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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
28章 穢れと鬼

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「あ!陽子さん感知していないのに、ダンジョンポイントを搾取しているよ!」


 考えこんでいた陽子が、突然大声をあげだした。その声に思わずクロードは三角の黒い耳をヘニョリと倒す。


 こういう姿をみると、なんだかんだと言って狼人なのだと感じてしまう。


「こっち経由で感知しろってこと?難しいなぁ。新たに感知方法を確立しないといけないってこと?」


 陽子はブチブチと言いながら、カイルとイスラの戦いをそっちのけで、何かをし始めた。

 ただ傍からみれば、空中に手を出して怪しい動きをしているようにしか見えない。


 しかし、陽子としてはイスラを認識していないのに、ちゃっかりとダンジョンポイントを取っていたらしい。

 いや、これは王城の地下でアーク族の遺産の中枢に入るときにも陽子は言っていた。


 だが、言った本人は言っている人数と、その場にいる人数の違いに気づいていなかったようだ。


「やっぱり竜人相手ではイスラの能力は役に立たなそうだな」


 勝手に何かをしだした陽子を放置して、クロードはイスラの部の悪さを指摘する。


 いや、シェリーを勝利条件にいれた時点で、カイルは負けるわけにはいかず、容赦というものを捨てていた。


「竜人のおっかねぇところは、剣で切れないその表皮だよなぁ。それにあの物理法則を無視した力強さ。敵にはしたくないなぁ」


 クロードがそう評価する竜人のカイルと言えば、全身が白銀の鱗に覆われていた。アマツとは違い人の姿ではあったものの、スーウェンの結界を切り刻んだ目に見えない糸をカイルの皮膚は弾いている。


 そしてイスラは、裏庭になぜ存在するのかわからない大きな岩石や巨大な丸太を糸で絡め取って攻撃をする。

 しかし、カイルはイスラが操る糸を掴み、攻撃そのものを無効化した。


 これではイスラの勝ち目など無いに等しい。流石世界最強種族の竜人と言えばいいのか。


「あの糸って普通は切れないんだけどなぁ」

「感心していないで、ワンコくんも参戦したら?」


 陽子の作業は終わったらしい。分が悪いイスラの援護に回ればと言っている。

 シェリーの味方である陽子が、言うことではないだろう。いや、シェリーを思うがこそ、カイルを負けさせようとしているのか。


「竜の兄ちゃんに、ボコボコにされればいいのに」

「そっちかよ!」


 いや、ただ単にクロードに対する嫌がらせだったようだ。


 そのとき突然甲高い音が聞こえた。なにかの悲鳴にも聞こえなくもない。

 強いているのであれば、大気が鳴いている。


 それに伴いどこからか冷気が漂ってきた。


「はっ!ササっち!結界!」


 シェリーに声をかけるも、シェリーはカイルとイスラの戦いに見入っているので、陽子の声が届いていないのか反応しない。


 慌ててその場から地面に逃げようとする陽子。


「うっそ!逃げれない!ダンジョン内への移動!……なにこれ!陽子さんの支配下のはずなのに!」


 陽子は、ダンジョン内に逃げれないことでパニックを起こしている。


「ワンコくん!陽子さんが逃げれないよ!陽子さん激弱なのに、死んじゃう!」


 自由に移動できなくなった陽子は、クロードを盾にするように回り込んで、身をかがめている。


「いや、陽子さんは普通に強いだろう。それにここまでは攻撃は届かない」

「うそうそうそ。寒いし、なにかゾクゾクした感じが収まらないし」

「風邪か?」

「ダンジョンマスターは、病気なんてしないの!」


 クロードのツッコミに正論を答える陽子。ダンジョンマスターは人であって人ではない。

 だからレベルも存在しない。


 きらめく空間に、足元から闇が這い上ってくる相反する感じが襲ってきているのだ。


 その間でもカイルとイスラの攻防は収まっていない。イスラが地面に手をついたかとおもうと、空間が幾重にも爆ぜていく、それを避けることなくイスラに向って剣を振うカイル。

 いや、爆ぜた場所から氷の華のようなものが次々と出来ていく。これではどちらの攻撃なのかも判断できない。

 今の状況を理解できているのは、きっと戦っている本人たちであろう。


 そしてイスラが地面から手を離して、距離をとった瞬間に音がなくなり、何が起こったのかと陽子が顔を上げた。


「いたっ!」


 思わず耳を押さえる陽子。


 音が無くなったのではない。二人の攻撃が音を食らったのだ。無音の後に続く耳が痛いほどの爆音と衝撃波。


「何処が攻撃が届かないっていうの!」


 クロードを盾にしながらいう言葉ではないが、陽子にまで戦いの影響は届いている。


「だから、攻撃は届いてないだろう?これぐらいで叫ぶなよ」


 クロードが言うように直接的な攻撃は届いていなかった。そう、カイルとイスラが戦っていた場所には、巨大な穴が地面に空いている。


 攻撃ではない。ただの衝撃波。しかし、その凄まじさは目の前に空いた黒い穴が示していたのだった。


いつも読んでいただきましてありがとうございます。

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興味があればよろしくお願いします。


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