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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
28章 穢れと鬼

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「やっぱりアマツ様ってすげぇーよな」

「はぁ、俺……あんな二人と戦える気がしない」

「しかし、まだあのような奥の手を持っていたとは、やはりエルフ族を敵に回した存在だけはありますね」


 シーラン王国の王都メイルーンの屋敷に転移で戻ってきた第一声がこれだった。

 オルクスはアマツとカイルの戦いを見て興奮しており、グレイは圧倒的な力の差に項垂れており、スーウェンは英雄アマツの危険度を更に上げたようだ。


 そしてシェリーと言えば、ダイニングテーブルの惨状を見て舌打ちをして、片付けを始めている。

 カイルはアマツとの戦いに疲れた様子もなく、シェリーの手伝いをしていた。

 この分だとカイルはアマツに対して手を抜いていたのかもしれない。やはり世界最強種であり、超越者である壁は高いのだろう。


「一つ聞きたいのだが……」


 そんなカイルにリオンは声をかけた。アマツとカイルの戦いを見て興奮するのでもなく、落ち込むわけでもなく、ただ何か疑問に思ったことがあったようだ。


「なんだ?」


 シェリーの手伝いを邪魔されてイラッとした感じで返事をするカイル。


「何故、剣を抜かなかった。その剣を抜けば圧勝だったのではないのか?」


 カイルとアマツの戦い。その勝敗は引き分けだった。拳で戦うアマツに対して、カイルも拳を構え、アマツの戦い方に合わせたのだ。


「勝つことが目的ではなく、今の実力を知りたかっただけだ」


 確かにアマツに戦いを申し込むカイルは言っていた。『何処まで名が残る英雄に、今の俺の力が通じるか試したい』と。


 目的は勝つことではなく、今のカイルの力は過去に名が残る英雄と比べてどうなのかという力量を測りたかったのだ。


 拳と拳。竜化と龍化。同じ土俵に立ち、実力比べをしたかった。

 そう、だから互いにそこまで本気ではなかったのだ。


 しかし、見る者によってはその戦いは、互いの本気のぶつかり合いに見えたのだろう。


「それなら、尚更勝つ方法を取るべきじゃないのか?」


 リオンはカイルの考え方に不満があるようだ。戦う力があるのに、何故最善の戦いをしないのかと。


「勝てない相手に対して引き分けに持っていく。興味があるじゃないか」


 それはアマツが言っていたことだ。鬼王イゾラと戦って勝てるのかという問いに、勝てなくても引き分けに持っていくと自信満々にアマツは口にしたのだ。


「龍人アマツの戦い方は分析だ。あの短時間で俺のクセを見抜いて、そこをついてきた。どれ程の戦地で戦い抜いてきたのかわからないが、その戦いから身につけた戦い方なのだろう」


 アマツは英雄と名を知らしめるほどの戦地を駆けていたはずだ。その中で理不尽に抗うための戦い方を身につけていったのだろう。

 そして、カイルには珍しくニヤリと笑い。リオンに問いかけた。


「リオン。もうすぐここに絶対に敵わない存在がくる。お前はどうする?」

「……魔導師オリバーのことか?お前はオリバーのことを高く評価しているが、俺は初代様の方が強いと思っている。それに、機嫌を損ねるとこの屋敷から叩き出されるのは目に見えているから、敵対することはない」


 カイルはオリバーとは言ってはいない。

 リオンからすれば、魔導師オリバーよりも魔術創造を使いこなす炎王の方が強いと評価している。彼らが戦うことは無いことだろうが、神の血を持つオリバーと異界の知識を持った炎王のどちらが強いのか、それを推し量るのは困難だ。


 そして廊下から聞き慣れない重い足音が駆けてきている。その音に先程までアマツとカイルの戦いの感想を言っていた者たちの警戒感が強まった。


「佐々木さん!二ヶ月半もどこをほっつき歩いていたんだ!ぐぇ!」


 ダイニングの扉を開け放って入って来ようとした者の頭にトレイが直撃した。投げたのは勿論、食器を運ぼうとしていたシェリーである。


「私は忙しいと言っていますよね。それよりも無職のシュロスさん?それとも浪人のシュロスさんと言えばいいですか?」

「ぐはっ!心を抉られる言葉が!」


 シェリーは心臓なんて無い胸を押さえている冒険者風の男に近づいて行く。


「食器ぐらい洗いましょうか?ただ飯食らいのシュロスさん」

「二ヶ月ぶりだけど、その毒舌が懐かしいよ佐々木さ……って、佐々木さんの彼氏、絶対に俺を殺す気だろう!」


 シュロスが開けた扉には一振りの大剣が突き刺さっている。アマツに剣を抜かなかったカイルが、大剣を抜いて投げつけ、シェリーを抱き上げて後方に下がらせたのだ。


 だが、投げた本人はとても不満そうだ。何が不満なのか。

 シェリーがシュロスに気安く話しかけているのが不満。それもあるだろう。しかし……


「剣の方向が変わった?」


 リオンが驚いたように声をあげる。その声にシュロスは初めて、シェリーとカイル以外の存在に気がついたのだった。




やっと次の章に移りました。28章はそこまで長くならないと……思いたいです。


やっと次の章に移りました。28章はそこまで長くならないと……思いたいです。

このあたりに以前書いていた登場人物紹介を入れると思います。場所移動できる機能が消えちゃったのかな?たぶん削除して新規投稿するので、気にしないでください。

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