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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
28章 穢れと鬼

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「シェリーちゃん!本当にモルテ国から了承が得られたのだけど、どうしよう!」


 騎士団本部を訪ねたシェリーは以前来たときと同じように会議室に通された。

 いや、入ったところで広報のサリーに泣きつかれたのだ。


「では、そのまま進めてください」


 それに対して淡々と答えるシェリー。


「何を簡単に言ってくれるの?モルテ王よ!あのモルテ王!今までどこかの国に訪問したことがないモルテ王よ!」

「非公式ですか。ミゲルロディア大公閣下と会っています」

「モルテ国と変わらないぐらいに存続している国と、この国を比べないでよ!」

「クソギツネ。国が広報部にけなされていますよ」


 やはりサリーとしてはモルテ王ということが問題になっていたようだ。そして、何もない空間に話しかけるシェリー。


「まぁ、本当のことだからね」


 何もない空間から突如としてイーリスクロムが現れた。それもなんだか疲れたような雰囲気をまとっている。


「それから、色々放置したまま消えないで欲しいな」

「何がですか?ああ、衣装の件はもう適当でいいです」

「そうじゃない。各国との会談の話だ」

「え?まだしてなかったのですか?」

「終わったよ。本当に転移門を使ってね」


 どうやらイーリスクロム本人がアリスが作った転移門を使って、各国に渡りをつけたらしい。

 その所為だろうか、イーリスクロムの異様な疲れ具合は。


 炎王考案のweb会議風の魔道具をユーフィアが作成し、イーリスクロムが転移門を使って各国に配っていくという話は、シェリーの案がそのまま採用されたようだ。

 本人がダンジョンに潜っている間にだ。


「そのときはモルテ王との交渉が終わってなかったから、未だに各国はモルテ王は不参加だと思い込んでる。憂鬱過ぎる」


 イーリスクロムはため息を吐きながら言う。


「あと会談にはオーウィルディア大公代理が出ていたんだけど?話が違うんじゃないかな?」

「外交はオーウィルディア様が行うと決められていましたので、問題ないのでは?」


 するとイーリスクロムはシェリーに近づいていった。だが、その間にカイルが入りイーリスクロムからシェリーの姿を隠す。


「別に何かしようとはしていないよ。だけど話が違うと、僕は言いたい。なぜ会談にミゲルロディア大公閣下が出てこなかったんだ」


 魔人ミゲルロディア。シェリーがいくら黒に対する忌避感を世界から打ち消そうが、魔人という脅威は消え去ることはない。


「ちっ!あれだけのことをしても無駄ってこと?」


 シェリーは舌打ちをして不満をあらわにした。元々は聖女お披露目パーティーに魔人ミゲルロディアと狂王モルテ王を招待するために行ったのだ。


「そう言えば、今日も皆さん居ないのですね?」


 イケメン好きのサリーとしては、この場にカイルしかいないことが不満なようだった。


「地下に叩き落としました」

「え?地下?」


 どうやら、シェリーは陽子のダンジョンに他のツガイたちを向かわせたようだ。

 いや、陽子が床から生えてきたのだ。




「おそーい!陽子さんは準備万全にとっくになっているよ!」

「陽子さん。あのときはありがとうございました」

「いいよ。そこのシュロスくんに動いてもらったから」


 おばけに毛が三本生えた奇妙なキャラクターのTシャツにジーパンを履いた姿の陽子が突然床から生えてきても、当たり前と言う風にスルーするシェリー。


「うぉ!なんで突然床から出てくるんだ!陽子さん!」

「人外に言われたくないね。シュロスくん」


 陽子に突っ込むシュロスに、シュロスにだけは言われたくないと言う陽子。あれから二カ月の時間が流れていたようだが、それなりに仲良くやってきたようだ。


「はいはい、君たちは陽子さんのダンジョンで修行し直しだよ。バージョンアップしたから、力任せの攻略は無理だからね」

「ちょっと待て!それだとまたカイルがシェリーを独り占めするじゃないか!」


 床に引きずり込まれるのに抵抗しながら文句をいうオルクスに向って、陽子は背中を踏んづけて床に押し付ける。


「馬鹿猫。君が一番問題なんだよ」

「ぐはっ!」


 床に沈みこむオルクスに対して、グレイは抵抗することなく、陽子に視線をむけている。


「なにかな?ワンコくん」

「ダンジョンをヨーコさんの言う通りに攻略すれば、獣化は可能になるのか?」

「ワンコくん。もう、ちっちゃいワンコくんになれているじゃない?」

「うぐっ……黒狼クロードみたいな感じに」

「さぁ?陽子さんはダンジョンマスターであって、獣化するのはワンコくんだからね。ワンコくん次第だね」

「わかった」

「およ?なんだか素直だね?エルフの兄ちゃんなんて抵抗することなく消えちゃったけど、ササっち良かったのかな?」


 スーウェンは床に土下座をしたまま陽子のダンジョンに落とされてしまった。しかし、陽子としては、先程のシェリーの言葉のほうが気になったのだろう。

 シュロスに魔術を教えるように言っていた中にスーウェンの名があったのだ。


「いいですよ。基礎体力は必要でしょうから」

「そうだよね。大魔導師様には足元にも及ばないよね」


 陽子はオリバーと比べて言うが、比べる対象があまりにも大きすぎることに気がついていない。


「鬼の兄ちゃんも今日は大人しかったね?どうしたのかな?」


 そしてリオンの姿も既に床の下に消えていたのだった。


「アマツさんにボコられたからではないですか?」

「えー?あのアマツさんにボコられたの?それはポッキリ心が折れそうだよね。いい笑顔でゴリッといきそうじゃないあの人」


 陽子の中のアマツの評価が気になるところだが、こうしてカイル以外の者たちは陽子に連行されたのだった。




「ええ、地下に落としたので当分の間は静かだと思います」

「シェリーちゃん、地下に埋めちゃったの?怖いわー」


 サリーのシェリーに対する評価も気になるところではあった。


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