィーネは、楽しそうにキャラキャラと笑いながら宙を飛んでいた。


「ああ!わかった!やればいいんだろう!やれば!」


 何故か炎王が逆ギレしていた。

 このようなことを繰り返していたので、多種族の長という地位になってしまったのだろう。


「エンも最近楽しそうで、ヴィーネも嬉しい。闇の子も同じ。いつも世界がキラキラしている。そうじゃないと、どんより」


 楽しそうなヴィーネとは正反対に、炎王は肩を落として大きくため息を吐いている。


「はぁ……佐々木さん。その話を受けるが、事前に打ち合わせをさせろ!あいつ、本気で面倒なんだからな!」

「八百長ですか?」


 炎王は事前に事の成り行きを決めるように言ってきた。それをシェリーは嫌そうに八百長をするのかと聞く。


「当たり前だろう!」

「私個人では、レイグレシア猊下と連絡をとる手段がありません」

「いや、俺もないが?」

「それにユーフィアさんの知り合いとバレていますし」

「それ、何が関係するんだ?」

「エルフ族殲滅事件を引き起こしたそうです」

「……ああ、変革者排除思想な」

「勇者と聖女の娘というのもバレているので。これは聖女誘拐事件を引き起こしたエルフ族が勇者にボコボコにされた事件です」

「……ああ、聖女関係な」

「秋口ぐらいにオリバーが、レイグレシア猊下をボロ雑巾のようにしたので、できれば私が連絡を取らない方がいいと思います」

「最悪じゃないか!」


 スーウェンの父親であるレイグレシアとの関係は最悪と言っていい。だが、あちらも教会のトップを名乗っているので、聖女のお披露目パーティーには出席しなければならないということだ。


「そんな関係で、よく俺に喧嘩を売れとか言うよな」

「今更ですし」


 今更という言葉が、全てを語ってしまっていた。これ以上悪化しようがないということだ。

 オリバーが、レイグレイシアを魔術を使わずに素手でボコった時点で、回復しようがないほど最悪である。


「ああ……仕方がないから、モルテ王を紹介してくれ」


 全てを諦めたような炎王から声が漏れ出ている。

 炎王自らレイグレイシアと連絡を取ろうとしないところを見ると、炎王との関係も最悪ということだ。


「あの……父となら……」


 そこにスーウェンが、父親と連絡を取ることができると口を開こうとした。


 だが、シェリーはカイル越しに振り向き、口元に人差し指を立てて黙るように示唆する。

 取る必要がないと。


 これはもしかすると、シェリーが炎王とモルテ王と出会わすために仕掛けたのだろうか。

 以前から炎王にモルテ王と会談するようにと言っていたのだ。

 ありえるだろう。


「さて、ヴィーネ。そろそろ都に戻れ、俺もシエンの様子を見たら明日には戻る」


 何故か炎王は、ヴィーネに先に戻るように言った。一緒に戻ればいいのではないのか。


「えー!エンがいないとつまらなーい!」

「アイスが欲しいだけだろう!」


 精霊は人のしがらみがないので、どこに居ても問題はない。

 楽しいというものが基準であるなら、アイスという楽しみが得られないのは、ヴィーネにとって『どんより』にあたるのかもしれない。


 炎王を背後から捕まえて、イヤイヤと首を振っているヴィーネ。だが、そのヴィーネの首根っこを捕まえて、引き剥がす炎王。


「いつも言っているだろう!ここはシエンがいるから来ては駄目だと」

「えー。やだやだ」

「ヴィーネ!」

「凍らすよ。全部凍らすよ」

「そういう脅しを、口にするなと言っているだろうが!」


 イヤイヤと首を振りながら、脅し文句をいうヴィーネ。そのヴィーネの口に棒がついたアイスを突っ込む炎王。


「前から言っているよな。シエンの影響を及ぼす範囲が広いと……」


 そのとき雪山の方から地響きが聞こえてきた。地震かと思える音だが、地震とは違った揺れが屋敷を襲っている。


「まさか雪崩が!」


 炎王が慌てて立ち上がる。そして足早にシェリーの横を通り過ぎた。

 庭にそろえて置いてある雪駄を履き、雪の庭に降り立つ。


 シェリーも立ち上がり、炎王の後を追うように庭に降り立った。

 そこから見える景色は、高くそびえた雪山から煙のようなものが沸き立ち、細かい振動が続いている。


「ちっ!炎王が氷鬼などあそこでするから、雪崩が起きているではないですか」

「いや、あの山の雪は溶けるはずはないのだ。だから雪崩が起きることもない」


 炎王はおかしなことを口にした。雪は溶けるものであり、雪が溶けないことのほうがあり得なかった。


 そう、ここは炎国の南の端にある『南極』という地名の場所に過ぎないのだから。



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