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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
28章 穢れと鬼

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 翌朝、シェリーはシエンを前にして、多種多様の素材を並べていた。


「どのような物が好みでしょうか?お守りのように常に持ち歩くものにつけるか。アクセサリーのように肌につけるものか。もしくは衣服等に刺繍するか。どれがよろしいですか?」


 素材の中でも異質なのが、アクセサリーのカタログ冊子だった。好みのものがあれば、ここから選べばいいというものだ。


 どれがいいかと言われるも、シエンも何がいいのかわからず、近くにいる光の巫女をチラチラと見ている。


 昨日もそうだったが、自分の意見が言えない者の行動だ。

 唯一シエンが自ら行動したことと言えば、シェリーに己の聖女になって欲しいと言ったことのみ。


 いや、昨日は己の意見を言ったがために、ひどい目にあったので、誰かの意見に沿おうとしているのかもしれない。


 だが、この室内にはシェリーとシエンと光の巫女しかいない。

 炎王とシェリーの番たちの姿はなかった。だから、兄であるリオンに対して怯える必要はないのだ。


「あの……凄く地響きが響いてくるのですが、雪崩とかきませんよね」


 光の巫女が、断続的に続いている地響きにおびえていた。未だに雪深いここでは、山からの雪崩に敏感になっているのだろう。


「さぁ?氷鬼をしてくると言っていましたが、どの程度までルールを守れるかは不明なので、なんとも言えません」


 氷鬼。遊びの中で、戦う要素を取り入れたらいいというクロードの案を採用しているのだろう。


 だが、氷鬼というと、仲間との協力が不可欠になってくる。協力するという時点で破綻していないだろうか。


「私は光魔術しか使えませんので、防御結界にも限度があるのですが……」

「何かあれば、炎王が対処するでしょう。それでシエンさんは、どれがお好みですか?もたもたしていると、うるさいのが戻ってくるので早くしてください」


 シェリーが浄化の護符を作ったと知られれば、プラス五つ追加されることは必然になる。

 それを避ける為に、シェリーは炎王に言って、約束の修行とやらを先にするように言っていたのだ。


「ええっと……お……お守りで」

「そうですか。一応、お守りの袋の中に、ユニコーンの骨を砕いたものをいれておきます。浄化作用の向上になりますので、中身はバラさないでくださいね」


 シェリーはそう言って白い粗い粉を紙に包みだす。中身がこぼれないように器用に紙を折っていった。


「それで中身がこぼれないのですか?何か魔術で保護をするのですか?」


 光の巫女が興味津々で聞いてきた。

 だが、シェリーは無言のまま手を止めない。


 シェリーにとっては……佐々木にとっては、スパイスを少量計っておくのに粉薬の包み方を使っていただけだ。

 だから、大したことはしていない。


「少し黙ってください」


 浄化の魔術を物に込めるということをしたことがない。強いて言うなら聖水ぐらいだ。


 その聖水と同じような効力を持続的にもたせられるかは、やってみないとわからない。

 だから集中したい。雑音は排除したいのだ。


「申し訳ございません」


 光の巫女は、そう言って少し距離を取るものの、シェリーの手元に釘付けだ。


「この袋の中にいれるので、多少のことでは中身は漏れません。ですが、このお守り自体に浄化の効力をもたせますので、最悪中身がこぼれても問題ありません」


 シェリーはそのように説明して、聖水を作る要領で、お守りに浄化の効力を施した。


聖なる光(ジルレート)


 シェリーが両手に包むように持つ。小さな四角い袋状になった布が、ほのかに光を帯びる。


 その状態をシェリーは凝視し、ホッとため息をついた。どうやらシェリーの目で確認して、成功していたのだろう。


 シェリーはお守りの紐を手にもち、シエンの方に差し出した。


「いつも持ち歩いているものに、つけてください」


 そう、何も問題はなかった。シエンにお守りが渡るまでは。いや、渡った直後もだ。


「ありがとうございます。聖女様」


 シエンが礼を言い、お守りをどこにつけようかと紐の部分を持った瞬間。

 紐が途中でブチッと切れたのだ。


 別に使い古したお守りではない。炎国の光の女神を祀る神社のお守りだ。

 光の巫女たちが、手作りで作っているありがたいお守りだ。


 だから、簡単に紐が切れるような代物ではない。


 そして紐から解放されたお守りの本体は、板の床に落ちた。その反動からか中身が飛び出す。シェリーが、簡単に開かないようにしていた紙の包が、中身をぶちまけながら宙を舞っていた。


「え?」

「あああああああ」


 何が起こったのか、頭がついていけないシェリー。

 思わず、散り散りになっていく白い粒をかき集めるように、手を出す光の巫女。

 蒼白の顔で、手に持った紐を見つめるシエン。


「もしかして、不運全振りとか言いませんよね」


 屋敷内にいなかったはずの黒い猫が、室内を横切っている。それを見てしまったシェリーは、頭が痛いと額に手を置くのだった。



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