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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
28章 穢れと鬼

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 シェリーの番たちが言うように、己の気持ちを言葉にすれば、彼らの結末は変わっていたのではないのか。そうオリバーはいいたいのだろう。


「違う。言わないように干渉されていた。それが今の俺の見解だ。だから、ここにもし賢者ユーリウスがいれば……いや、今更言っても栓無きことだ」


 もしかすれば、と有りもしない未来をオリバーは願ったのかもしれない。

 シェリーの番たちが何かと言い合いながらも共に過ごしている風景を目にすることで、オリバーも人として生きる未来があったのではと。


 だが、ここに来て白の神の言葉に真実味が帯びてきた。

『前回のように充てがった番を無視して愚かしい茶番を始めることが無いようにね。まぁ君たちは大丈夫だろうけど』

 そう番であるビアンカを無視することなど、普通は起こり得なかったのだ。


「上空にあった術は人々の不満や不安、恐怖や嫉妬を誘発する効果があったと思われる。だが、全てを『心神の改変の呪』が書き換えた」


 これは人々の悪心を誘発するものであったのではないのだろうか。それではシェリーがいくら浄化しようが、ラフテリアが浄化しようが無くなることはなかったということだ。


「恐らく一番影響を受けていたのはアーク族ではなかったのではないのかね。彼らの空島が術の中心だ。アーク族から不満を引き出すのにうってつけだっただろう」

「白き神への不満?」


 これもまた、神への信仰心を失わせることだったのだろう。その昔、白き神が降臨した地。そして白き神自ら種族に名を与えたアーク族。


「そう、それが悪魔化になる切っ掛けになったのではないのかね?」


 いわゆる白き神からの呪縛の解放。白き神からの干渉を防ぎ、地上にも降り立てる肉体を得るため、繭からの転生と言わんばかりに漆黒の肉体を得る儀式。


「道理は通っていると思う。けれど、話しがズレていっている」

「さて。それはどうかな?」

「元々は過去の英雄と戦わすっていう話だったよね?」


 そもそもオリバーは武神アルマと剣神レピタの威を伝えに来ただけのはずだ。しかしいつの間にか、空にあった陣の話になってしまったのだ。


「同じことだ。大魔女エリザベートに、『心神の改変の呪』を施してもらえ、さすれば煩わしいのが減るかもしれぬぞ」


 煩わしい。それは異様にシェリー。シェリーとつきまとっている者のことだろう。

 ちらりとシェリーは隣に視線を向ける。


 しかし、あのときはカイルはシェリーの側に居たはずだ。ダンジョンという一種の世界にいたわけではない。正確には、術が完成する前にシェリーとカイルは、女神ナディアに拉致されていたのだ。

 いや、そうなるとダンジョンにいた者は影響がないことになってしまう。


「それは、ダンジョンにいた者は影響を受けていないと?」

「さて、影響はどれほどのものかは知らぬが、術を作った本人に聞いてみればいい。ついでに俺も聞きたいことがある」


 それはただ単にオリバーが、シュロスでは理解不能だったため、大魔女エリザベートに聞きたいというだけに聞こえてしまった。




「確かにアーク族の中での不穏な動きはあったわね」


 それほど大きくはないガーデンテーブルを、五人の者が囲っているという状況に誰も突っ込むことなく、新たにお茶と菓子が用意されていた。


 自慢の赤い髪を邪魔だと言わんばかりに後ろに流し、紅茶を飲むエリザベート。誰がこの者を死者だと思うだろうか。


「それで私の残した資料は読んだの?」


 それはモルテ王が持っていた大魔女エリザベートの遺品だ。


「すみません。2カ月ほどラース様に拘束されていまして、まだそれ程読めていません。薬草の材料の書物が多いようで」

「そっちのほうじゃなくて、空島の機構の方よ」


 流石に空島の資料と言っても、数が多いようだ。一週間ではそれほど読み進められなかったらしい。


「世界への干渉は流石に気づかないわ。ただ空島を制御している魔石は異常だと思っていたわね。神気の塊って言えばいいのかしら?」

「では『心神の改変の呪』はどの様な理由で作られたのですか?」


 シェリーは建前もなくズバッとエリザベートに聞いた。確かに空島が巨大な陣を描いているというのは、シェリーとエリザベートの知で得られた答えだった。

 ならば、人の心に干渉する魔術は何故作られたのか。


「理由はわからないけど、おかしいと思うことがあったのよ。最初はラフテリアとマリーの暴走ね。マリーはわからないけど、ラフテリアがロビンの言葉を聞かないっておかしいと思ったのよ」


 これはモルテ国になる前の話だろう。死と再生が繰り返されたこと。だが、暴走していたとしても、ラフテリアの耳にロビンの声が届かないことは、ありえないだろうと。

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