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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
28章 穢れと鬼

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「フォッフォッフォッ。グローリアの魔導師長殿からすれば、子供騙しのようなものぞ」


 イスラは先程のワザを使うことを拒否した。もしかしたら、あまり手の内を見せたくないのかもしれない。


「子供騙しとは謙遜をいう。ヨーコが支配するこの場に、干渉することなど軽々しく出来ぬものだ」

「大魔導師様も、思いっきり干渉しているけどね!」


 陽子がこの場から逃げようとして、逃げられなかったことを言っているのだろう。だが、オリバーもこの地に何かと施している手前、人のことを言えないのであった。


 いや、普通から逸脱したと言いたいのだろう。


「因みに先程の術だが、『ウェンニパス』と『ヴズリクシス』の融爆のようだったが……」


 オリバーは二つの魔術を合わせたものではないのかと言う。そう、話をしているのを離れた位置で聞いているシェリーは、地面に何かを書き始めた。


「設置型。事前に魔石に刻んだ術式を発動する?それだとバレるから、複雑ではなく魔術の範囲で収まり……複数を合わせることで、互いに干渉させて融爆?」

「側で聞いていると、恐ろしい術を作っているようにしか聞こえないな。……よぅ。イスラとやりやっても余裕だったよな」


 シェリーが新たなスキルを組むために考え事をしているところに、カイルが戻ってきた。


 もちろん竜化を解いている。


 その姿を見たクロードは、ニヤニヤとした笑みを浮かべていた。


「別に互いが本気ではない。あんなものだ」

「それはそうだ。竜人に本気になられたら俺達、獣人はなすすべもないからな」


 クロードはお手上げだというふうに、両手を上げる。敵意はないとも受け取れるが、ふざけているようにも見えてしまう。

 実力がある者がなにを言っているのかと。


「これなら行けるはず!」


 そこに地面に両手をついたシェリーが声を上げた。


「『銀鉤の影裏から伸びる雷の矢』」


 だが何も起こらない。

 そのことに、肩がフルフルと震えだすシェリー。


「これも!これも駄目!炎王ー!ムカつく!」

「ササっち。また怒っている。仕方がないよ。かぶっちゃうことなんて、いっぱいあるよね」


 怒りのあまり叫んでいるシェリーを慰める陽子。これは、今まで何度も繰り返された光景なのだろう。


「何故に、俺がムカつかれているんだ?」


 ここにいないはずの人物の声が聞こえてきた。


 すぐさま、視線を巡らすシェリー。その瞳には、黒髪の着物風の衣服を着た人物が、屋敷の方からこちらに向って来ているのが映し出される。


 地面からゆらりと立ち上がったシェリーは、地面を蹴って炎王の目の前に立ちはだかった。

 それも完全に目が据わっている。


「先程から新規で作るスキルが、全く発動しないのですが?」

「いや、俺の所為にされても困るな。佐々木さん」

「魔術創造の所為ですよね!」

「そういうこともある……佐々木さん。首が締まるから手を離してもらえないか?」


 炎王の言葉に胸ぐらを掴んで締め上げているシェリー。そういうこともあると言われて、イライラが限界に達したのだろう。


「は?」


 地の口が悪いシェリーが、でてきてしまっている。


「私が苦心している理由のほぼ全ては、炎王の所為ですが?」

「言い過ぎだよ。佐々木さん」


 言い過ぎだという炎王だが、シェリーのスキル創造の作成条件を阻害しているのが、魔術創造であることは間違いはない。


「ちょっと話し合いましょうか。シュピンネ族の魔術の技を模した魔術を創っていますよね。詳細の発動条件を洗いざらい吐き出してください」

「話し合いの状況じゃないけど……」


 胸ぐらを掴みながら話し合いという言葉を使うシェリーだが、脅しと捉えられる状況だった。


「うわぁ。佐々木さんって、誰にでもそうなんだ」


 そこに何故か、シュロスの声が聞こえてくる。


「今日は地下にこもっているように言ったはずですが?シュロスさん」


 炎王の胸ぐらを掴みつつ、シュロスを睨みつけるシェリー。


「いや、見たことない種族がいたら興味津々だろう!それに、急いでいるようだったから、裏庭に案内したほうが早いだろうと思ったというのもある」


 俺は偉いぞと言わんばかりのシュロスだが、シェリーは白い目を向けている。普通は客人は裏庭には通さないと。


 だが、その客人の胸ぐらを掴んでいるシェリーが、言葉にすることはなかった。


 そんなシェリーを背後から引き寄せる者がいる。カイルであった。

 いつまで己の番に手を出しているんだと言わんばかりに殺気立っている。


「はぁ、俺は悪くないからな。絡んできたのは佐々木さんの方だ」

「うん。うん。俺も見ていたぞ」


 シェリーに、何かと絡まれている二人が並んで言っていた。


「お!もしかして龍の旦那じゃないか!」


 そこにクロードが混じってきた。


「覚えていないかもしれないが、龍の旦那からもらった刀。あれには本当に助けられた。もう一度会ってきちんと礼を言いたかったんだ」

「……佐々木さん。またアマツのときと同じか」


 クロードを見て、すぐに誰か理解した炎王は、今度は逆に白い目をシェリーに向ける。


「なんだか酷いメンバーが集まっちゃったよ。収集がつくのか陽子さん、心配」


 そんな中、陽子は巻き込まれないように、遠くで一人傍観者をしているのだった。




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