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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
28章 穢れと鬼

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 翌朝の朝日が昇った頃には、シェリーはシエンの浄化をしていた。


「朝早くから悪いな」


 炎王がおにぎりを持って、離れにやってきた。シエンの側にはシェリーと光の巫女がついており、シェリーの番たちは側にいなかった。


「初代様!お食事は私が用意しますと申しておりましたのに」


 白い着物に赤い袴を履いた銀髪の女性が慌てて、手に持っていた桶を床に置き、炎王の側に行く。


「シエンの世話をしてくれているんだ。おむすびぐらい作れるぞ」

「梅干しと鮭がいいです」


 おむすびを持っている炎王にシェリーは自分の要望を口にする。それはおにぎりの具材だ。


「あ……梅干しは人気がないから、作ってないな」

「おむすびと言えば梅干しでしょう」

「それじゃ、塩むすびに梅干しをつけるか」


 炎王はどこからか梅干しのパックを取り出して、白いおむすびの真ん中に箸でゴリッと赤い梅干しを突っ込んで、シェリーに差し出す。


「ありがとうござ……」

「何をシェリーに与えているんだ?」


 シェリーがお皿からおむすびを取ったところで、炎王の肩に手が置かれた。


「君たちは、そこの庭で訓練をしていたんじゃないのか?」


 炎王は呆れ顔で後ろを振り返って、カイルに言う。

 そう、シェリーの側にいなかったのは、離の障子の扉を開け放った状態で、日課の訓練をしていただけだった。


 そして、炎王がやってきたことを目ざとく見つけたカイルが、炎王の背後に近づいたのだ。


「あと、今日の朝食はこれだから、好きなように食べろ」


 炎王は大皿に盛られたおにぎりを指しながらいう。


「ちなみに一つだけハズレがある」


 意趣返しのように、おにぎりの一つになにか仕込んでいるようだ。炎王はニヤニヤしている。

 そう、散々彼らから関係ないのに嫉妬され、殺気をぶつけられてきたのだ。ちょっとした仕返しを仕込んだのだろう。


「ちなみに中身は何が入っているのですか?」

「わさびだ!」


 シェリーの問いに堂々と答える炎王。


「これが、当たりです。お醤油が欲しいですね。あと玉露と」

「はっ!さっきの梅干し!佐々木さん悪い!」


 若干涙目のシェリーが炎王に訴えるのだった。


 梅干しわさびおにぎりを食べきったシェリーは出された玉露を飲みながら言う。


「あと一日ぐらいで、浄化は終わりそうです。あと気になったのですが、シエンさんは白髪ですか?」


 シェリーは寝台に横になっている少年の伸びた毛先を指している。

 髪は鬼族や炎王に似て、黒色だと思っていたが、浄化を進めていくと髪先が白く変化したようだ。


「ああ、白龍だ」

「その龍人のシステムが良くわからないのですが?」


 シェリーに食後のケーキを差し出しながら答える炎王。

 意趣返しのハズが、シェリーにわさび入りおにぎりが当たってしまったことに、落ち込んでいるようだ。いつもの覇気がない。


「いや、アマツが水龍だからそっちの系統がでたのではないのか?」

「何処が関係するのですか?」


 どうにか理由付けをしようとしたらしいが、どう考えてもアマツが水龍であることは関係ないだろう。


「これって、手で食べるのか?」

「そうだが、それがどうした?」

「パンと同じと思えばいいのですか?」

「そう言えば、これの小さいのを、シェリーが作っていなかったか?」

「ん?なんか目とか口とかついているやつだったか?」

「同じように見えませんが?」


 以前佐々木が表に出てきたときにやらかしてしまったことを、炎王の背後で口にしているグレイたち。


 それが聞こえてきたシェリーは両手で顔を覆ってしまっていた。佐々木がやらかしたことだが。


「そう言えば、あれから作ってくれないね」


 シェリーの横を陣取っているカイルが疑問を口にする。


「あれは、子供がご飯を楽しく食べるようの料理だから、普通は出さないだろうな」


 答えないシェリーの代わりに、その場を目撃していた炎王が答える。ルークの為に作っていた料理を無意識で佐々木が作っていた理由をだ。


「と……取り敢えず、白髪でいいのでしたら、それでいいのです」


 シェリーは両手で顔を覆ったまま言う。シェリーとしては珍しい光景だ。それほどシェリーとしてはやらかした感があったのだろう。


 そして切り替えるようにシェリーは大きく息を吐き出して、浄化の続きを始める。


「シェリー。ケーキ食べる?」

「今はいいです」


 炎王を挟んだ向こう側でキャラクターを模したおにぎりや、料理の話が続いているので、現実逃避をするようにシェリーは自分のやるべきことを再開したのだ。


「俺はそれを食べていないが?」

「リオンは、いなかったからな」

「仕方がないですよね」


 そう、そのときはまだリオンがカークス邸にいなかった為に、その話を知らないので根掘り葉掘り聞いてるのだ。


「リオンには、佐々木さんにキャラ弁を作ってもらったから、食べているぞ」


 そこに炎王の爆弾発言が降ってきた。


「ちょっとリオンどういうことだ?」

「キャラ弁って何ですか?」

「知らないふりしていたってことか?ちょっと表に出ろ」

「キャラ弁?」


 キャラ弁と言われても、リオンの中では黄色いネズミのキャラクターのオムライス弁当と重ならないのだった。


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