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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
28章 穢れと鬼

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「で、生きているのか、死んでいるのかどっちなんだ?」


 復活したらしいオルクスからの言葉だ。


 その横ではスーウェンがシェリーに向って土下座をしている。


「借金の返済もままならず申し訳ございません。ご主人様」


 そんなスーウェンに『佐々木さんをご主人様って』と小声で突っ込んでいるシュロス。


「肉体は滅んだが、魂は生きているから疑似肉体に魂を入れたのが今の俺だ!」

「全然わからん」

「分かる言葉で話してほしい」


 シュロスの説明に理解が追いつかないリオンとグレイ。そんな二人の言葉にシュロスはシェリーに助けを求める。


「佐々木さん!言葉が通じない!サポーター!通訳を!」

「シュロスさんの説明が下手なだけです」


 トレイに食器を載せながら返すシェリー。


「佐々木さん、辛辣。それにそんなに貢がれて塩対応って、鬼畜すぎないか?」


 貢がれている。それはシェリーが今片付けているダイニングテーブルの上のことだ。


 こんもりと、お金の小山ができていた。


 それは、この場で自由になるお金をグレイとオルクスとリオンが、かき集めて出してきたからだ。


 ラース公国の第二公子とギラン共和国の元傭兵団長。そして炎国の元王太子。

 それは小山ができるほどのお金ぐらい常備しているはずだ。


 ただ一人。借金奴隷の身だったスーウェンには、自由になるお金は皆無だった。

 ここ一ヶ月ほど冒険者ギルドで依頼を受けていたのは、グレイとオルクスだ。


 その間スーウェンは何をしていたのかといえば、シェリーの頼まれごとでシュエーレン精霊王国に行っていたり、ライターのところに行って剣術の基礎を教えてもらっていた。


 そう、お金を稼ぐという概念はなく、ただ日々の生活を送っていたのだった。


「身体で支払いますので」

「必要ないです」


 平服したスーウェンから生気が抜け出す。力なく床に伏したままのスーウェンに、シェリー以外の者たちが憐れみの視線を向けた。


「あーもしかして、俺も働いた方がいいのか?今まで働いたことは一度もないけど……職業ジョブとか変更できたり」

「シュロスさん。いらないことをしなくていいです。オリバーとそこのスーウェンさんに魔術を教えてください」


 自由行動をしそうになったシュロスをシェリーは別の目的を与えて引き止めた。危険人物を外に放つわけにはいかないと。


 職業ジョブ。やはりその概念もシュロスが作り出したもののようだ。しかし、シュロスの職業ジョブが何か気になるものだ。


「シュロスさんは、おとなしく引きこもっていてください」


 シェリーはそう言って、キッチンに消えて行った。大量の食器を載せたトレイを運ぶカイルと共に。


「それで佐々木さんと、どういう関係なんだ?」


 名前と種族しか紹介されなかったシュロスからすれば、彼らがここにいる理由に検討がつかなかった。


「シェリーの番だ」


 シュロスの質問にリオンが答える。その答えにシュロスは納得したように頷いた。


「ヤバいヤツっていうのだな」


 残念ながら全く理解していなかった。いや、ある意味合っているだろう。


『ヤバいヤツが五人もかぁ。それは佐々木さんも塩対応するかもしれない』と一人納得したシュロスから小声が漏れ出ていたのだった。



「ここの主に魔術を教えているという話だったが、さっきのヤツはどうやったのだ?」


 リオンがシュロスが現れてから疑問に思っていたことを口にした。

 それに対してシュロスは首を傾げる。曖昧な言葉ではシュロスには通じなかった。


「カイルの剣の軌道を外したやつだ。普通は竜人のカイルの剣の軌道なんて外せないだろう」


 普通。竜人の力で放たれた剣を受け止めようと思えば、受け止めた側の剣が折れるか、受け止めたまま力押しに負け、そのまま真っ二つになる未来しかない。


 力を底上げしたシェリーでさえ、カイルの剣を受け止めるだけで精一杯だったのだ。普通ではあり得ないとリオンは口にする。


「ん?それは自動回避だけど?」


 シュロスは大したことはないという風に言う。

 自動回避。言葉から行けばシュロスが回避する側に思えるが、今までのやりとりから自動的に攻撃がシュロスを避けるという意味なのだろう。


「自動回避?」


 今度はリオンが首を捻っている。

 自動回避という概念を持っていないためだ。


「それってスキルなのか?魔術なのか?」


 オルクスが興味津々に聞いている。おそらく、よく分からないが、カイルの攻撃を避けることができるすごい技というのは理解したらしい。


「……佐々木さーん!自動発動するやつって魔術になるのか?」


 シュロス自身もわかっておらず、サポーター佐々木に確認していた。


「シュロスさんが創ったものなんて知りません。ステータスで確認してください!」


 キッチンの奥からシェリーの苛ついた声が聞こえてきた。それに対してシュロスは納得したように、何かの操作をする動きをする。


「常時発動能力に入っているから、魔術でもスキルでもないな」


 堂々というシュロスに対して、リオンとオルクスとグレイは顔を見合わせた。


『流石アーク族の王。一般人には理解できない存在だ』と。





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