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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
28章 穢れと鬼

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「第二層にあったという結界はどこにあったのですか?」


 シェリーはオリバーが回収したいと言っていた結界のことをクロードに確認した。第一層の結界の上に立てられた壁を壊すことは流石にできない。

 しかし、第二層内で結界があったような痕跡は第三層と第二層を隔てる壁しかなく、それだとオリバーに諦めろというしかないという状況なのだ。


 だが、万が一にかけてクロードに確認してみたというところだろう。


「第二層の壁のところにあったはずだ。しかし、俺が軍に入った頃には、結界の痕跡もなにもなかったぞ。今更なにをする気だ?」


 やはり、第二層の壁の場所に結界が張ってあったらしい。


「その結界発生装置というものがあったはずですが、どうしましたか?」

「ん?四つあったものか?」


 結界発生装置。確かに結界を維持するために人の心というものを動力源にするのであれば、人の心を力に変換する装置があってもおかしくはない。


「あー?あれは、どうしただろうか?」


 不要な物でしかない壊れた魔道具など、記憶に留めることなどしないのだろう。クロードは首を捻っている。


 そもそも世界の記憶から構築されたクロードに、そのような記憶が残っているのかは不明だが。


「イスラ。覚えているか?」


 突然クロードがここにはいないはずの人物の名を上げた。


「さて?」


 だが、その呼び掛けに応えるように、クロードの背後に老人が立っていた。そう、シュピンネ族のイスラ・ヴィエントである。


「うぎゃ!」


 その存在を目視して慌てて地面に潜る陽子。どうやら、ダンジョンマスターである陽子は目視するまで、イスラの存在に気が付かなかったようだ。


「閣下、いつからそこにいらしたのですか?」


 そして、マップ機能を常時展開させているシェリーもイスラの存在に気がつくことはなかった。

 まるで、肉体を持つ無がそこにいるように、感知機能をすり抜けている。それがシュピンネ族だと言われれば、それまでだが。


「フォッフォッフォッ。クロードが小童(こわっぱ)どもを相手にしているぐらいからじゃな」


 ほぼ、最初からいたようだ。シュピンネ族の恐ろしいところはこういうところなのだろう。

 人に認識されずに、いつの間にかそこにいる存在。


「ったく、暇ならイスラが相手をしてやればいい」


 だが、クロードはイスラの存在に気づいていたようだ。


「それはお門違いというものであるな」


 見た目の年齢は違うが、長年の友であった二人は、この不可思議な状況を普通に受け入れている。それも当たり前の日常のように会話をしているのだ。


「それで、結界の制御装置はどこにあるのですか?」


 二人の会話に水を差すようにシェリーは、再度問いかける。


「第一層にあったものはそのまま残しているはずだ。機能している間はそのまま使おうという方針だったはずだ。第二層にその痕跡はあったものの、モノがあった記憶がないな」

「ふむ。スラーヴァルに聞けばわかるかもしれぬ。あれらは、我らよりもこの地に詳しいからのぅ」


 二人がいた時代は、それなりに国として形造られた頃だろう。手記でしか結界の存在は確認できておらず、彼らはその後に国を支えてきた者たちにすぎない。


 そう、この島が落とされたのは魔女が生きた時代のことだ。だが、地上にある島の残骸では一番新しいものとも言えた。


 だから、記録として残っている可能性が高い。神々が口を閉じる暗黒時代には存在していなかったのだから。


「第二層のものは存在しないと思った方がいいと」

「しかし、茶の一杯もでないのかのぅ」


 シェリーの言葉とイスラの嫌味が重なった。その言葉にふと視線をあげれば、老人であるイスラを立たせていたことに、シェリーは気がつく。


 いや、オリバーの結界を素通りする侵入者に出すお茶など普通はない。だが、イスラを敵に回すことは得策ではない。

 このシーラン王国で彼に逆らえる存在など居ないという現実がそれを示していた。


 そう、国王であるイーリスクロムでさえ、頭を下げる存在なのだ。


 この現状にシェリーは慌てて立ち上り、鞄から椅子を取り出して、クロードの隣に置く。


「失礼しました。お茶を淹れてきますので、少々お待ち下さい」


 シェリーは、慌てて屋敷の方に戻っていったのだった。



「地面に潜ったお嬢さんも一緒に如何かね?」


 イスラは、地面を見ながら陽子に話しかける。そこには既に陽子は居ない。だが、そこにいると確信しているかのように視線を外さなかった。


「黒髪のお嬢さん。別に食ったりはせぬので、出てきなさい」

「別に陽子さんは、、食べられるとは思っていないよ。それに陽子さんはお嬢さんといわれるほど、若くないよ」


 イスラが視線を外さずにいた地面から陽子の頭が生えてきた。それも凄く不満そうな顔でだ。


 そして陽子は地面から出てきたかと思うと、先程から何も話していないカイルの背に回る。

 まるで盾にするようにだ。


「さて、わしも疑問であったのじゃが、何故ゆえ竜人の御仁が、小童ども相手にしてやらぬのかのぅ」


 先程のクロードと同じことをイスラは尋ねる。それはカイルが適任者だと言っているようだった。




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