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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
28章 穢れと鬼

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「それは怖いわよね。ラースの魔眼は獣人にとって脅威だもの」


エリザベートは馬鹿にするような目をグレイに向けながら言う。獣化の暴走。目の前でそれを見せられたグレイにとって、それは心の傷として深く残ってしまっていた。


「でも、それに対処するすべも教えられたはず。それを怠ったのは金狼君、貴方の怠慢よ」


そしてエリザベートは、未だに地面から立ち上がれないでいる者たちを呆れたような目で見下す。


「話にならないわ。レベルが英雄クラスでも能力は低能。なに?このレベルだけ上げてみましたという感じ」


エリザベートはそういうも、大魔女と名が残る者とレベルが100を超えてそれほど経っていない者たちを比べるのも、おかしなものだ。


いや、エリザベートの理想が高すぎるのもあるのかもしれない。


「魔術を使うなというなら、使わないであげるわ。さぁ、回復してあげたのだから、さっさと向かってきなさい」


エリザベートが赤い鞄を開き、そこから一振りの剣を取り出しながら言った。

大魔女である者が剣を構える。


これは歴史では語られることがなかった姿だ。


赤き魔女は赤い鞄に乗り現れる。それが世界に刻まれた歴史。


「クククッ」


その姿を見て、とても楽しそうに笑う声が聞こえてくる。

その笑い声に対してシェリーは呆れたように声をかけた。


「オリバー。もう一度エリザベート様に頼んでみれば?」


そう、オリバーだった。

魔力が漏れ出ているのか、オリバーの周りで大気が揺らめいている。


「ああ」


オリバーはシェリーの言葉に返事をしながら、いつも着ているヨレヨレの白衣を脱いでいた。

ヤル気満々だった。


そしてオリバーの姿がその場からかき消えた。その瞬間別の方向から金属音と共に土煙が上がる。


「お相手を願いたい」

「だから貴方は駄目って言ったわよね。私の剣は勘違いヤロウほど強くないのよ!」


土埃が晴れ、エリザベートが居た場所にはオリバーが立っていた。それも見たことがない青い光を帯びた剣を持っている。

その剣を抑えたであろうエリザベートは、大きく距離を取るように、離れた場所で剣を構えていた。


それも比べる相手が違うであろう者の名を出している。誰も猛将プラエフェクト将軍の剣と大魔女エリザベートの剣技が同等とは思ってはいない。


だが、シェリーが……佐々木が五人の英雄を相手にしていたとき、プラエフェクト将軍を大魔女エリザベートにけしかけていた理由はこういうことだったのだろう。

大魔女エリザベートに敵う存在がプラエフェクト将軍の剣だったと。


「俺も魔導師だから剣は勇者ほどじゃない」


エリザベートが了承の返事をしていないにも関わらず、一気に距離を詰めるオリバー。


「勇者って誰か知らないわよ」


その距離を保つように駆け出すエリザベート。


「ちょっと待て!なんでオリバーさんが参戦しているんだ!」


そこに目が覚めたオルクスが入って行こうとするも、見えない壁に弾かれたかのように後方にぶっ飛んでいった。


「え?うるさい猫が飛んでいったよ?何が起こったわけ?」


それを見ていた陽子が疑問をそのまま口にする。何があったのか見ていてもわからなかったのだ。


「魔術障壁だ。あの佐々木さんの父ちゃん。邪魔されないように壁を作っている」

「大魔導師様、魔術使っているし!シュロス君。なんか嫌な予感がするから、結界張ってくれない?陽子さんのは目立ちすぎるんだよ」


大魔女と大魔導師の戦いに陽子は危機感を抱き、何でも創造してしまうシュロスに結界を張るように言う。


「え?結界?あー……強固で安定性があればいいんだな?」

「ちょっと待って陽子さん、そっちの方が嫌な予感してきたよ!」


シュロスの言いように慌てて止める陽子だが、それは遅く、『あー』とシュロスが言った時点で空に何かが浮かんでいた。


十芒星(デカグラム)結界だ!ぎゃっ!膝が!」


シュロスが怪しい動きをしていることを感知したシェリーがカイルの腕を振り切り、シュロスの膝に蹴りを入れるも、シュロスが言葉を放ったことで結界は完成しまっていた。空に十芒星が浮かび、回転する陣の端からオーロラのような結界が地面に向かって伸びていた。

これは完全に敷地の外から丸見えになってしまっていた。


「シュロスさん。地上にUFOを出現させるような結界は目立つので消してください」

「シュロス君。目立っている。目立っている。これじゃわんこ君2号が来ちゃうよ」

「え?カッコいいじゃないか」


シュロスが創り出した結界を否定するシェリーと陽子だが、シュロスはカッコいいという一言で終わらせてしまった。


だが、目立つことこの上ない。空にくるくると見たことがない陣が浮かんでいるのだ。その陣から怪しい光が地上に向かって伸びていれば、この地域の警邏を任されている第六師団に連絡が行ってしまうことだろう。


「ちょっとあれはなに!」

「どういう構築をしたら、あのようなモノができるのだね」


だが、そこに興味津々の二人が現れる。先程まで剣を向け合っていた者たちだ。

魔女としては、大魔導師としては、見たことがない十芒星の陣が気になって手合わせどころではなくなっていたのだ。


あのまま戦っていれば、辺り一帯に何も残らない状況になっていたのは明白だ。何事もなくオリバーの戦意を抑えたという点ではシュロスは役に立ったと褒めるべきところだった。



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